不妊治療

    妊活カップルに急増「タイミングED」とは? 妊娠できる?

    公開日:2019.10.05 / 最終更新日:2019.11.05

    妊活カップルに急増「タイミングED」とは? 妊娠できる?

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    赤ちゃんを望むから排卵日にタイミングをはかっているのに、それがストレスやプレッシャーになって、逆に妊娠を遠ざけることが! タイミング法が原因で起こる「タイミングED」について、男性不妊治療の専門家、獨協医科大学埼玉医療センター病院長・泌尿器科医の岡田 弘先生に聞きました。

    そもそもEDとは

    

EDは、射精障害のひとつで「勃起不全」のことをいいます。

    EDの定義は、「性交時に十分な勃起が得られないため、あるいは十分な勃起を維持できないため、満足な性交ができない状態」のことです。

    *EDは「Erectile Dysfunction」の略で、直訳すると「勃起機能の障害」という意味。

    EDにはどんな種類がある?

    



    EDは、状況によって種類があります。

    パートナー(妻)にだけに勃起しない「妻だけED」、相手がパートナー以外でも勃起しない「誰でもED」、そして、性的な衝動が起こらない「いつでもED」などです。

    「誰でもED」と「いつでもED」は、加齢や糖尿病などが原因のことが多いのですが、それらの場合を除くと、心理的な理由によって勃起しにくくなっています。

    一方、「妻だけED」は、別名「タイミングED」ともいい、妊活や不妊治療が大きく関係しています。


    EDの原因は? なりやすい人っている?

    

「誰でもED」と「いつでもED」は、加齢や高血圧、糖尿病などが原因で血流が悪くなって起こることがあります。それ以外は、心因性で勃起しにくくなっていることがほとんどです。また、過度の疲労やストレスなどで性欲が起きないというケースもあります。

    心因性の原因としては、過去のセックスで十分に勃起しなかったという失敗がトラウマになって、「今回はできるだろうか」「またうまくいかなかったらどうしよう」というように、自信が持てなくなったということが多くあります。


    最近増えている「タイミングED」ってなに?


    「タイミングED」は、不妊治療の最初のステップである「タイミング法」が原因で起こるEDです。

    タイミング法とは、女性の排卵日を予測して、その時期にタイミングを合わせて性交渉をすることです。

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    妊活のスタートとして基礎体温をつけたり、排卵検査薬を使ったりして、自分で排卵日を予測してタイミング法にトライする人もいます。

    一方、産婦人科のタイミング法は、超音波検査やホルモン検査などで、より正確に排卵日を予測して、「今晩、夫婦生活(性交渉)を持ってください」と医師から指導されます。

    医師から指示を受けた妻は、夫に「今晩、早く帰ってきてね」とLINEなどで連絡することが多いでしょう。「わかった、がんばる!」と最初ははりきっていた夫ですが、毎月それが続くと、やがてストレスに感じるようになる場合があります。

    また、家に帰ると、食卓にはウナギやニンニク、山芋、牡蠣などのパワーアップ食材が並んでいると、ますますプレッシャーに感じることもあります。

    そうしたことが続くと、妻からの「今晩、よろしくね」の連絡にドキリとして、「ごめん! 残業になった」とか「急に会合が入った」など、いいわけを考えてしまうことも。「指定された排卵日にしなくてはいけない」というたび重なる妻からの要求にプレッシャーを感じて、ついには排卵日にセックスができない「タイミングED」に陥ってしまうのです。

    女性にとっては、排卵は月1回のこと。それに合わせて体調を整えたり、日頃から健康に気を配ったりしているので、夫がうまくいかなければ努力はすべて水の泡。そして、来月までチャンスを待たなくてはいけません。「次こそは!」と、ますます力が入ってしまう人もいるでしょう。

    男女に起こる「排卵日うつ」

    排卵日に性交渉を持てないことで女性のほうは、「どうしてダメなの?」と夫に当たったり、「私のことが嫌いになったの?」と自分を責めたりすることがあるかもしれません。

    男性は、女性が考えているよりも繊細な心の持ち主が多く、「今回もダメだったら・・・」と不安になることも。すると、夫はますますプレッシャーを感じてEDを繰り返すことに。こうしたタイミング法によるストレスが高じると、うつ状態になってしまうこともあるのです。

    また、女性も「もし排卵日に夫がEDになって、できなかったらどうしょう」「私は女性として魅力がないのだろうか」という不安や葛藤を抱えて、これまたうつ状態になる可能性があります。

    そうして、排卵日が過ぎて女性が高温期になると、「妊娠のことを考えなくていい」とほっとして、夫婦とも元気を取り戻すことができます。こうした感情の大きな変化は「排卵日うつ」といえます。そこまでいかなくても、排卵日うつの予備群は多いのではないかと推測されます。

    このように「タイミングED」には、不妊治療が大きく影響しています。子どもを望んでタイミング法にトライするのに、逆にそれがEDという妊娠しにくい状態を作ってしまう、皮肉な現象です。


    「タイミングED」の体験談

    『赤ちゃんが欲しい』読者のみなさんの体験談を紹介します。

    夫がEDぎみでしたが、考えていても時間は過ぎてしまう。夫に負担がかからないよう心がけ、最終的にシリンジ法で妊娠しました。ラッキー。

    人工授精などの方法もあるので、無理にセックスにこだわらなくてもいいかも。ふたりで楽しむ方法を考えていくのでもいいのでは。

    セックスが作業になっていて悲しい。辛いです。授かり婚が、あこがれになりました。

    EDっぽかったのですが、これは精神的なもの。だから、無理なときは責めたりせず、明るく「大丈夫、大丈夫!」って感じでふるまいました。

    EDだけど赤ちゃんが欲しい。妊娠への道はどんな選択肢がある?

