男性不妊の原因と治療法は?精液の正常値、精液検査のプロセス写真も公開!|妊活webマガジン 赤ちゃんが欲しい(あかほし)
不妊治療
妊活・不妊治療は女性だけががんばりがちですが、原因が男性にあることも多いのです。
ベビ待ちカップルの半数は男性にも原因が! 男性不妊の第一人者、岡田 弘医師(獨協医科大学埼玉医療センター病院長)にお話を伺いました。
不妊カップルの半数近くは男性にも原因があります。男性は自分が原因という自覚がないことが多く、検査を先送りにするうちに女性が年齢を重ねて妊娠しにくくなることが。
妊活をするなら、まずはカップルで検査をしましょう。早く原因を見つけて早く適切な治療を開始する。
これが、妊娠への近道です!
数字はWHO(世界保健機関)の調査によるもの。男性不妊は、けっしてめずらしくないことがわかります。
まずは精液検査をします。その結果によって、さらにくわしい検査や必要に応じた治療をすることになります。その進め方は不妊原因や期間、夫婦の年齢や希望などにより異なります。
原因は男女半々なので、検査は同時に受けるのが理想です。女性が先に受診している場合でも、男性は早めに検査を。妊活はカップルでとり組むのが基本です。
射精した精液の状態を調べるのが、精液検査。検査の結果はWHOの基準と比較しますが、独自の基準を設けている施設もあります。また、性交障害や射精障害に関するチェックを、精液検査と同時かその前にする必要があります。
タイミング指導、人工授精などへ
精液検査で特に問題が見つからなければ、排卵日に合わせてセックスするタイミング指導からスタート。妊娠しない場合は、人工授精にステップアップすることも。
●外科的治療
精巣の静脈にできたこぶをとり除く精索静脈瘤の手術のほか、精巣から精子をとり出す、精子の通り道をつくり直すなど、これまで子どもをあきらめるしかなかったケースにも、授かる望みが生まれています。
●より精密な人工授精、 検査
精子の数が極端に少ない、精液中に精子が見当たらない場合などは、男性不妊にくわしい泌尿器科で検査を。原因がわかれば適した治療を受けることが可能。
●人工授精、 体外受精など
精子の数が少ない場合などは、精子と卵子を出会いやすくする治療として、人工授精や体外受精・顕微授精を行ないます。精子の状態や夫婦の年齢などにより、選択する治療法は変わります。
不妊カップルの場合、男性に対しては「精子の通り道」「勃起や射精」「精子をつくる機能」を確認します。その結果、元気な精子の数が少なかったり、精液中に精子が見つからなかったりすることも。主な原因は4つです。治療法もあわせて解説します。
精巣でつくられた精子は、全長約40㎝にも及ぶ精管を進んで、体の外に射精されます。精巣ではきちんと精子がつくられているのに、精子が移動するルートに問題があって、射精した精液中に精子が見当たらない場合は「閉塞性無精子症」と診断されます。
子どものころの鼠径ヘルニア(脱腸)の手術や精管炎で、精管のどこかが詰まっているケースなどがあります。
陰囊を切開して精巣組織をとり出し、顕微鏡で精子をさがします( TESE)。精子が見つかれば顕微授精をします。ふさがった精管を開通させる精路再建術もありますが、技術がむずかしく、治療できるクリニックは限られます。
十分な勃起を維持できないED(勃起不全)に加え、最近は「妻だけED」やタイミング法がプレッシャーになる「タイミングED」も。まちがったマスターベーションで女性の腟内では満足できず射精に至らないケースや、AVの影響で腟外射精しかできないケース、体外ではなく膀胱側に射精されてしまう「逆行性射精」もあります。
EDにはバイアグラなどの薬があります。射精障害は治療がむずかしく、人工授精が現実的。カウンセリングを受け、第2子は自然妊娠をめざす方法もあります。逆行性射精は膀胱から精子を採取し、人工授精や体外受精をします。
精子の数が少ない(乏精子症)、精子の運動率が低い(精子無力症)、正常形態の精子が少ない(奇形精子症)を総称して、「OAT症候群」といいます。精子をつくる造精機能に問題があると考えられますが、原因不明も多いのが現状です。精巣につながる静脈にこぶができる「精索静脈瘤」や、男性のホルモン分泌に問題がある「ホルモン分泌障害」が原因になっている場合も。
