神戸ARTレディスクリニック(兵庫県神戸市)

院長 森山 俊武 先生

1994年神戸大学医学部卒業。2000年神戸大学大学院博士課程修了。医学博士。米国ハーバード大学に学ぶ。神戸大学医学部附属病院助教、同周産母子センター副病棟医長、鐘紡記念病院医長、神鋼病院医長を歴任。2010年より神戸ARTレディスクリニックに勤務、2018年院長に就任。

Specialist Interview

体外受精でグレードの高い卵を移植をしているのになかなか着床しません。打開策はありますか?

グレードに頼らないPGT-Aで胚の状態を知り、大切な胚を戻すご自身の子宮内環境にも目を向けてみては

着床の問題は非常に複雑で今の医学でも分からないことが多い

シンプルで過ごしやすい雰囲気の待合室。大きな窓からは三宮をはじめ、神戸市街が一望できます。 

体外受精は不妊治療のなかでも、胚(受精卵)の発育状況などを確認できるため、より良質な胚を子宮に戻すことができる最も妊娠率の高い治療法です。
しかし、良質な胚を戻したはずなのに、なぜか着床せず妊娠しない……ということもよく起こります。一般的に、胚はその見た目からグレードを付けられ、より良い見た目の、妊娠するだろうと思われる胚を戻しますが、それを複数回繰り返しても、なぜか着床しないことがあるのです。実は、妊娠のメカニズムはまだわからないことも多く、不妊原因を調べるためにさまざまな最新の検査を駆使したとしても、今の医学で不妊原因が100%わかるわけではありません。なかでも着床の問題は非常に複雑で、なぜ着床しないのか、どこに原因があるのかはまだわからないことも多くあります。

最適な着床の時期を調べるERA検査などは有用な検査です

患者さんの大切な卵や精子を扱う培養室には約10人の培養士が在籍。

着床しない原因として考えられるのは、胚側の問題、子宮側の問題、両方の問題の3つ。当院では着床しない原因をできるだけ減らしたいと考え、さまざまな治療と検査をとり入れています。
まず胚側の問題について、体外受精で見た目良好な胚を移植しても着床しない原因の一つに、胚の染色体異常があります。これを解消するためには着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)を行い、着床、成長する可能性の高い胚だけを移植するという方法が考えられます。着床率は7割に、流産率は1割ほどになるようです。
次に子宮側の問題として、「着床の窓」を調べるERA検査を積極的に実施しています。子宮内膜に胚が着床できて、妊娠が維持できる時間や時期(=着床の窓)は個人差があり、実際、検査を受けられたおよそ50%のかたに時期のずれが見つかっています。このかたがたは適切な時期に移植することにより妊娠の可能性が上がります。しかしERA検査に関する論文を読み、非常に有効な検査だと感じましたが、海外で使っているホルモン剤などの薬と、日本での薬では反応が違ってくる可能性があります。さらに各施設で行うホルモン補充のやり方でも、その検査結果は変わってくるのではないかと考えています。そこで、当院ではERA検査の結果をそのままうのみにするのではなく、当院が独自に積み重ねたデータをふまえて、検査結果を解釈し活用しています。
また、子宮内膜の細菌を調べ、着床しやすい子宮環境にするためのEMMA検査やALICE検査もとり入れています。人の腸内にはさまざまな種類の細菌がバランスを取って腸内フローラを作り、腸内環境を良い状態にしていることは以前より知られていますが、それと同様に子宮内にも子宮内フローラが存在することが分かってきました。この子宮内フローラを調べる検査がEMMA検査です。この検査をすることで子宮内の細菌バランスを知ることが出来ます。
また、胚盤胞が着床し成長していく大切な場所である子宮内膜ですが、そこに慢性的に炎症を引き起こしてしまう可能性のある10種類の病原菌がいるかをALICE検査では検出します。この疾患は、ほとんどの場合自覚症状がありませんが、不妊治療をされているかた、反復着床不全・反復流産経験者では罹患率が高い傾向が見られます。
もし、これら2つの検査で細菌のバランスが悪い場合や病原菌が見つかった場合は、適切な抗菌薬の服用や、プロバイオティクス治療をしていただくことで、子宮内の環境を整えます。子宮内に、バイ菌がいると絶対に妊娠できないわけではありませんが、経験上、ブドウ球菌がいると着床はむずかしいように思います。当院ではおおよそ20人に1人くらいの割合でブドウ球菌が検出されてます。
他には、大変残念なことですが、万が一流産された場合、流産検体の染色体を調べることで、その流産の理由が染色体の数的異常なのか、それとも染色体の数に問題のなかった妊娠での流産だったのかがわかり、今後の治療の計画が立てられる場合もあります。
また、反復着床不全のかたにお勧めしているのはヘルパーT 細胞のT h 1とT h 2の血液検査です。正常妊娠では胎児と胎盤を異物とみなし攻撃するTh1細胞が減少しTh2細胞が優位になり妊娠を維持すると考えられていますが、着床不全のかたはTh1/Th2比が優位に高い場合があり、これにより胎児を攻撃してしまう可能性が指摘されています。この場合、免疫寛容を誘導する内服薬を服用していただき、胚盤胞に対する拒絶反応を避けるようにし、着床あるいは妊娠継続しやすい体内状態を作ります。
そして当院では、子宮内膜ポリープや子宮内膜の炎症の有無がわかる子宮鏡検査を必須にしています。また、着床不全と不育症には共通する原因があるようで、不育症の検査をおすすめする場合もあります。

一人ひとりに合わせたテーラーメイドな治療を提供しています

体外受精の際に利用するリカバリールーム。 

より着床しやすくするように胚移植で使う器具にもこだわっています。胚を子宮へスムーズに挿入し、かつ最適な位置に胚を静置するため、そのかたの子宮の向きや入りやすさによって使うカテーテルを変えて対応しています。
40代で治療を始める場合は、卵子を元気にするためにDHEAというサプリメントをおすすめする場合もあります。残念ながら市販はされておらず、日本では医薬品となります。
ERAやEMMA、ALICE検査は、遺伝子学的な検査であり、この分野はさらなる発展が期待でき、今後ますます不妊治療に活かされるのではないでしょうか。今後も最新技術をとり入れながら、患者さん一人ひとりの状況や体の状態に合わせて、テーラーメイドな治療を続けていきたいと考えています。

緊張せずに受けられそうな雰囲気の内診台。

診察するフロアとは別のフロアにキッズルームがあり、子連れのかたでも気兼ねなく受診できます。

DATA
住所 兵庫県神戸市中央区雲井通7-1-1 ミント神戸15階
問い合わせ 078-261-3500
アクセス 各線「三宮駅」よりすぐ
URL https://www.ivf.co.jp/
時間
9:00~13:00
17:00~19:00

△予約のみ

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