不妊治療

    菅総理と会談した杉山先生を直撃!不妊治療の保険適用、どうなりますか?

    公開日:2020.10.06 / 最終更新日:2020.10.26

    菅総理と会談した杉山先生を直撃!不妊治療の保険適用、どうなりますか?

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    2020年9月8日、自民党総裁選の所見発表演説会で菅 義偉候補が不妊治療への保険適用の実現をめざすことを打ち出し、大きなニュースに。16日に第99代首相に選出されると、21日には産婦人科医と面会しました。

    厚生労働省は不妊治療を受ける人への助成制度に関し、現在の所得制限を撤廃の検討を開始するなど、不妊治療の保険適用の実現に向け、政府が動いているニュースが連日のように入ってきます。

    そんな新内閣・菅首相が面会した杉山産婦人科理事長・杉山力一先生に、いったいどのような話があったのか、また今後どうなることが予想されるのか、杉山先生の考えを聞きました。

    妊活メディアあかほしが実施しているアンケートより、実際に妊活・不妊治療に取り組む方々から寄せられている生の声もあわせてご紹介していきます。

    保険と自費の「混合診療」が課題に

    Q.菅首相と面会されたとき、どのようお話をされたのですか?

    自民党の総裁選に立候補されたときに電話をいただき、「不妊治療の保険適用を政策に入れるので、いろいろ教えて欲しい」とのことでした。そして、内閣総理大臣に就任されてすぐ、直にお電話をいただき、都内のホテルで1時間ほど面会となりました。

    総理は少子化対策の一環として関心を示され、「不妊治療に協力したい」とのことで、私からは不妊治療の現状をご説明しました。また、保険適用の問題点や助成金についても話が及びました。

    保険適用については「混合診療」が大きな問題になるだろうということを伝え、不妊治療の助成制度に関しては、

    (1)所得制限の廃止

    (2)第二子は回数制限をリセットする

    (3)助成金額の増額

    について、ご提案しました。

    Q.混合診療は、どうして問題なのでしょうか?

    【不妊治療の保険適用】Q.混合診療は、どうして問題なのでしょうか?

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    杉山先生:体外受精や顕微授精などの高度生殖医療は、保険が効かない自費での治療です。

    現在の保険診療のルールでは、自費で治療をした月(体外受精の治療をした周期)は同じ治療には保険が適用されません。保険診療と自費診療を混合してはいけないきまりなのです。すると、体外受精を保険適用で行う場合、その治療周期では自費の治療はできなくなります。

    例えば、体外受精や顕微授精は保険適用となっても、受精卵の凍結や保管はどうなるのか? ほかにもさまざまな治療のオプションがありますが、それらに保険点数が付くでしょうか。そうでない場合は、混合診療になってしまうので問題です。

    混合診療ができないと、これまで行っていたさまざまな治療が行えなくなってしまいます。
    また、新しい薬剤や海外では使われている薬剤でも、日本では薬事法などの関係で、すぐに治療に用いることはできません。自費であれば、海外から輸入して治療に使用することができます。

    体外受精が保険適用になったとしても、自費で追加できる治療を残しておいて欲しいというのが、不妊治療に携わる多くの医師の希望です。

    混合診療が認められたらうれしいですが、ほかにも患者数が多い病気や命にかかわる病気はありますから、不妊治療だけ特例が認められるかは疑問です。

    \アンケートよりリアルな声/

    体外受精にステップアップしてみて、はじめて体外受精の周期に入ると自費診療が増えることを知りました。助成金の申請にも限りがあり、年齢的なリミットもあるので長くは続けていけないだろうとは思っています。保険適用にして欲しいです。(あやのさん・32歳/妊活歴2年半)

    不妊治療のスタンダードと患者の病院選び

    Q.保険適用になると治療が変わる可能性があるということですか?

    杉山先生:不妊の原因や状況はそれぞれ異なり、不妊治療はカップルの状況に応じて進める、いわばオーダーメイドの治療です。自費の場合は、さまざまな選択肢から治療法を選ぶことができます。しかし、保険適用だと、それができなくなる可能性があるということです。

    一方で、日本の不妊治療には「スタンダードがない」ともいえます。患者さんの中には、「スタンダードがないから不妊治療はわかりにくい」という意見もあり、「保険のほうがいい」というひとつの理由となっているでしょう。

    保険適用になれば、全国どこでも同じ治療が受けられるので、患者さんは病院選びを迷わないですみます。また、保険適用になることで、職場での理解が得やすくなって治療に通いやすいという利点もあるでしょう。

    日本の体外受精では、採卵前に排卵誘発剤の注射をあまり打たない方法(低刺激法)が多いですが、世界的にみるとそれは主流ではありません。

    「日本で低刺激法が主流の理由は、仕事をしながら不妊治療をしているから。働いている方にとって、連日注射を打って副作用で入院、といったリスクは受け入れがたいのではないか」というお話は、総理にもしました。
    菅総理は「ふむふむ」と聞いていらっしゃいましたが、このあたりは各論なので具体的にイメージされるのは難しいかもしれません。

    \アンケートよりリアルな声/

    【不妊治療の保険適用】妊活女性のリアルな声

    保険適用に賛成はしたいけれど、自由診療だったからこそレベルの高い治療ができているクリニックもあるのでは? クリニックがそのレベルの維持やそれ以上の治療ができるのか心配。(AYKさん・ 30歳/ 2年3カ月)

