着床率UPのためにできることって?着床のギモンに答えます【不妊治療専門の医師監修】|妊活webマガジン 赤ちゃんが欲しい(あかほし)
不妊治療
不妊検査でも原因が見つからないのに、タイミング法、人工授精で結果が出ない。グレードのいい胚を移植したのに、妊娠反応ナシ…。「もしかして着床しにくいのかも?」という不安は、きっと妊活中の多くの人が感じたことがあるはず。
そんなモヤモヤを解消すべく、松本レディースリプロダクションオフィス院長の松本玲央奈先生のもとへ伺いました。松本先生は診療のかたわら、大学で着床に関する基礎研究にも携わる着床のスペシャリスト。着床についての研究の最前線、着床率を上げるためにできることをたっぷり教えてくださいました。
妊娠成立のために最も大きな要素は、なんといっても卵子の質です。年齢を重ねるとともに卵子は老化し、妊娠率も下降線をたどっていきます。ただ、妊娠の成否を左右するのは、卵子だけではありません。3割ほどは、着床環境の影響があるといわれています。
3割という数字の根拠となったのは、ヨーロッパで一般的になった着床前診断のデータ。
いわゆる着床前診断とは、体外受精でできた受精卵を胚盤胞まで培養し、その細胞の一部を取り出して染色体の数に異常がないかを調べる検査です。染色体の数に異常がない胚を移植することで、流産を減らし、妊娠率を高めることが期待されます。
日本ではまだ診断を受けられる条件が限られていますが、ヨーロッパではこの着床前診断が広く行われています。その結果、遺伝情報に問題が見られない胚を移植しても、妊娠率は約70%にとどまるということがわかってきました。卵子に問題がないのに妊娠が成立しないとなれば、残りの3割は子宮の環境や免疫の問題などが関わっているのではないか、と考えられるようになったのです。
子宮内膜は、基底層と機能層に分けられます。
妊活中の方は、「受精卵が着床しやすいように、子宮内膜にふかふかのベッドを準備しましょう」と耳にしたことがあるかもしれませんね。
排卵後から徐々に厚く育ってくるのは、内膜の機能層。内膜の厚さは、移植のタイミングを決めるためのひとつの指標となっています。内膜がしっかりと厚く育っているほうが、受精卵が着床しやすいのではないかと考えられるためです。
ただ、子宮内膜が厚ければ、着床環境は万全かというと、必ずしもそうとは限りません。内膜が薄くても妊娠する方もいるので、ホルモン値などほかの検査数値も見ながら、総合的に判断することが大事です。
体外受精の凍結胚の移植の際には、人工的に子宮内膜を厚くする「ホルモン補充周期」が用いられることもあります。
すでにトップアスリートの怪我の治療などに用いられている、再生医療のひとつで、難治性の着床不全にも効果が期待できると注目されています。
採血をし、血液のなかから細胞を増殖させる因子を抽出し、フリーズドライ加工を行います。自身の血液からつくった増殖因子を注入することで、子宮内膜を厚く育て、受精卵を着床しやすくすることをめざした治療法です。
受精卵が着床しづらくなる原因として、近年、注目されるようになったのが慢性子宮内膜炎です。慢性子宮内膜炎は、その名のとおり、子宮内膜に慢性的にダラダラと炎症が続く状態。発熱やおりものの変化などの症状がないため、見逃されやすいのが厄介な点!
