不妊治療

    40代の不妊治療延期は逆リスク?30代は?【コロナ時代の妊活/年代別アドバイス】

    公開日:2020.04.30 / 最終更新日:2020.05.07

    40代の不妊治療延期は逆リスク?30代は?【コロナ時代の妊活/年代別アドバイス】

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    新型コロナウイルスで「妊活も自粛しなくてはいけないの?
    新型コロナウイルスの感染者が世界中でふえつづけ、日本でも緊急事態宣言により、外出自粛が強く要請されています。そんななか日本生殖医学会が「新規治療の開始を見合わせること、不妊治療に関連するその他の非緊急の処置をすべて延期することを推奨する」という声明を出しました。

    赤ちゃんが欲しい(あかほし)』編集部にも、読者のみなさんから、今後の不妊治療に対する大きな不安やあせりの声がたくさん寄せられています。そこで、日本を代表する産婦人科医で、不妊治療のエキスパートでもある山王病院院長の堤治先生に緊急取材をお願いしました。

    30代、40代の年代別アドバイスは必読です。今だからこそ、新型コロナウイルス感染症に関する知識をもって、前向きに妊活にとり組みたいですね。

    妊娠すること自体が不安です

    Q もし妊娠できたとして、その後に感染したら、おなかの赤ちゃんにはどんな影響があるのでしょうか? いまは妊娠すること自体が不安です。

    妊娠中に新型コロナウイルスに感染しても特に重症化することはないようです

    新型コロナウイルスはインフルエンザとよく比較されますが、インフルエンザでは妊娠中にかかると重症化しやすいということはよく知られています。流産や死産などを起こすことも少なくありません。妊娠中は、胎児を受け入れるために、免疫力が低下する傾向にあるので、インフルエンザが重症化するというのが一般的な理解です。

    一方、新型コロナウイルスは、これまで中国などで報告されているデータなどを見る限り、妊婦さんだからといって、特に重症になることはないようです。まったく重症化しないというわけではありませんが、少なくとも、一般の人と比べて、その率が高くなることはありません。妊娠中に新型コロナウイルスに感染した人で流産・早産や死産などのトラブルがふえたという報告も今のところありません。

    赤ちゃんについてですが、当初中国などで、新型コロナウイルス陽性の妊婦さんから生まれた赤ちゃんのPCRを調べると、ほとんど陰性でしたが、ここにきて、母子感染(垂直感染といいます)、つまり胎盤を通ってウイルスが赤ちゃんに移って生まれてくることが皆無ではないようだという報告が出てきています。ただ、それにより赤ちゃんが亡くなった例はいまのところ報告されていません。日本国内では神奈川県で新型コロナウイルスに感染した妊婦さんが無事出産し、赤ちゃんは感染しておらず、母親もその後の検査で陰性になったという事例がありました。埼玉県で出産したお母さんと赤ちゃんが感染陽性になったケースでは、病院の助産師が感染しており、そちらから移った可能性があり、やはり垂直感染ではなかったと考えられます。

    日常生活で特に気をつけることはありますか?

    Q 胚移植後、なるべく外に出ずに過ごしていますが、日常生活で特に気をつけることがありますか?

    外出時のマスク着用、手洗い、換気など感染予防の基本をしっかり守ることです

    インフルエンザの場合は、治療薬やワクチンがありますが、新型コロナウイルスでは、それらがまだ確立されていません。感染の初期の段階で使うと効果があるということで注目されているアビガンという薬は、動物実験でおなかの赤ちゃんに奇形などの影響が出るが認められ、妊婦さんや妊娠の可能性のある人には使えません。男性の精液にも移行が認められていて、アビガンの投与期間中と投与終了後7日間は性交渉を避けるようにとされています。
    ですから、妊婦さんはもちろん、妊娠しようとしているかたにとっても、やはり感染を防ぐために十分な注意が必要です。厚生労働省などから推奨されている外出時のマスク着用頻繁な手洗いの励行は特にたいせつです。室内の換気もこまめに行いましょう。
    ご本人は家にとじこもっていても、ご家族、たとえばパートナーは通勤されるなどで外に出ることがあるでしょうから、帰ってきたときには必ずしっかり手洗いをしていただくことです。念のためタオルや食器は別々にする、トイレや洗面所、手で触れやすいドアノブなどをまめに掃除・消毒することをおすすめします。

    部屋に余裕があるなら、少し離れてソーシャルディスタンスを保つこともよいでしょう。十分な睡眠やバランスのよい食事をとるなど、心身の健康を維持する日ごろの積み重ねが大事なことは言うまでもありません

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    30代・40代の治療、延期したほうがいいですか?

