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    『子宮内膜症』はどんなトラブル?知っておきたい症状や治療法

    『子宮内膜症』はどんなトラブル?知っておきたい症状や治療法

    子宮内膜症とは、月経のときに体外に排出されるべき子宮内膜が、卵管や卵巣などで増殖する病気。特徴的な症状は鎮痛剤を飲まなければならないほどの重い月経痛ですが、ほかにもさまざまな症状が。子宮内膜症の原因と症状を知って、正しく対処していきましょう。

    子宮内膜症とは?

    子宮内膜は子宮の内側だけに存在する粘膜です。妊娠が成立すると受精卵を育てるベッドのような役割をしますが、受精卵が着床しない間は、はがれて月経血として排出されます。

    この子宮内膜に似た組織が、なんらかの原因で子宮以外のところにできてしまうのが「子宮内膜症」です。

    子宮内の内膜は月経のたびに膣から排出されますが、子宮以外の場所で増殖した内膜は出口がないため、きれいに流れ出ていくことができません。残った内膜が傷んだり、炎症をおこしたりすると、ひどい痛みやほかの臓器との癒着などのトラブルを引き起こします。

    子宮内膜症になる原因は?

    子宮内膜症の原因ははっきり解明されていませんが、次のようなことが原因と考えられています。

    ①子宮内膜移植説(月経血逆流説)

    月経のときにはがれた子宮内膜は月経血とともに膣から体外へと排出されますが、その一部が逆流し、卵管からおなかの中へ逆流。この逆流した月経血が体内のあちこちに付着して子宮内膜症になると考えられています。

    ②体腔上皮化生説(たいくうじょうひかせいせつ)

    腹膜や卵巣の表面を覆っている体腔上皮(1~10数層の細胞の層でできた組織)が、なんらかの原因によって子宮内膜のように変化して子宮内膜症になるという説です。

    ①②以外の説

    ①子宮内膜移植説、 ②体腔上皮化生説が現在最も有力な2大仮説ですが、ほかにも諸説あります。

    免疫学的異常説

    免疫機能に問題があり、子宮以外の場所にできた子宮内膜組織の増殖を許してしまうという仮説です。

    月経血の逆流は80〜90%の女性に見られますが、すべての女性が子宮内膜症になるわけではありません。子宮内膜症になる人は、免疫のトラブルが関係しているという考え方です。

    幹細胞説

    子宮内膜は月経の周期ごとに増殖・分化して厚みを増し、妊娠が成立しなければはがれ落ちるサイクルを繰り返す「機能層」と、月経には影響されずにずっと存在する「基底層」があり、子宮内膜症は「基底層」にある「幹細胞」によって起こるとする説です。

    他にもいろいろな説がありますが、どれも仮説にとどまっています。

    どんな人が子宮内膜症になりやすい?

    子宮内膜症になる人には次のような傾向があります。

    月経痛が強い人

    月経痛で日常生活を送るのがつらい、鎮痛剤が欠かせないなどの月経困難症がある人は、そうでない人に比べて2.6倍も子宮内膜症を発症しやすいというデータがあります。

    月経回数が多い人

    初潮が早かった人、月経周期が短い人、月経の期間が長い人、月経血の量が多い人は、子宮内膜症になりやすいです。月経回数が多くなることで、月経血の逆流が起こる回数も増えるためです。

    ストレスの多い人

    理由はわかっていませんが、ストレスの多い人も、子宮内膜症になる人が多いと言われています。

    子宮内膜症を発症しやすい年齢は?

    子宮内膜症は妊娠しないで月経をくり返すことによって増えていきます。月経が始まってから年数がたつほどに増加。発症のピークは30才で、20代では5〜7%、30代では7〜10%程度の女性に見られます。

    初潮の低年齢化にともない、10代で発症する人も増えています。

    子宮内膜症の人が急増中。その理由は?

