【第3回】惑わされないで! 妊娠率のマジック|最新妊活レポート

最新妊活レポート

第3回

惑わされないで! 妊娠率のマジック

不妊治療を始めると、気になるのが妊娠率。特に体外受精となるとなおさらですね。例えば、「30歳、妊娠率41.5%」なんて言われると期待感が高まりそうです。

さて、この数字、どういう意味かわかりますか?

30歳なら、どんな人でも40%の妊娠率が期待できる・・・というわけではありません。
今回は、妊娠率を読み解いていきます。
まず、こちらのデータを見てみましょう。

*ARTは、体外受精・顕微授精などの高度な生殖補助技術(Assisted Reproductive Technology=ART)のこと。
*ETは、受精卵(胚)を子宮に戻す胚移植のこと。

このデータは、日本産科婦人科学会が全国のART実施施設を対象に調査したものです。2012年の総治療周期数は326,426でした。

妊娠率を示すグラフは2つあります。

①の数字が「総治療周期数のうち妊娠した割合」、②の数字が「ET(胚移植)周期数のうち妊娠した割合」です。
③の生産率は「総治療周期数のうち出産した割合」、そして右にいくほど高くなっている④が流産率です。

先ほどの「30歳、妊娠率41.5%」は、②のET周期数のうち妊娠した割合です。
ちなみにこの数字、35歳では35.8%、40歳では24.0%と下がっていきます。

体外受精の治療周期では、排卵誘発剤の注射を打って卵胞を育て、採卵に向けて準備をします。ところが、採卵まで至らずに途中で治療が中止することも。
また、採卵できたけれど受精しなかった、受精卵の成長が途中で止まってしまった・・・なんてときには、これまた治療は中止。

最近は、受精卵を胚盤胞という状態まで長期培養してから胚移植するケースが多いのですが、この胚盤胞まで到達するのがなかなか大変で、途中で受精卵の成長が止まってしまい、胚移植までいかないことも少なくありません。

②のET周期数のうち妊娠した割合には、こうした「治療キャンセル」は入っていません。
つまり、数々の難関をくぐり抜けて、無事胚移植できた事例のみを分母にしているということ。

①も②も妊娠数は同じですが、①の総治療周期数よりも②のET周期数のほうが分母が少ないので、当然妊娠率は高くなるわけです。

①の「総治療周期数のうち妊娠した割合」で見ると、30歳は27.6%、35歳は23.4%、40歳は13.6%となります。

計算するときに分母を何にするかによって、このように数字が変わるのです。

じゃあ、私の妊娠率はどれくらい?

クリニックなどが発表している妊娠率を見るときには、「分母が何か」、そして「対象者の年齢」を確認するのがポイントです。

例えば、「妊娠率が30%」だとしたら、それは体外受精をした人全体の数字なのか、胚移植した場合なのか、また年齢や年代を確かめましょう。

個人差はありますが、一般的には年齢が高くなるほど妊娠率は下がります。
また流産率は年齢とともに上がるので、最終的に赤ちゃんを抱ける確率は若い年代より低くなるということも念頭においておきましょう。

数字というとむずかしい印象を持つかもしれませんが、治療について客観的にとらえるきっかけになると思います。
「私は数字がどうも苦手・・・」という方は、パートナーに読み込んでもらっては?

今回取り上げたデータは日本産科婦人科学会のウェブサイトで公開されていて、誰でも見ることができます。年齢ごとの治療数や妊娠率も記されているので、参考に。

同ウェブサイトの「2012年分ART臨床実施成績」では、新鮮胚(卵)や凍結胚を用いた治療成績、治療周期数からみた施設数の分布などもあります。とても興味深く、日本の不妊治療事情が見えてくるようです。

<参考>
日本産科婦人科学会 ARTデータ集
http://plaza.umin.ac.jp/~jsog-art/data.htm

Profile

高井 紀子

編集者&ライター。自らの不妊経験を生かし、2000年より不妊に関する単行本やムック、雑誌、ウェブサイトなどの編集・執筆等を手がける。趣味は温泉めぐりと空を眺めること。不妊体験者を支援する「NPO法人Fine」スタッフ。