    Q 40歳になり、少しのチャンスもムダにしたくないのですが、それでも感染が収束するまで治療を延期したほうがいいのでしょうか?

    40代のかたが不妊治療の延期を選択するのはリスクが高いと考えます

    私どもも患者さんに対して、WHO(世界保健機関)や日本生殖医学会から推奨された不妊治療の延期や中止を、選択肢として提示しています。この治療には人工授精、体外受精・胚移植、その他手術などが含まれています。

    しかしこれらの声明には、不妊治療再開のめどについて何も触れていません。新型コロナウイルスの場合、治療薬もワクチンも、いつできるのか、有効性はどうかがいまのところ、わかりません。

    年齢が上がるにつれて、年々妊娠の可能性は低下し、体外受精などの治療成績も下がる現実があります。40歳前後で、もうラストチャンスだというかたにとっては、1年、あるいは期限がわからないけれど、ワクチンができるまで待つというのは、リスクが高いと考えます。そうしたかたがたにとって、

    不妊治療が不要不急とは言えないと、私自身は考えています。山王病院の患者さんは平均40歳くらいで、年齢の高いかたが多いのですが、生殖医学会が示している選択肢と、エビデンスにもとづいた治療成績や当院の治療方針などを合わせてご説明したときに、「それなら当分治療をやめます」というかたは、ほとんどいらっしゃいません。

    30代半ば過ぎの場合はAMHの検査で卵巣の予備能を調べてみては

    20代から30代前半のかたなら、いま新型コロナウイルスの感染が拡大している状況の中、治療を一時延期してもいいかもしれません。30代半ばを過ぎると、卵巣機能にエイジング(加齢)の影響が強くあらわれてくるかたもいます。治療を延期するか、継続するかを迷うのであれば、卵巣の予備能(卵巣年齢)を確認してみてはいかがでしょうか。

    AMHは抗ミューラー管ホルモンの略で、発育している卵胞から分泌されるホルモンです。その値は、卵巣内にある卵子の数の目安となります。AMHの値が低いからといって必ずしも妊娠率も低くなるわけではありませんが、残る卵の数が少ないということは、それだけ治療できる時間に限りがある可能性があります。

    なお、体外受精の場合、現在では胚凍結の技術が確立されているので、5年、10年であれば受精卵のクオリティは保たれます。世界では26年間凍結し、その後妊娠した例もあります。なので、治療を受けているかたで、いま妊娠することに不安なら、胚凍結をして、移植は時期を延ばすという選択肢はあります。

    いずれにしても、それぞれのかたの年齢や医学的な事情、ご希望によって、とるべき選択肢は異なります主治医とよく相談し、延期か継続かの決定をするようにしてください。

    治療お休みの間に自己流のタイミング法はアリ?

    Q 二人目不妊ですが、上の子の幼稚園が休園となり、預ける先もないので、通院を中断しています。治療をお休みしている間に、自分たちでタイミングをとるなど、自然妊娠にチャレンジしてもいいでしょうか?

    不妊治療のお休み中に自然妊娠をめざすのは何も問題ありません

    体外受精に何度かトライしてもなかなか妊娠せず、治療を休んでいる間に思いがけず自然妊娠したということは、よく聞くケースです。私も長年、この経験をされた患者さんを少なからず存じ上げています。

    卵巣機能は脳がコントロールしているので、とにかく妊娠しなくては、とあせることでストレスがたまると、排卵などに影響が出ることもあります。この機会に、いったん高度な治療は休んでみる、というのも選択肢のひとつです。

    院内感染のリスクは?通院は電車とタクシーどちらが安心?