    子宮内膜症は20代から40代の女性を中心に急激に増えています。

    日本子宮内膜症啓発会議(JECIE)によると、子宮内膜症は月経がある女性の約10%。現在、日本での患者数は約260万人にものぼりますが、残念ながら多くの女性はきちんと治療を受けていません。

    近年の患者数の増大には、次のような要因が関係していると考えられています。

    初潮を迎える年齢の低年齢化

    最近の調査では、初潮の平均年齢は12才。初潮の年齢は体格に関係しているといわれ、昔に比べて小中学生の体格がよくなったことが影響していると考えらます。

    初潮を迎える年齢が早くなると、女性ホルモンが分泌される期間が長くなります。初潮から妊娠・出産までの期間が長くなったことが、子宮内膜症が増える一因と考えられます。

    晩婚・晩産化

    ライフスタイルの変化により、晩婚・晩産化の傾向が続いています。平成7年には男性28.5才、女性26.3才だった平均初婚年齢は、2017年には男性31.1才、女性29.4才に。第1子出生時の母の平均年齢は、昭和50年では25.7才、平成28年では30.7才です。

    出産しない女性も増えていることから、昔に比べて生涯の月経回数が格段に増えたことも原因の一つです。

    少子化

    妊娠・出産・授乳よって月経がこない時期は卵巣が休める期間。月経がないことで、子宮内膜症が軽快します。また、妊娠・出産経験の多い人には、子宮内膜症が少ないというデータもあります。

    月経回数が増えた現代女性は、それだけ月経時に経血が逆流する機会や、女性ホルモンにさらされる機会が増えます。それにともなって、子宮内膜症が発生しやすくなっています。

    子宮内膜症だと何が問題?

    子宮内膜症は月経をくり返すたびに増殖、悪化していきます。子宮内膜症組織からの出血は、体外に流れ出ることができずに炎症を起こし、周辺の組織、臓器と癒着して激しい痛みを引き起こします。

    具体的にはどんな症状が出る?

    自覚症状として最もわかりやすいのは月経痛ですが、そのほかにもさまざまな症状が出ることがあります。子宮内膜症によって引き起こされる症状をみていきましょう。

    月経困難症

    初期の月経困難症は、子宮内膜症予備軍のサインであるといわれます。内膜症に進行すると、月経痛はさらにひどくなり、月経時にはベッドから起き上がれない、鎮痛剤が効かない、といった重い月経痛が続くようになります。

    内膜症と診断された人のうち、88%もに見られる代表的な症状です。

    月経痛を起こすのは、子宮内膜から放出されるプロスタグランジンという物質。プロスタグランジンは子宮を収縮させ、経血を排出する役割を担っています。子宮内膜が子宮以外でも増殖すると、それだけプロスタグランジンの分泌も多くなるため、子宮を収縮させる力が強まって、痛みがひどくなります。

    痛みの特徴は「前回は痛かったけれど、今回はラク」といった波がなく、徐々にひどくなっていくこと。なかには下腹部痛とともに、頭痛、吐き気、嘔吐、発熱などの症状が出る人も。排卵痛を訴える人もいます。

    過多月経

    1時間ごとにナプキンを替えないと間に合わなかったり、経血中にレバー状のかたまりがたくさん混じるなどの症状が出ます。

    排便痛・性交痛

    子宮内膜症が腹部の奥深くにできると痛みが強く、排便時や性交時に痛みが出ることがあります。とくに子宮のすぐ後ろにあるダグラス窩というくぼみや、子宮を支える靭帯などに内膜症ができると、性交時に痛みが出ることが多いです。

    日本内膜症協会の調査では、性交痛がある人は内膜症患者の57%、排便痛は39%の人に現れます。

    便秘・頻尿・下血・血尿

    腸や膀胱と癒着すると、腸や膀胱の機能が低下して、排便痛、性交痛のほか、便秘、頻尿、下血、血尿といった症状が現れることも。

    どんなときに痛みが出るかで、内膜症ができている場所や進行程度を見極める手がかりになります。

    不妊症

    子宮内膜症を持つ人の3〜5割は不妊症だと言われています。内膜症は炎症や癒着を起こすため、卵巣周囲が癒着すれば排卵しにくくなったり、卵管周囲が癒着すればピックアップ障害が起こったりします。