OAT症候群の治療では、精子を洗浄・濃縮して子宮に注入する人工授精を行ないます。それでも妊娠しない場合は、卵子をとり出してシャーレ内で受精させる体外受精、卵子に直接精子を注入する顕微授精が選択肢に。精索静脈瘤の場合はコエンザイムQ10やビタミンC・Eなどの抗酸化剤を含むサプリメントによる治療や、手術を行ないます。ホルモン分泌異常は不足するホルモンを補うホルモン補充療法を行ないます。
精子の通り道に問題がないのに見当たらない場合は、精巣内で精子がつくられていない(または極端に数が少ない)「非閉塞性無精子症」と考えられます。無精子症が疑われる場合は、精液を全量調べる必要があるため、精密検査にくわしい泌尿器科を受診します。2回、3回と検査をすると精子が存在するケースも(隠れ精子症)あります。
無精子症と診断されてもあきらめないで。精巣から精子をとり出すMD-TESE(micro TESE)の対象になります。これは陰囊を切開して精巣をとり出し、手術用の顕微鏡を使って精子がいそうな精細管をさがす方法。精子が見つかれば、採卵した卵子に顕微鏡下で直接注入する顕微授精をします。
マスターベーションで採取した精液を調べるのが、精液検査。精液の量や精子の状態をみます。1回目で問題がなければOKですが、数値が低いときは2回目にトライします。検査方法などによっては結果に誤差が出て、実際の数値よりも低く出ることがあるからです。
「もしも結果がよくなかったら、リラックスした状態で再トライ。出勤前より仕事帰りのほうが、精液所見がよいことも多いですよ」(岡田先生)
この数字は、セックスをして自然に子どもを授かる場合の最低限の基準値。下回っても妊娠できないわけではありませんが、可能性は低くなります。
①容器を受けとる
検査では専用の容器を使用します。口頭で注意事項の説明がある場合のほか、注意事項の用紙を渡されることも。とり違い防止のために、容器には必ず名前を書きます。
「従来品より精子の劣化が抑えられる採精容器が開発されています。顕微授精の際は精子に対してもできるだけのことをしたいものです」(岡田医師)
②採精室へ
精子を採取するために、プライバシーが確保された部屋でマスターベーションを行ないます。
不妊専門クリニックでは、雑誌やアダルトビデオなどが設置されていることも。
③精液を提出
所定の場所に容器を提出します。スタッフと直接顔を合わせなくていい配慮があるケースが多いようです。
容器の提出前には、名前が書いてあるかどうか、もう一度確認を。
その後、ラボでチェック
精液の量をはかり、一部を専用機器に移して顕微鏡にセットし、観察します。総精子数、元気に動く精子、形態が正常な精子の数などを
数えます。精液所見が基準値に達していない場合は、遠心分離器にかけて再度検査します。
精子を調べるための専用機器・マクラーチャンバーを顕微鏡にセットして、精子の様子を観察します。
↑ 正常精子
↑数が少ない精子
0.1mm四方のマス目の中に精子がどれくらい存在するか(総精子数)などを数えます。
治療は女性だけでなく、男性も一緒にカップルで始めましょう。基本の検査はカンタンです。リラックスして、検査に行きましょう。早く原因を見つけて、早く適切な治療を開始することが妊娠への近道です。
獨協医科大学埼玉医療センター病院長
リプロダクションセンターGM
泌尿器科主任教授
岡田 弘先生
神戸大学医学部卒業。男性不妊を専門とする泌尿器科医の第一人者。無精子症の最先端治療であるMD-TESE(顕微鏡下精巣精子採取術)においては日本で最も多くの症例数を手がける。著書に『男を維持する「精子力」』など。
HP「男性不妊バイブル」http://maleinfertility.jp/
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取材・文/高井紀子
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