体外受精直前に転勤が決まって・・・転院が不安すぎる【不妊治療経験アリの現役産婦人科医がお答え】|妊活webマガジン 赤ちゃんが欲しい(あかほし)
体験談
Profile
神奈川県生まれ。2011年、聖マリアンナ医科大学卒。産婦人科医。「えんみちゃん」のニックネームで中高校生向けの講演活動を行ない、これまでに全国700校以上を訪問。著書に『ひとりじゃない』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。自らも不妊治療経験者で、夫の精索静脈瘤などのトラブルを乗り越え、人工授精、体外受精も経験している。@emmi__chan
31才 自然妊娠を試みて1年授からず、勤務先でもあった不妊生殖科を受診。夫婦で検査を受け、男性不妊(精索静脈瘤)が判明
32才 1回目の人工授精で妊娠するも初期流産。夫の精索静脈瘤の手術。
33才 人工授精8回を経て、体外受精へステップアップ。1回の採卵、3回目の移植で妊娠。
35才 転居のため別の不妊治療専門クリニックで人工授精にトライ。2回目の人工授精で妊娠。第二子出産予定
周りの先輩ママに話を聞いたら、「病院に行った方がいい」「私ももっと早く行けばよかった」と言っていました。なぜ早く病院に行った方がいいのでしょうか? もし行く場合は、婦人科ですか? 私は貧血、冷え性、元喫煙者と、けっして授かりやすい体質ではないのかなぁと思っています。28才(べビ待ち歴2年)
不妊症の定義は「妊娠を希望して、避妊せず性交を行なっているのに、1年たっても妊娠しない」です。これを目安に不妊治療を行なう医療機関を受診するのがベターですが、なかには少し抵抗のあるかたもいるでしょう。
一般の婦人科でも女性ホルモンの基礎値やクラミジアの検査をしたり、子宮や卵巣の状態をエコーでみることができます。月経痛がある、月経の量が多い、月経が不順といったことでもいいので、ひとまず気軽に受診してください。自分の体を知るという意味でも、日頃から婦人科に行くハードルを下げておくと、ちょっとした不安があるときに足を向けやすくなるはずです。
貧血があるということは、月経量が多めかも?と心配されているのかもしれませんね。そういった心配事があるときは、もちろん1年待たずに受診してみてくださいね。
たばこをやめられたとのこと。よかったではないですか! 妊娠・出産を視野に入れているときなので、これからは受動喫煙もできるだけ避けて、妊活してくださいね。
赤ちゃんができなくて病院でひと通り検査したところ、男性不妊が判明しました。そのときは夫の精子が悪いとしか言われず、不安な日々をすごしました。とりあえず人工授精から始めましたが、妊娠せず・・・。先生にいろいろ質問するものの、忙しそうに答えるので、怖くて質問ができなくなりました。
泌尿器科に行った方がいいのかもわからず、ネットの情報を頼りに妊活しています。先生との相性が悪いのかと思いましたが、その病院は実績があるのでなかなか転院できません。みんなこんなモヤモヤを抱えながら妊活しているのでしょうか?26才(べビ待ち歴2年)
これはもう、こわくて質問できない空気を醸し出しているドクターに問題がありますね。わからないことがあれば、ドクターに聞いていいのがあたりまえです。
つい聞きそびれてしまうことがないように、聞きたいことを箇条書きにしたメモを持参し、診察のときにドクターに渡すのもひとつの方法です。看護師さんや培養士さんと話をする機会があり、そのほうが話しやすいようなら、その方からドクターに伝えてもらうのもいいと思います。不妊カウンセラーがいる施設では、そういったかたに相談するのもいいでしょう。ドクターがどんなに忙しいと言っても、予約をとっているその枠は、あなたの時間と考えてくださいね。
男性の精液所見は、そのときの体調によって波があるので、1回の検査では判断がつきにくいものです。もし、複数回の結果から男性不妊と言われたならば、男性不妊を専門に扱っている泌尿器科などの受診をおすすめします。男性不妊の外来では、生活習慣のアドバイスを受けられたり、男性にとっても質問しやすいというメリットがあります。エコーで精索静脈瘤がわかれば手術をすることもあります。主治医には、男性不妊外来に行くべきかと、体外受精へのステップアップはいつごろ考えるべきかを聞いてみましょう。
26才ということで、女性の年齢という点では時間的な猶予があるので、人工授精を6回以上トライすることもあります。しかし、精液所見によってはもっと早くステップアップしたほうがいい場合や、精巣内精子回収術(TESE)が必要になる場合があります。
妊活を始めてちょうど1年。クロミッドや皮下注射などいろいろ試しましたが、効果なし。無月経のため体外受精にステップアップすることになりました。ところが、転勤のため県外へ。病院も転院することになってしまいました。せっかく主治医とコミュニケーションがとれ、信頼していたのに残念です。新しい病院への不安、サイトや本で調べてもお金のことがざっくりしていて不安、希望をもってステップアップしたいのに不安、と不安だらけです。モチベーションをどうあげていいのかわからず、無限ループです。30才(べビ待ち歴3年)
体外受精にステップアップするタイミングと転院が重なり、大変でしたね。引っ越した先で新たに信頼できるドクターに出会えるか、不安な気持ちはとてもよくわかります。
新しい土地で心機一転して、体外受精をスタートすることになると思いますが、信頼を寄せている今のドクターに転居先周辺のおすすめクリニックを聞いてみましょう。ドクター同士のネットワークもありますし、その先生の方針と合ったクリニックを見つけてくれるかもしれません。
不妊治療中に転院はよくあることです。特に体外受精の場合、場所やドクター、培養士など、環境を変えることでいい成果が現れることもあります。ぜひ、これをチャンスと考えてくださいね。
体外受精で通院中ですが、2回とも陰性でした。卵の残りは5個なので、あと何回移植できるかも限られています。もし次もダメな場合、また採卵するならほかの病院に転院するのもありかなと思っています。その場合、ドクターにはどう伝えればいいでしょうか。35才(べビ待ち歴3年5カ月)
移植できる卵が計7個とれたということですね、いい成果が得られてよかったですね。この採卵が1回目だとしたら、もう1回くらい同じクリニックで採卵してもいいかもしれません。心機一転して別のクリニックで採卵したい気持ちがあるなら、ドクターに「ほかのクリニックで試してみたいんです」と伝えましょう。
みなさんがよくご存じのように、不妊治療は自由診療です。希望はなんでも伝えて大丈夫です。転院したい意思をドクターに伝えることも失礼ではないので安心してくださいね。
自らも不妊治療経験者である遠見先生の質問コーナー、いかがでしたか? タイミング療法、8回の人工授精、流産、体外受精とフルコースで経験した遠見先生だからこそ、妊活中のみなさんの気持ちに寄り添う説得力のあるお話だったと思います。
最近はクリニックの公式ホームページを見れば、その施設の方針や実績がよくわかるので、まずは通える範囲のクリニックをいくつか見比べてみましょう。よいクリニックに共通するのは、実績はもちろんですが、患者さんの立場にたった配慮があるかどうかです。通勤後に通えるように診療時間が長い、金額がはっきり明記されている、無理な採卵をしないなどです。その上で無理なく通える場所、通いやすい雰囲気なのかをチェックしましょう。不妊治療中は思った以上にクリニックに行く機会が増えますので、アクセスや居心地も大事ですね。みなさんと一緒に赤ちゃんを待ってくれる、信頼ドクターに出会えるといいですね。
この質問コーナーは今後も続きます! 次回は「セックスのこと」の予定です。
文/小山まゆみ 構成/狩野啓子
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