    また、卵巣に袋状のチョコレート嚢胞できると卵子の質が低下したり、AMH(アンチミューラリアンホルモン)の値、つまり卵の残存数も減ると言われています。卵子の質が悪いと、なかなか受精にいたりません。

    子宮内膜症によって子宮内の環境が悪化し、せっかく受精卵ができても着床しづらいケースもあります。

    関連リンク:もしかして着床しづらい体質かも!基礎体温グラフでわかる不妊の原因

    月経随伴性気胸(げっけいずいはんせいききょう)

    月経随伴性気胸とは、排卵前後、月経前後になると肺から空気がもれて呼吸困難になったり、胸の痛みを起こしたりする病気です。多くは右の肺に起こり、子宮内膜症を発症している人に多く見られます。

    原因は子宮内膜が肺や横隔膜に付着して増殖してしまうこと。子宮内膜症のほとんどは骨盤内の腹膜や卵巣などにできますが、ときには肺などに散らばってしまうこともあるのです。

    横隔膜や肺に子宮内膜症を発症すると、月経のたびに肺や横隔膜でも内膜組織が増殖し、はがれ落ちます。このとき横隔膜や肺に穴をあけてしまうことが、気胸(肺から空気が漏れて、肺がつぶれてへこんでしまうこと)の原因になると考えられています。

    卵巣にできるチョコレート嚢胞は不妊症や卵巣がんの原因に!

    卵巣のなかに子宮内膜が増殖すると、体外に出られない血液が袋のようにたまっていきます。古い血液がチョコレート色をしていることから「チョコレート嚢胞」と呼ばれています。

    子宮内膜症にかかっている人の20〜30%にチョコレート嚢胞が見られます。チョコレート嚢胞が引き起こす症状は以下の通りです。

    【不妊症】
    卵巣の働きが低下し、排卵が起こりにくくなる
    卵の質が低下する
    卵の残存数が減る
    卵管周辺の組織が腹膜や腸とくっついてしまうと、卵巣から排卵された卵子を取り込むための卵管采の動きがさまたげられ、ピックアップ障害になる

    【破裂】
    チョコレート嚢胞が破裂して骨盤内に古い血液が流れ出してしまうと、急激な腹痛を起こし、緊急手術が必要になります。周囲に感染して卵巣膿瘍を引き起こすことも。

    【卵巣がん】
    年齢や大きさによっては、がんに変化するリスクも指摘されています。

    子宮内膜症と似た症状が出る「子宮腺筋症」という病気も

    子宮腺筋症は子宮の筋肉の中で子宮内膜が増殖する病気で、子宮内膜症と似た症状が出ます。

    子宮腺筋症の原因は①子宮の手術や出産をきっかけに、子宮内膜症と同じように、子宮の筋層に子宮内膜が入り込んでしまうこと ②子宮の筋層に直接、子宮内膜ができてしまうことの二つです。

    起こりやすい年齢は30代半ばくらい。30%程度の人に子宮筋腫や子宮内膜症の合併が見られます。

    子宮腺筋症の代表的な症状は激しい月経痛、過多月経、月経時以外の下腹部痛です。子宮筋層のなかで子宮内膜が網の目状に増殖するため、痛みはかなりのものになります。

    子宮内膜症が発生する場所は?

    子宮内膜症の多くは、骨盤内の卵管や卵巣、腹膜などに発生しますが、まれに肺や脳などにできることもあります。

    腹膜

    おなかの中は「腹膜」という薄い膜で覆われています。腹膜や臓器の表面に子宮内膜に似た組織がバラバラと散らばると、癒着の原因となります。出血、癒着をくりかえした部分がかたくなることも。

