体外受精による妊娠の確率って?6回目で授かった不妊治療専門ドクターと考えてみた!|妊活webマガジン 赤ちゃんが欲しい(あかほし)
体験談
20代、30代、40代と年代別に、体外受精で妊娠できる確率には差があり、年齢が高くなればなるほど、その成功率は下がります。検査を受けてトラブルがなければ「タイミング法から始めましょう」というのは教科書的には正しいのですが、それが妊娠への近道とは言えません。
タイミング法や人工授精より妊娠する確率が高いのが体外受精。今回はその体外受精の成功率(妊娠率)がテーマです。ご自身も体外受精で子供を授かった、不妊治療専門医の田口早桐先生に語っていただきました。
田口早桐先生 産婦人科医 生殖医療専門医。自身も不妊治療を経て2児の母になった経験を活かし、大阪・東京で展開する医療法人オーク会にて不妊治療を専門に診療にあたる。著書に『ポジティブ妊活 7つのルール』(主婦の友社)がある。
「不妊治療は年齢との勝負」という一面があります。自然妊娠はもちろんのこと、人工授精、体外受精、いずれの方法も「女性の年齢が高くなればなるほど、不妊治療の成功率は低くなっていく」のが現実だからです。
「できるだけ、自然な方法で妊娠したい」と思って、体外受精をためらっている間にも、卵子の老化は進んでいきます。「赤ちゃんが欲しい」という気持ちが強いのであれば、できるだけ早めに、つまり1日でも卵子の老化が進まないうちに、体外受精を考えたほうがよいでしょう。
年齢が若ければ若いほど体外受精の成功率は高い、ということは、逆に言うと年齢が上がれば上がるほど体外受精を何度も繰り返さないと妊娠できないということ。つまりそれだけ妊娠までの費用も、余計にかかるということです。
私は35歳で妊活をスタートして、第一子を授かるまでに体外受精を6回行いました。最短距離で赤ちゃんを授かるには「治療開始からの半年間が勝負!」と思っていただけに、体外受精をして「ダメだった」「今回もダメだった」「えっ!3回目もダメか…」ということを繰り返すと、やはり気持ちは落ちこみます。「もっと早い時期に体外受精をスタートできれば、もっと簡単に授かったかも」と思うこともありました。
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「体外受精をすれば、妊娠できる確率はどれぐらいですか?」。そんな質問を患者さんからよく受けます。過去の論文のデータやこれまでの治療経験をもとに、できるだけお答えするようにしていますが、妊娠できる確率を正確にお答えするのは、なかなか難しいものです。
たとえばとくにトラブルのない20代のカップルが排卵日に性交渉を持って、その周期に妊娠する可能性は20~30%ぐらい。ランダムに性交渉を持って1年間に妊娠する確率は80%、2年間で妊娠する確率は90%と言われています。また30代半ばの女性の卵子1個が、赤ちゃんになれる確率は約9%。ですから、もし卵子30個あれば計算上では、ほぼ100%赤ちゃんを授かることができる、と言えます。ただし年齢が高くなると、卵子1個あたりの妊娠率は下がります。仮に40代前半の女性の卵子1個が赤ちゃんになれる確率を4%とすると、それでも約40個の卵子があれば、子どもを授かれる確率は80%になります。
でもこれは単純な机上の計算なので、なかなかこの通りにはいかないものです。体外受精を何回すれば妊娠するのか、その成功率にはやはり個人差があります。
「あなたは40歳だから、体外受精をしても妊娠・出産できる確率は10%以下です」。そんなふうに患者さんに、ネガティブな説明をするクリニックもあるようです。でもそんな説明の仕方は、「成功率が低いから、体外受精をあきらめさせよう」としているかのように、私には思えます。
たとえば、もしあなたが進行性のがんなど、命に関わる病気になったとしましょう。そのときに「治療を受けても助かる可能性は5%だから、その治療は受けない」という人がどれぐらいいるでしょう? たとえ治療の成功率が5%であろうと、3%であろうと「助かるかもしれない」というわずかな可能性に賭けて治療を受ける人が多いのではないでしょうか?
私は体外受精などの不妊治療も同じだと思います。たとえ成功率が10%以下であろうと、妊娠できる可能性があるのであれば、その可能性を追求したいと思うのが当たり前。「赤ちゃんが欲しい」のであれば、「成功率が低いから」と簡単にあきらめず、妊娠するために残された可能性=体外受精にトライしてほしいなと思います。
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「高齢になると妊娠率が下がるのだから、時間やお金をかけて体外受精をしてもムダ」という意見もあります。でも本当にそうでしょうか? 体外受精での妊娠率が低いとしても、治療を続けていればこそ、成功例があるのです。「体外受精や顕微授精などの不妊治療に関しては、0%でない限り、やってみる価値はあるのではないでしょうか?
コップに水が半分入っているときに、「ああ、もう半分しか水がない」と思うのか。それとも「まだ水は半分も残っているのか」と思うのか。
先に説明したとおり、体外受精など不妊治療は時間との闘いです。だからこそ「まだ水は半分も残っている」=「体外受精で妊娠できる可能性は残っている」、そう考えてみませんか?
宝くじだって、買わなければ当たりません。「普通に性交渉をしても授からない。でも赤ちゃんが欲しい」のであれば、赤ちゃんが授かるための行動をしなければダメ。「赤ちゃんが欲しいという自分の希望を叶えるために、今できる最善のことをするのが賢い選択なのではないでしょうか
私自身、35歳で不妊治療をスタートし、6回目の体外受精で赤ちゃんを授かりました。初めての採卵でとれた卵は3個。自分では少なくとも6~7個の卵子はとれると思っていたので、「私の卵巣年齢、けっこう高かったんだ」と、その老化をしみじみと実感しました。そして初めての体外受精での結果は陰性でしたが、でも「次は妊娠するだろう」とそのときはそれほど深刻には考えていませんでした。
私の当時の年齢と条件で考えると、1回当たりの体外受精の成功率は1/3程度。だから「確率的には、3回体外受精をすれば妊娠するだろう」と思っていたのですが、これは大きな誤解でした。
数学的には1回の妊娠率が1/3だからといって、3回目までに妊娠する確率は1/3+1/3+1/3=1で、100%になるわけではないのです。ややこしいので確率の計算式は省きますが、数学的には1回の妊娠率が1/3ならば、2回目までに妊娠する確率は5/9、3回なら19/27になります。
正直、3回目の体外受精がうまくいかなったときは、「困ったことになった」と思いました。でも「とにかく続けよう。サイコロを振り続けよう」と私はあきらめませんでした。そして「まだがんばるの?」なんていう周囲のプレッシャーなど気にせず、4回目、5回目、6回目と体外受精を繰り返して、ついに妊娠という希望を叶えることができたのです。
年齢が高くて体外受精での妊娠率が低いとしても、治療を続けていればこそ、成功例がある! 「体外受精や顕微授精などの不妊治療に関しては、0%でない限り、やってみる価値はある」というのが、私の考えです。
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