クリニックでのタイミング指導。自己流の排卵予測との違いは?【不妊治療専門医監修】|妊活webマガジン 赤ちゃんが欲しい(あかほし)
不妊治療
だれでも治療への最初の一歩を踏み出すのは、なかなか勇気がいることです。でも専門医に相談すれば、赤ちゃんに会える日は近づくはず。妊活ビギナーさんが知っておきたい、クリニックでのタイミング指導について解説します。
不妊治療専門クリニックでのタイミング指導では、成長していく卵胞の確認が超音波(エコー)でできます。また、子宮内膜の厚さも測ります。卵子は直接超音波で見ることはできないので、卵子の入っている卵胞の大きさを測って、排卵を予測します。卵胞が20mmくらいまで育つと排卵が起こります。前日に見えた卵胞が消えていたら、排卵があったことが確実にわかります。これが自己流と違う最大のメリットです。
それ以外にも尿や血液中のホルモン値の測定などもして、総合的に排卵時期を予測するので、自己流に比べ、精度はグンと高まります。
クリニック受診のメリットはそれだけではありません。生殖医療の専門家は、経験も知識も豊富なプロフェッショナルです。そのプロのアドバイスを受け、相談することで、自分たちがどうしたいかの判断の助けになります。
自己流でうまくいけばいいですが、何事もその道の専門家に相談するのが、早道ではないでしょうか。
タイミング法で妊娠するための最低限の条件として、女性側では排卵が起きていることと卵管が通っていること、男性側では精子の数や運動率に大きな異常がないことが挙げられます。このどれかに問題がある場合は、タイミング法では妊娠できません。
排卵の有無は基礎体温表からもある程度はわかりますが、確実なのは、やはり超音波検査やホルモン検査です。
排卵があっても、卵管が詰まっていたら、卵子は精子と出会うことができません。卵管の通過性を調べるのは子宮卵管造影検査です。子宮内に造影剤を注入してレントゲンで観察することで、卵管が通っているか、卵巣や卵管の周囲に癒着がないかなどを調べます。造影剤を入れることで卵管の通りがよくなる治療的な意味もある重要な検査です。
男性の精液検査も必須です。できるだけ早めに受けておきましょう。
フーナーテストは、検査当日の朝、もしくは前日の夜にセックスをし、実際におりものの中に精子が進入できているかを判定するもの。タイミング法で妊娠できるかどうかを見極める参考になります。
排卵がうまく起こらない人や、卵子の成長が遅く、排卵までに時間がかかる人は、まずその原因を調べる必要があります。卵子を育てるホルモンの分泌が少ないときは、排卵誘発剤が処方されます。
複数の卵胞がある程度育っているのに排卵できない状態の多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の場合も、排卵誘発剤を使います。もっとも広く使われるのがクロミッドという飲み薬です。
ただ、排卵誘発剤を使用してタイミング法をするというのは、あまり推奨されていません。というのは、クロミッドを使うとおりものが減少する副作用があり、それなら人工授精のほうが圧倒的によい結果が出るからです。
飲み薬ではなく、注射による排卵誘発剤は、直接卵巣に働きかけるので、多くの卵子ができて、多胎のリスクがあります。絶対ダメということはありませんが、タイミング法では、強い誘発剤の使用はあまりおすすめではありません。
なお、プロラクチンという、排卵を妨げるホルモンの値が高い、高プロラクチン血症の場合は、プロラクチンの分泌を抑える薬を使うことがあります。
タイミング法を行うときにいちばん注意したいのは、夫婦の関係がギクシャクすることです。「きょうがその日だから、絶対早く帰ってきて」「せっかくのチャンスなのに、疲れてできないなんて」など、タイミング、タイミングと迫ると、男性にはかなりのプレッシャーがかかります。