    卵管

    卵管の周囲で癒着が起きると、不妊のリスクが高まります。

    膀胱・腟

    頻度は低いものの、膀胱や膣に内膜症ができることもあります。膀胱にできると、月経時に血尿が出たり、尿がでにくい、頻尿などの症状が出ます。

    膣にできると、過多月経の症状があらわれ、月経時の出血が極端に多くなることがあります。

    卵巣

    卵巣は子宮内膜症が最も起きやすい場所です。月経ごとに卵巣内で出血を起こしますが、逃げ場がないために卵巣内に血液がたまっていきます。チョコレートのように見える古い血液がたまって卵巣が大きく腫れるため、「チョコレート嚢胞」と呼ばれます。

    チョコレート嚢胞は不妊の原因となるほか、まれに破裂して緊急手術が必要となる危険もあります。また、卵巣がんに変化するリスクも高いことに注意が必要です。

    ダグラス窩・仙骨子宮靭帯・膀胱子宮窩

    子宮と直腸の間のくぼみであるダグラス窩、子宮を支える仙骨子宮靭帯、膀胱と子宮の間のくぼみである膀胱子宮窩にもよく起こります。

    とくに多いのはダグラス窩にできる子宮内膜症です。膣の奥に位置するため、性交痛の原因となります。また、ダグラス窩は直腸と隣り合っているため、直腸と癒着して排便痛を引き起こすこともあります。

    皮膚・腸管・肺

    頻度は低いものの、皮膚、大腸、肺、脳などにできる場合もあります。症状は発生する部位によってさまざまですが、月経時に症状が出ることは共通しています。

    皮膚にできた場合

    月経時に皮下出血をして青あざができることが。

    腸管内にできた場合

    排便時に出血したり、大きくなると腸の流れをさまたげて腸閉塞になることも。

    肺にできた場合

    月経のときに喀血(肺・気管支から出た血をせきとともに吐き出すこと)をしたり、呼吸困難になる気胸を起こしたりします(月経随伴性気胸)。

    上記以外にも、脳、神経、リンパ節、骨、乳腺、尿路などに起こることもあります。

    子宮内膜症を放置するとどうなる?

    子宮内膜症は時間とともに進行していきます。進行の度合いは次の4つのステージがありますが、基本的には第4期まで進行しても命に関わることはありません。

    ただ、痛みにより生活の質が著しく下がってしまうため、早めに治療を受けることが大切です。

    子宮内膜症の4つの進行段階

    【第1期】子宮内膜症の組織が子宮以外に点々と散らばり、成長を始める段階。自覚症状はほとんどなく、超音波検査でも見つからないことも。ただ、超音波検査では見つけられないごく小さな子宮内膜症があるだけでも、すでにAMH(アンチミューラリアンホルモン=卵巣予備能)が低下し、妊娠しづらくなっているというデータも。

    関連リンク:AMHって何?卵巣の中の「AMH」から卵子の質と状態をチェック!

    【第2期】小さな点だった病巣が増殖、剥離を繰り返すうちに広がっていく段階。卵巣が軽度腫大チョコレート嚢腫となり、子宮卵巣の周囲に軽い癒着が起こります。月経痛が強くなる、出血量が増えるなどの自覚症状が現れはじめます。症状に気づいたら早く受診し、治療を受けることが望まれます。

    【第3期】子宮内膜症の組織が大きくなり、卵巣、腹膜、子宮を支える靭帯などに癒着するように。卵巣内のチョコレート嚢腫が増大し、破裂や不妊のリスクが高まります。激しい月経痛のほか、排便痛、性交痛が起こる人も。

    【第4期】卵巣や子宮だけでなく、骨盤内にある小腸、直腸、膀胱などの臓器全体にまで癒着が広がります。骨盤内の臓器がガチガチのかたまりになって、まるで冷凍されたように見えることから「凍結骨盤」と呼ばれることも。

    ここまで進行すると、月経時以外でも下腹部痛がひどくなり、鎮痛剤を内服しても日常生活に支障が出るほどに。内膜症が肺や脳などに飛び火することもあります。

    子宮内膜症ががん化する可能性は?