    Q 通院しなければ卵子の成長の具合もわからないし、タイミング指導も受けられませんが、通院のときや院内感染のリスクを考えると、こわくて、なかなかクリニックに行くことができません。不特定多数が乗り合わせる電車と密閉状態のタクシー、どちらがよりリスクが少ないでしょうか?

    医療サイドでも安心して受診いただけるようさまざまな手段を準備しています

    電車で通院するなら、できるだけ混雑する時間帯を避けること、タクシーは窓を開けておけば換気ができますし、運転席との間に遮蔽を設けている車もふえています。ドライバーとの接触を減らせますね。

    どちらを利用するかはケースバイケースですが、マスクを着用し手で鼻や口を触らない、できるだけこまめに手洗い・消毒をするなどを忘れないようにしましょう。

    国内外で院内感染の事例が数多く報道されていて、不安をお持ちのかたも多いことでしょう。病院は病人が集まるところなので、新型コロナウイルスに感染されているかたがいないとは限りません。
    ただ、当然ですが、病院側でも院内感染のリスクを減らすために最大限の努力をしています。山王病院は感染症指定病院ではないので、陽性のかたの入院はないのですが、かかりつけの患者さんで熱があるときなどは、電話でご連絡いただいたら玄関先でチェックして、通常のルートでは院内には入らず、別のルートで限られた部屋へ行って検査や診療を受けていただくという体制をとっています。

    待合室では患者さん同士の距離をとるために、専用の動線と専用のゾーンを設けることを検討しています。メールでの呼び出しサービスも取り入れていて、病院内ではなく、近くで待機して、順番が来たら入っていただきます。

    オンライン診療の体制も、急ぎ整えているところです。携帯電話やPCを使ってご相談を受けることは、すでにカウンセリングも含め、行っています。薬は処方箋をFAXしたり、あるいはご自宅に配送します。会計で行列をつくらなくてすむように、カード決済や後日まとめての支払いなど、院内に滞在する時間を極力短くするように考えています。
    そうした対応の有無は病院によって異なりますが、患者さんの側から希望を出せば、病院として対応を考えるので、不安があれば率直に相談されるといいと思います

    PCR検査や抗体検査の導入も検討しています

    発熱やせきがあっても、PCR検査を受けるハードルが高いのが現状なので、山王病院では手術や採卵のときに患者さんが安心して治療を受けられるように、PCR検査や抗体検査の導入も検討しているところです。

    ただし、せきや発熱があるかたが検査を受ける場合は保険診療で無料ですが、症状がないけれど心配で検査するという場合は、現時点では自由診療(自費)となる見込みです。院内感染のリスクを心配されるかたも多く、いずれは入院時の検査の中にPCR検査を入れることが、ルーティンになってくるかもしれません。

    【堤先生からのメッセージ】

    不妊治療に取り組むみなさんが、1周期、1周期をどれだけたいせつにされているかを、診療にあたる医師やスタッフは知っています。治療を延期するか継続するかの判断は、それぞれの患者さんのお気持ちや事情によって異なりますが、今後の治療方針なども含め、ご夫婦で主治医と納得いくまで相談してください。また医療側としては、在院時間を短くして、ソーシャルディスタンスを保つ体制を急ぎ構築することが、患者さんの安心につながると思っています。みなさんの妊活が新型コロナウイルスによって、困難な状況にならないことをお祈りしています。

    山王病院
    院長
    リプロダクション・婦人科内視鏡治療センター長
    国際医療福祉大学大学院教授
    堤 治先生

    東京大学医学部産婦人科教授を経て、2008年4月から現職。不妊治療・生殖医療全般を広く行う。そのなかでも、子宮内膜症や子宮筋腫に対する診察と内視鏡手術に多くの症例を持つ。また分娩にも立ち会い、妊娠・出産の喜びを共有している。東宮職御用掛を拝命し、雅子皇后のご出産を担当した。日本を代表する産婦人科医の1人。『マンガでわかる!はじめての不妊治療』(主婦の友社)ほか監修本・著書多数。

    *記事の内容は取材(2020年4月29日)時点の情報に基づいています。

    取材・文/山岡京子 構成/大隅優子(主婦の友社)

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