セックスは本来楽しく、エキサイティングなものであるはずですが、日本人は統計を見ても、世界で最も性交渉の機会が少ない民族で、それがタイミングにしばられることで、ますますできなくなってしまいます。セックスが義務や仕事になってしまっては、本末転倒。
そうした状態を招かないために、夫婦の関係をスムーズにしていく努力、よりよいリレーションシップを築くことが、タイミング法に限らず、子づくりには大切ですね。
「ラブホテルなど環境を変える」「排卵祭りとイベント化する」「あえて事前に伝えず、当日そんな雰囲気に持ち込む」「シリンジ法を試す」といった声も。
タイミング法を半年から1年試してうまくいかないときは、次のステップとして人工授精に進みます。
人工授精は、排卵のタイミングに合わせて、マスターベーションで採取した精液を洗浄濃縮して、元気な精子を選別し、直接子宮内に注入する方法です。そのあとの受精や着床は自然の妊娠となにも変わりません。
実はセックスがうまくいかないカップルは思いのほか多く、タイミング法にトライするうちにできなくなる場合などもあるので、タイミング法にこだわらずに人工授精に進むほうが、結果が出ます。
人工授精では、9割以上が6回以内で妊娠するというデータがあり、それで妊娠に至らなかったときは、年齢や状況などを考慮したうえで、体外受精や顕微授精へステップアップするかどうかを検討しましょう。
主人公:幸田一郎(35歳)、栄子(32歳)
2年半前、元職場の先輩と結婚した栄子。 結婚1周年のときに「そろそろ子どもを」と考え妊活を始めますが、最初は治療の足並みもそろわず……。ふたりの妊活と読者のみなさんも同時進行でがんばりましょう。
クリニックでは超音波で卵胞の育ちぐあいもチェックします。そこが自己流との違い。排卵日の予測が、より正確になります。
『妊活夫婦』は「comico」で 毎週土曜日連載中!
comicoはスマートフォンに最適化した閲覧環境が特長の国内最大級のマンガ・ノベルアプリ。200作を超えるオリジナルマンガとノベルを定期掲載のほか、「単行本」コーナーでは61,000作を超える人気作も配信。世界累計ダウンロード数は3,500万件を突破。
●自己流タイミング3回したけれど妊娠せず。最初に行った産婦人科でいきなりクロミッドを出されなんだか不安になり、不妊治療専門病院へ。血液検査やフーナーテストを行い、薬なしのタイミング法でやってみましょうと。4ヶ月目で妊娠できました。
(Iさん/29歳/ベビ待ち歴6ヶ月で妊娠)
●結婚後2年半ほど、遠距離週末婚をへていざ妊活! しかし、なかなか授からず、通院スタート。クロミッドを服用し1周期目で妊娠することができました。
(Sさん/32歳/ベビ待ち歴1年1ヶ月で妊娠)
●自己流タイミング8回、病院指導で3回目で妊娠しました。毎月、排卵日を予測して仲よくするのがだんだんストレスに感じるように。早めに病院へ行ったほうが、精神的負担が少なく効率よかったのかも。
(Aさん/30歳/ベビ待ち歴1年で妊娠)
当院では全妊娠のうち約3割のかたがタイミング法で妊娠されています。
いきなり高度な治療を受けなくても、心身や費用の点で最も負担が少ないタイミング法で妊娠できれば、それはとてもハッピーなことです。
新型コロナウイルス感染拡大の危機を乗り越えられるかどうかは、免疫力にかかっています。免疫力を上げることは、すなわち卵子や精子の質を高めることでもあります。妊娠をめざすかたに、エールを贈ります!
山下レディースクリニック
院長 山下正紀先生
1980年奈良県立医科大学卒業。オーストラリア・アデレード大学で体外受精を基礎から学び、帰国後舞鶴市民病院にて近畿圏初のGIFT法による妊娠に成功。神戸中央市民病院勤務をへて、97年神戸市三宮に山下レディースクリニックを開設。
<出典:妊活スタートBOOK2020>
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