    子宮内膜症は良性腫瘍ですが、卵巣内に子宮内膜が増殖したチョコレート嚢胞の人は注意が必要です。年齢が高くなるにつれ、チョコレート嚢胞と卵巣がんの合併率は高くなるというデータもあります。

    チョコレート嚢胞が大きい場合、40才以上の場合は早く治療しましょう。

    早期発見のポイントとセルフチェック

    以下のセルフチェック項目が当てはまるものがある場合は子宮内膜症の可能性があります。早めの受診がおすすめです。

    【セルフチェックリスト】

    □ 市販の鎮痛剤を飲んでも効かないほど、ひどい月経痛がある
    □ 月経時以外にも下腹部痛がある
    □ 性交痛がある
    □ 排便時に肛門が痛む
    □ 母親、もしくは姉妹が子宮内膜症と診断された
    □ 経血にレバー状のかたまりがある
    □ 経血量が多く、頻繁にナプキンを交換したり、タンポンとナプキンを併用しなければならない
    □ 月経時以外にも出血することがある
    □ 赤ちゃんが欲しいのに1年以上妊娠しない

    子宮内膜症を予防するには?

    子宮内膜症の原因、発生のメカニズムはまだはっきりと解明されていないため、予防法も確立されていないのが現状ですが、次の方法は有効です。

    妊娠する

    子宮内膜症は月経をくり返すことで進行する病気です。そのため、妊娠・出産・授乳による月経の停止は、子宮内膜症の予防や、初期の内膜症の軽快にもつながると考えられます。

    ただ現実には、子宮内膜症の予防のためだけに妊娠を計画するのは難しいもの。ひどい月経痛や排便痛、性交痛、月経血が多いなどの症状が気になったら、そのままにせずに早めに産婦人科を受診しましょう。

    低用量ピルを服用する

    ピルを内服することで自分自身の排卵は止まりますが、子宮内膜症の軽快を期待できます。すぐに妊娠を希望していないけれど、将来の妊娠のチャンスに備えたい人に有効です。

    オメガ3脂肪酸をとる

    青魚や亜麻仁油などに含まれるオメガ3脂肪酸が、子宮内膜症の予防につながるという説もあります。ただ、しっかり証明がされているわけではありません。

    子宮内膜症の検査はどんなことをする?

    子宮内膜症はさまざまな部位に発生する可能性があるので、いくつかの検査を行って総合的に診断します。

    検査Step1:問診

    医師の質問に答えながら、症状や痛みの程度を伝えていきます。問診のときによく効かれるのは

    症状が月経に伴って起きるか
    痛みの程度
    痛みがラクに感じる姿勢があるか
    出血の量や形状
    月経の周期や不正出血の有無

    などです。医師に聞かれない場合でも、「便秘やおしっこが近くなった」など、些細に思える症状も進んで伝えるようにしましょう。診断の大きな助けになります。

    検診Step2:内診・膣鏡診

    膣を触診する内診と、膣鏡(クスコ)という器具を挿入して膣や子宮頚部を目でみてチェックする検査です。これにより、子宮・卵巣などの位置や大きさ、子宮の動きや癒着の有無などを調べることができます。

    性交経験がない場合は、内診は行わないことが多いです。

    検診Step3:画像検査

    画像検査には超音波検査、MRI検査・CT検査、腹腔鏡検査があります。子宮内膜症の場所や範囲、子宮内膜症以外の病気が隠れていないかを診断するために行います。

    必ずすべての検査を行うわけではなく、医師と相談しながら行う検査を決めていきます。

    【超音波検査】

    超音波を発する器具(プロープ)を使った検査です。腟内に挿入する経膣エコーと、おなかのうえから当てる経腹エコーがあります。膣からの検査では、経腹エコーよりも詳細な、子宮や卵巣、その周囲の情報が得られます。

    【MRI検査・CT検査】

    磁気を利用した画像検査「MRI検査」では、チョコレート嚢胞を正確に診断でき、子宮内膜症の検査では有用なものです。子宮内膜症の広がり具合、周囲の臓器に及ぼす影響についても推定が可能になります。