    年齢に関わらず不妊である可能性はあるが、そのことが一般的に認識されていないと思う。今回の不妊治療への保険適用の動きは幅広い世代に知ってもらうきっかけになりそう。(manaさん・ 29歳/妊活歴 7カ月)

    Q.保険適用になった場合、技術や妊娠率の低下を危惧する声も聞きますが…

    杉山先生:医療技術が低下するわけではありません。保険適用によって、今まで行われていた自費の治療ができなくなることで、治療の選択肢が狭まり、妊娠に遠回りになる可能性は考えられます。

    また、限られた予算の中では設備投資などの面からも限界があり、最先端の治療が出来にくくなるかもしれません。
    医療施設では妊娠率を少しでも上げようと高額な機械を導入し、治療に活用していますが、こうした点も踏まえて自由診療の治療費を決めています。しかし、保険診療となると治療費は決まっているので、今までのような設備投資ができなくなるかもしれません。

    さまざまな面を考えて、自由競争のほうが治療成績は上がると思います。保険に反対するわけではなく、いろいろな治療が選択できるようにすることが大事で、それが体外受精の妊娠数を増やすことにつながると考えます。

    体外受精の助成金は? 

    Q.助成制度について3つの提案をされました。くわしく教えてください。

    (1)所得制限の廃止

    国が定める体外受精の助成制度の対象者は、夫婦合算で730万円という所得制限があります。まず、この所得制限を撤廃して欲しいと伝えました。東京では905万円ですが、差額分は都が負担しています。国が負担して、全員が助成を受けられるようになれば、治療の機会が増え、妊娠する人も増えるでしょう。

    (2)第二子は回数制限をリセットする

    現在の助成のしくみは、助成を受けて1人目の出産をしたあと、次の治療をする際には前回の助成回数が引き継がれます(最大6回まで)。これを出産後は回数をリセットして、また同じ条件で助成をスタートすることを提案しました。2人目は妊娠しやすいので、少子化対策としても意味があります。

    (3)助成金額の増額について

    現在の体外受精の助成金額は、初回は30万円、2回以降は15万円です。体外受精をするにあたり、ある程度の自己負担は必要だと思いますが、1回目の体外受精で妊娠しない場合、2回目にまた採卵をすると負担が大きい。現在の15万円から30万円になると、患者さんにとっては治療しやすいでしょう。

    保険適用の場合、治療費の患者さんの負担は3割で、仮に体外受精に30万円かかるとしたら10万円は自己負担です。助成金で1回30万円給付されるなら、そのほうが患者さんの負担が少ない場合も考えられるでしょう。

    \アンケートよりリアルな声/

    【不妊治療の保険適用】妊活女性のリアルな声

    賛成です。保険が適用されることで不妊治療は高額だからと子供を諦めていた人も治療を受けることができますし、不妊治療の金額が軽減されることによって生まれてきた子供の養育費にまわせる、またはもう1人ほしいなと思う人が増えるんじゃないかなと思ったからです。(ゆきさん・26歳/妊活歴 1年)

    体外受精をすすめられたが、所得で助成適用されず。所得があるといえど、やはり数十万円は家計に痛く、まだ踏ん切りがつきませんでした。所得制限が撤廃されれば、体外受精にも挑戦したいです。(れんれんさん・ 28歳/ 9カ月)

    日本のトップの方が不妊治療というワードを言ってくれただけでも、すごく感動しました。ましてや保険適用なんて!全部保険になんて贅沢なことは言わないので一部でも保険がきいてくれれば、だいぶ心がラクになります!(あゆさん・ 29歳/ 4年5カ月)

    新型コロナウイルスの影響は?

    Q.新型コロナウイルス感染症の妊活への影響は?

    杉山先生:現在、日本で1年間に生まれる赤ちゃんは約86万人ですが、新型コロナウイルス感染症の影響で1〜2割は減るとみられます。東京都では母子健康手帳の配布数が増えていません。里帰り出産がしにくい状況からみて、地方でも出産は減少すると考えられます。

    体外受精などの高度生殖医療で生まれる赤ちゃんは1年間に約6万人。これが1万人増えれば、少子化対策として大きな意味があると思います。

    今度どうなるかはわかりませんが、最も早くできそうなことは助成制度の所得制限の廃止で、早期の実現を願います。

    今すべきことは? ~杉山先生からのメッセージ~

    もし保険適用になったとしても、タイミング法や人工授精で妊娠の可能性があり、年齢に余裕があるなら、体外受精を安易に受けるべきではないと思います。

    一方、妊娠率は年齢によって変わるので、必要な人は情勢を気にするばかりではなく、1日も早くトライすることが大事です。そのためにも、まずは不妊検査と卵子の在庫の目安がわかるAMH検査を受けることをおすすめします。

    杉山産婦人科 理事長 杉山力一先生

    杉山産婦人科 理事長
    杉山力一先生
    1994年東京医科大学卒業。2001年不妊治療専門の杉山レディスクリニック開院。2007年に産婦人科総合施設 杉山産婦人科世田谷を開院。2011年に杉山産婦人科丸の内を開院。2018年杉山産婦人科新宿を開院。

    杉山先生監修の書籍『男の子女の子が欲しい!あかちゃんの産み分けがわかる本』は好評発売中!

    【参照】
    厚生労働省:不妊に悩む方への特定治療支援事業
    東京都特定不妊治療費助成の概要

    文/高井紀子

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