    内服治療  
    
EDの治療として、薬を用いることができます。ED治療薬には、バイアグラ、レビトラ、シアリスという3種類の飲み薬があります。ただし、勃起には性的な興奮が必要です。また、ED治療薬によって勃起はできるようになりますが、射精に至るかどうかは、また別の問題です。

    

人工授精

    早期の妊娠を目指すなら、タイミング法にこだわらず、人工授精という選択もあります。

人工授精は、マスターベーションで採取した精液を病院で処理したのち、女性の子宮内に注入する方法です。女性の腟内で射精しないだけで、自然妊娠と同じプロセスです。

    まずは、人工授精で妊娠・出産を目指し、それでうまくいけば、二人目の子どもは自然妊娠でトライしてはどうでしょうか。その間にEDが回復していることは十分に考えられます。また、「子どもがひとりいる」ということで、子作りのプレッシャーは少なくなるでしょう。



    シリンジ法

    シリンジ法は、マスターベーションで採取した精液を注射器のような容器に入れ、それを女性の腟に入れて、体内に精液を注入するものです。

    市販のキットを使うことができ、自宅でできる簡易な人工授精というイメージです。自分で行なうのに抵抗がある場合は、医療機関で相談するといいでしょう。医師のアドバイスを受けながらできる場合もあります。

    「タイミングED」の解決策はある?

    

EDだけが問題であれば、ED治療薬を活用しましょう。

    「もしものときは薬を使えばいい」と思うと、プレッシャーが軽くなることもあります。万一のお守りのような感覚です。治療薬は泌尿器科などで処方してもらいます。

    女性ができることもあります。

    もしもうまくいかなくても、男性を責めないことです。「またダメなの?」「役に立たないのね」などの言葉は禁物。男性はますますプレッシャーを感じて、追い詰められてしまいます。

    解決策は、ふたりで今の状態について話し合うこと。

    夫は、妻に対して「悪い、申しわけない」と思っていることがほとんどで、「この状況をどうにかしたい。妻の妊娠の望みをかなえたい」と思っているのです。ですから、妻は夫の気持ちをくみ取って接することが解決の糸口になるでしょう。


    ED治療薬にはどんなものがある?

    
日本で用いられているED治療薬は、バイアグラ、レビトラ、シアリスという3種類で、いずれも飲み薬です。

    バイアグラとレビトラは、性行為の約1時間前、シアリスは約2時間前に服用することで効果を発揮します。


    それぞれの特徴は、以下です。

    バイアグラ
    青い菱形の錠剤、性行為の30分~1時間前に服用、効果は4~5時間持続。ジェネリック医薬品も発売されています

    レビトラ
    オレンジ色の丸型の錠剤、性行為の30分~1時間前に服用、効果は5~10時間持続

    シアリス
    黄色い涙型の錠剤、性行為の1時間前に服用、効果は24~36時間持続

    いずれも医師の処方が必要な処方薬で、1錠1000~2000円程度です(処方代は別)。

    クリニックはどう選ぶ?

    EDで困っている場合は、不妊治療と男性の診療について明るい医師がいる病院・クリニックを受診することが望ましいです。

    特に男性の立場に立って、男性をかばってくれる、男性の味方になってくれるような医師がいる施設が理想的です。産婦人科は男性を診察する機会が少ないので、泌尿器科に相談してみるといいでしょう不妊治療専門クリニックの中には泌尿器科医がいる施設もあるので、そうしたクリニックで相談するのもおすすめです。

    タイミングEDは根源的にはカップルの問題なので、男性・女性の両方について理解をしてもらえる医師に相談できればベストです。

    岡田先生からのメッセージ

    「タイミングED」は、お互いを思いやるふたりだからこそ起こってしまう問題です。相手を思うあまり不安や心配な気持ちがつのり、関係がぎくしゃくしてしまうのです。

    男性はぜひ、妻である女性をほめてください。「君のことが大好きだ。それなのにセックスできなくてゴメンね」と素直な気持ちを伝えましょう。

    女性には「すてきなダンナさんを見つけましたね! ご主人は、あなただからできないんですよ」とお話ししています。その言葉に泣いてしまう女性もいます。ご主人の気持ちを、本当はわかっているのでしょうね。

    まず、ふたりでゆっくりと話すことが大事です。そこから関係を回復していきましょう。

    しかし、妊活をゆっくりと進めていると女性の年齢が上がって妊娠しにくくなる可能性があります。ふたりの関係づくりと並行して、人工授精での妊娠を目指すのが現実的です。

    編集部まとめ

    妊娠のためによかれと思ってすることが、プレッシャーとなって起こる「タイミングED」。特別なことではなく、どのカップルも起こる可能性があるのです。それを避けるにはコミュニケーションが大事だとあらためて認識しました。タイミング法に限らず、日頃からお互いの気持ちを伝え合うことが妊活を成功に導くポイントのようです。

    監修

    獨協医科大学埼玉医療センター 病院長
    リプロダクションセンターGM、泌尿器科主任教授

    岡田 弘先生

    男性不妊を専門とする泌尿器科医の第一人者。30年以上にわたり、最前線にて日本で最も多い男性不妊患者の臨床にあたる。特に無精子症に対する最先端治療であるMD-TESE(顕微鏡下精巣内精子採取術)においては、日本で最も症例数が多い。また「射精障害」など、現代に特有の男性不妊症のパイオニアでもある。

    獨協医科大学埼玉医療センター リプロダクションセンター
    http://www.dokkyomed.ac.jp/dep-k/repro/

    オフィシャルサイト「男性不妊バイブル」
    http://maleinfertility.jp

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