    X線を使った「CT検査」でも、MRI検査と同様にチョコレート嚢胞の有無、子宮内膜症の発生している部位、癒着の程度などを調べることができます。

    【腹腔鏡検査】

    おへその下に小さな穴を2〜3カ所あけて、そこから内視鏡を入れてモニターに映像を映し出します。

    卵管や卵巣など、おなかの中の様子を詳しく観察する検査で、超音波検査ではわからない平面的な病変や癒着を確認することができます。腹腔内に子宮内膜症が発生すると、その部分が青く見えることがあり、ブルーベリースポットと言われます。

    腹腔鏡検査の特徴は、検査と同時に癒着をはがすなどの治療の同時に行えることです。全身麻酔で行うため入院が必要になりますが、開腹手術よりも身体的負担は軽くすみます。

    妊娠を希望している場合は必ずその旨を伝え、卵巣機能を温存して妊娠・出産の可能性を最大限に残します。

    検査Step4:血液検査(CA125値測定)

    子宮内膜症では、過多月経や不正出血によって貧血が起こることもあります。血液検査によって、出血の程度などを推測できます。

    また、血液のなかのCA125やCEAという腫瘍マーカーの値もチェックします。子宮内膜症によって、数値が上昇することがあるためです。ただし腫瘍マーカーの値が高いからといって必ずしもがんができている、ということではありません。

    治療後の数値に変動に注目することで治療の効果判定にも役立ちます。

    子宮内膜症の治療は?

    子宮内膜症の治療法は症状や年齢、治療後の妊娠を希望するかなどをもとに検討する必要があります。ここでは

    すぐに妊娠を希望しないとき
    早く妊娠したいとき
    妊娠を希望しないとき

    に分けて、治療の選び方を考えてみましょう。

    すぐに妊娠を希望しないときは

    症状や年齢などによって、薬物療法か手術かを選択します。

    子宮内膜症以外の病気も疑われる場合や、大きなチョコレート嚢胞がある場合などは手術が適しています。

    症状が軽い場合、将来的には妊娠を考えているが今は希望しないという場合は、多くのケースで薬物療法がとられます。

    鎮痛剤を用いて痛みを軽減する

    比較的軽度の子宮内膜症には、痛みの原因となるプロスタグランジンを抑える効果のある鎮痛剤「NSAIDs(エヌセイズ)」を用いて痛みをやわらげます。

    ただし、薬の効果はあくまで痛みの軽減であり、子宮内膜症の進行を止めたり、病巣を小さくしたりする効果はありません。NSAIDsの使用中も妊娠は可能です。

     痛みが強い場合はホルモン治療を

    子宮内膜症は、エストロゲンという卵胞ホルモンによって増殖します。ホルモン療法は、エストロゲンの分泌を抑制し、子宮内膜症の病巣を小さくすることを目的とした治療です。

    ホルモン療法に使われる薬にはさまざまな種類があります。治療中の妊娠はできません。代表的な治療法と使われる薬を見ていきましょう。

    偽妊娠療法

    よく使われるのは、2種類の女性ホルモンが配合された「低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬」です。一般的に低用量ピルといわれる経口避妊薬で、排卵を抑え、妊娠しているような状態をつくります。排卵を止めることで子宮内膜の増殖を抑え、内膜を萎縮させます。

    薬の服用を休む期間に月経が起こりますが、子宮内膜が薄いために出血量が少なく、痛みも軽くすみます。痛みが強いとき、月経量が多いときに有効です。

    低用量ピルにもさまざまな種類があり、保険適用がされるもの、されないものがあります。かつて多く使われていた中用量ピルよりも副作用が起こる可能性が低く、長期間にわたって使うことができます。

    ただし、まれとはいえ、血栓症には注意が必要です。体質やホルモンバランスを見て、医師と相談しながら薬を選択する必要があります。

    偽閉経療法

    女性ホルモンの分泌量を減らし、閉経したときと似た状態をつくりだすことで、子宮内膜症を小さくする治療法です。鎮痛薬やピルを使用しても効果が見られないときに選択します。