何度も胚移植をしてもうまくいかなくて検査をしたところ、慢性子宮内膜炎が見つかるということも少なくありません。
慢性子宮内膜炎は、体外受精で何度も不成功が続いている人、流産を繰り返す人の66%が罹患していると言われています。
慢性子宮内膜炎を調べるためには、次のような方法があります。
膣から子宮内に内視鏡を入れ、子宮内の状態を見る検査です。慢性子宮内膜炎のほか、着床を妨げる原因となる子宮内膜ポリープ、子宮粘膜下筋腫などの発見にも有効です。
慢性子宮内膜炎を引き起こしていると思われる菌の有無、その割合を調べることができる検査です。炎症を起こす菌は、マイコプラズマ、ウレアプラズマなど。
通常の検査では検出できない特殊な菌ですが、子宮内フローラ検査ではこうした菌も特定することができるので、菌の種類に合わせた適切な抗生物質を処方して治療を行うことができます。
慢性子宮内膜炎を発症すると、菌を撃退しようと抗体を作る「形質細胞」が作られます。この細胞の有無を調べるのが、CD138染色です。子宮内膜を少量採取し、子宮内膜のなかにCD138という細胞マーカーが陽性の形質細胞がないかを診断します。
子宮が受精卵を受け入れるのは、限られた一定の期間のみです。この期間のことを「着床の窓」、または「着床ウィンドウ」と呼びます。
着床の窓が開く時間の長さ、時期には個人差があります。移植しても妊娠に至らない場合、移植のタイミングが着床の窓とズレている可能性もあります。
移植のタイミングで内膜を採取。スペインで検査を行います。
これまで全世界で3万件を超える検査が行われ、その30%近くに着床の窓のズレが発見されました。最適な移植時期を特定することで、妊娠率が24%上昇したという報告もあります。
検査から結果が出るまでには約2ヶ月の時間がかかります。胚移植を行うときと同じようにホルモン補充で子宮内膜を厚く育て、移植を行うタイミングで子宮内膜を採取する必要があるからです。採取した検体はスペインに空輸され、次世代シークエンサーを用いて解析されます。
免疫力アップや生活習慣病の予防のために、腸内細菌をととのえることが大事、と言われます。腸内には100兆個もの細菌がすみついて、腸内細菌叢(腸内フローラ)をつくっています。
実は、子宮のなかも同様にたくさんの細菌が住んでいて、細菌叢が形成されていることがわかってきました。
健康な子宮内膜にはラクトバチルスなどの善玉菌が豊富に存在します。一方、子宮フローラが乱れて悪玉菌が増えてしまうと、胚の成長に悪影響を与え、着床を妨げてしまうことが考えられます。
慢性子宮内膜炎を調べるためにも行われる、子宮内フローラ検査で子宮内フローラを構成する菌の割合を調べます。
次世代シークエンサーによる感度の高い解析技術を用いて、通常の検査では検出しづらい菌も調べることができます。
乳酸菌は、子宮内の環境をととのえるのに非常に重要な役割をになっています。
ヨーグルトなどの発酵食品を意識的に摂るのもおすすめですが、子宮環境を改善するために十分な量を食事だけでまかなうのは至難の技です。乳酸菌のサプリメントなどを活用するのもいいでしょう。
子宮内フローラを構成する菌は、腸から移動してきているということがわかってきます。
腸内環境が乱れていると、子宮内フローラの改善のためにと乳酸菌を内服しても、せっかくの乳酸菌が子宮まで届きづらくなることも考えられます。
そこで、新しい試みとしてスタートしたのが内科と連携し、腸内フローラと子宮内フローラを同時に改善する治療法です。松本レディース リプロダクションオフィスでは、東長崎駅前内科クリニックと連携。子宮内の検査だけでなく、提携の内科で腸内フローラの検査と腸管洗浄が行えるようになりました。宿便を流し、腸内環境を改善することで、子宮内環境を改善できる可能性があります。
子宮筋腫とは、子宮の筋層にできる「こぶ」のようなもので、子宮のトラブルのなかではよく見られるものです。
子宮腺筋症は、子宮内膜に似た組織が子宮の筋層内にでき、増殖する病気です。
子宮筋腫や子宮腺筋症は、場所や大きさ、数などによっては、妊娠の妨げになることも。不妊治療の前に手術で摘出すべきか、妊娠を優先すべきかは、慎重な判断が必要です。
手術を行った場合、約半年間の避妊期間を設ける必要があること、子宮の耐久性が落ちて、妊娠中の子宮破裂などのリスクが高まる可能性もあるからです。
子宮も腸と同じように常に蠕動(ぜんどう)運動をしています。この蠕動運動には一定の方向性がありますが、子宮内に筋腫があると「異物を体の外に押し出そう」と、子宮の外にむかう蠕動運動が見られることがあります。
けれど、筋腫は筋肉の中に入り込んでいるので自然に排出されることはありません。子宮はいつまでも外へ外へという蠕動を続けてしまうのです。これにより受精卵が押し出され、着床しづらくなってしまう可能性が考えられています。
子宮の蠕動運動を観察できるCINE MRIを用いることより、手術を優先するべきかどうかの判断がしやすくなります。
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