    「GnRHアゴニスト」というホルモン剤を用いて、卵巣からの女性ホルモンの分泌を低下させる方法が主流です。GnRH製剤には、点鼻薬と注射薬があります。閉経と似た状態をつくることから、更年期障害のような症状や骨量の減少が起こる恐れがあるため、原則として6カ月以上の使用はありません。治療を終了すると月経が再開します。

    同じく、閉経の状態をつくりだす薬に、男性ホルモン作用のある「ダナゾール」という経口薬もあります。GnRHアゴニストと同様に、卵胞ホルモンの分泌を抑えて月経を止める効果があります。ただ、体重増加やにきび、吐き気などのほか、血栓症や肝機能障害などの副作用があり、使用の目安は4〜6カ月です。

    黄体ホルモン療法

    「ジェノゲスト」という黄体ホルモンの誘導体を使った治療です。卵巣機能を抑えて女性ホルモンを減少させることで、子宮内膜症を小さくします。また、子宮内膜症の病巣に直接働きかける作用もあります。

    GnRHアゴニストと同程度の効果が得られるうえに、GnRHアゴニストやダナゾールよりも更年期障害に似た副作用が少ないのが特徴です。偽閉経療法では6カ月以内に治療を終了するのが原則ですが、ジェノゲストは長期間にわたって使うことが可能。子宮内膜症の治療において注目されている薬です。

    ただし、不正出血やほてり、頭痛などの副作用が出ることもあるので、定期的に医師の診察を受ける必要があります。

    早く妊娠したいときは

    妊娠を希望している場合、薬の服用は原則しません。不妊症の治療として子宮内膜症を治療が必要なときには手術が選択されるのが一般的です。

    妊娠を希望しているかたに行う手術は、子宮内膜症を完全に治すことよりも、妊娠の可能性を最大限に残すことが優先されます。こういった手術を「保存手術」、または「温存手術」と言います。不妊治療専門クリニックで検査、治療を受けるのがよいでしょう。

    不妊治療で早めの妊娠をめざす

    妊娠すると月経が止まるため、子宮内膜症の症状もおさまり、病巣も小さくなります。妊娠が子宮内膜症の治療にもつながるわけです。

    すぐに妊娠を希望していて、内膜症の進行が軽度の場合は、不妊治療をスタートすることが第一選択になります。体外受精を視野に入れて、早めの妊娠をめざすのがよいでしょう。

    ただ、出産後に月経が再開すると、内膜症が再び大きくなることは念頭におかなければなりません。

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    チョコレート嚢胞は手術でとる

    タイミング指導や人工授精で妊娠しない場合、または体外受精を選択してもチョコレート嚢腫が邪魔をして採卵に支障をきたす場合は、治療が必要です。

    アルコール固定術で手術する

    経膣の超音波で病巣に針を刺し、チョコレート嚢胞の中の液を抜き取って、代わりにアルコールを注入。内膜症の組織を消滅させます。

    卵子への影響が少なく、チョコレート嚢胞の処置ができますが、術後効果がいつまで続くか不明確なこと、手術をしないため、卵巣嚢腫が良性か悪性かの判断ができないことなどのデメリットもあります。

    また、アルコールにアレルギーがある人にも行えません。

    腹腔鏡手術で病巣をとる

    臓器同士の癒着がひどい場合、チョコレート嚢胞によって体外受精での採卵が難しくなっている場合は、腹腔鏡で癒着をはがしたり、病巣をとったりする手術が行われます。

    ただし、チョコレート嚢胞の手術では卵子のもととなる原子卵胞も一緒にとってしまうため、卵巣機能が低下する恐れがあります。

    また、小さな病巣や隠れた部分についてはとりきれないことも多く、再発の可能性があります。

    妊娠を望まないときは

    症状が非常に重く、薬物療法では効果が得られず、さらに妊娠を望まないことがはっきりとしている人には、症状を取り除いて再発の可能性を少なくする、あるいは完全になくすことができる「準根治手術」「根治手術」を行います。

    手術は開腹手術か腹腔鏡手術で行います。腹腔鏡手術のほうが体への負担は小さいものの、視野が広い開腹手術のほうが適している場合も。症状や病巣の場所によって適した手法がとられます。

    準根治手術

    子宮内膜症の病巣とともに子宮を全摘出し、片方の卵巣などを残します。毎月の月経がなくなり、痛みからも解放されます。残った卵巣からは女性ホルモンが分泌されるので、更年期症状を防ぐこともできます。

    ただし、ホルモンの働きがある以上、とりきれなかった病巣から再発する可能性は残ります。

    根治手術

    子宮、左右の卵巣、卵管などをすべて摘出します。月経はなくなり、子宮内膜症のすべての症状から解放され、再発することもありません。

    ただし、女性ホルモンの分泌がなくなるため、のぼせ、多汗、気分の落ち込みなどの更年期症状が起こってきます。こうした症状を防ぐために、ホルモン補充療法が必要です。

    低用量ピルの内服

    年齢と大きさにより適応は限られますが、手術で卵巣や子宮を摘出するというストレス・不安を回避できます。

    漢方薬を使うことも

    子宮内膜症の治療のサポートに漢方薬が使われることもあります。代表的な漢方薬としては「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」、「加味逍遙散(かみしょうようさん)」、「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」があります。

    手術の前に漢方薬を飲む、体外受精の治療と並行して漢方薬を使うことも。服用するときは自己判断ではなく、医師や漢方専門薬局に相談しましょう。

    子宮内膜症の治療中に心がけたいことは?

    病気への理解を深める

    ひとくちに子宮内膜症といっても、病巣の場所、進行の度合いによっても症状が異なります。さらに妊娠を希望するかどうかによっても、治療の選択肢は変わります。自分の病気への理解を深めるとともに、ライフプランを考えたうえで治療を選ぶことが大切です。

    医師とよく相談する

    ホルモン療法や保存手術では、閉経するまで再発する可能性も残ります。長くつきあう病気ととらえ、かかりつけの医師のもとで定期的に診察を受けましょう。薬の服用中に出血がした、気分が悪いなど気になる症状があれば、ひとりで悩まず早めに医師に相談してください。

    家族や周囲に理解してもらう

    家族や周囲の理解を得ることも重要です。まだ「生理痛は病気ではない」という認識の人も少なくありません。「生理痛ぐらいでおおげさ」「生理を口実になまけている」なんてレッテルを貼られてしまったら、体だけでなく心も疲弊してしまいます。

    家族や上司、同僚の理解が進み、必要なときには休息がとれるような環境をつくれれば、治療の心理的な負担も軽くなるはずです。

    日常生活で気をつけることは?

    子宮内膜症による症状は、日常生活にも支障があるほどひどいことが少なくありません。しかし適切に治療を受ければ、痛みをコントロールし、進行を遅らせることができます。スポーツや趣味、旅行などもこれまで通りに楽しみましょう。

    ただ、性交痛がある場合は、無理してセックスをするのはつらいもの。パートナーの理解は不可欠です。ひとりで抱え込まずに、パートナーに症状を率直に話しましょう。痛みのない体位を工夫するなど、お互いにとって満足できる方法を工夫して。

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    子宮内膜症は、放っておけば徐々に進行していきます。命に関わることはないとはいえ、痛みによって日常生活が楽しめなくなったり、将来の不妊を引き起こしたりと、あなどれない病気なのです。「生理痛ぐらいで」と軽視せず、早めに病院を受診して、適切な治療を受けましょう。

    監修

    桜の芽クリニック院長
    田中(西)弥生先生

    日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医。日本生殖医学会認定生殖医療専門医。1997年日本医科大学卒業。日本医科大学産婦人科学教室に入局し、2004年に医学博士取得。06年より杉山産婦人科に勤務。17年桜の芽クリニック開院。豊富な産科経験をもとに、出産まで見すえた治療を行う。

    関連リンク:桜の芽クリニックレポート
    http://sakuranome.tokyo/

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