第5回
原因不明・・・いつか妊娠できる?
こんにちは。いかがお過ごしですか?
今回は、治療のことについて考えてみましょう。
通院を始めると、まず妊娠しにくい原因がないかどうかを調べます。いわゆる「不妊の検査」です。
子宮や卵巣の状態、卵胞の発育や子宮内膜の厚さなどを確認する超音波検査。
妊娠に関係するホルモンの分泌を調べるホルモン検査(血液検査)。
子宮の形や卵管がちゃんと通っているかどうかを調べる子宮卵管造影検査。
排卵時期に性交して、頸管粘液の中に存在する精子の状態を調べるフーナーテスト。
必要に応じて、子宮鏡検査や抗精子抗体検査なども行なうかもしれません。
そして、男性側は精液検査で精液の量や精子の濃度、運動率や奇形率などを調べます。
こうした検査をして、もしも妊娠を妨げるような要因が見つかれば、それを治療しながら妊娠をめざします。
たとえば、排卵しにくいのなら、薬を使って排卵を促すことも治療のひとつ。
また、精液検査で精子の数が少し少ないとわかれば、人工授精をすすめられることもあるでしょう。
検査で特に問題が見つからなければ、一般的には「タイミング法でしばらく様子をみましょう」という流れになることが多いものです。
ただし、カップルの年齢や状況、希望によって治療の進め方は違います。
ここで気をつけたいことがあります。
「検査で問題が見つからなかった。これで妊娠できる」
ついそう思ってしまいがちですが、実は必ずしもそうではないのです。
男性も女性も検査で特に問題が見つからなくても、なかなか妊娠しないケースは、実は珍しくありません。
今までたまたまタイミングが合わなかっただけ、また、自分では「このあたり」と思っていた排卵日が実は違っていた、ということもあるでしょう。
覚えておいてほしいのは、「不妊の原因がない」のではなく、「現在の検査では見つからなかった」ということ。
ここで、妊娠のしくみをおさらいしましょう。
妊娠に至る道のりは、大きく分けると「射精・排卵・受精・着床」という4つのステップ。
このプロセスがすべてうまく働いて、はじめて妊娠することができます。
逆に考えると、どこかひとつにでも問題があれば妊娠に至らない、ということ。
そして、妊娠のプロセスは複雑で、まだ解明されていないことも少なくありません。
「精子と卵子はちゃんと出会って受精したか」
「受精卵は順調に分割したか」
「受精卵は卵管を通って子宮にたどりついたか」・・・・・・
このように体の中で起こっていることを、私たちは見ることができません。
そう、検査で妊娠にまつわることがすべてわかるわけではないのです。
つまり、現在の検査だけではわからない不妊原因がひそむ可能性があるかもしれないということ。
だからといって、悲観することもありません。
原因不明でも、妊娠・出産している人はたくさんいます。
これといった原因がつきとめられなくても、妊娠に向けた治療ができるのが不妊治療なのです。
大事なのは、現状を知ったうえで「自分たちはどう妊活するか」ということ。
治療に関しては、年齢や状況により選択肢は変わるでしょうから、主治医と相談して進めましょう。
「検査で問題がないから自然に授かるのを待ちます」というのも、もちろんあり。
ただし、何年もそれを続けるのは、妊娠から遠ざかる可能性も。
体の状態は変化するし、自分でタイミングをとっても妊娠しないなら、その方法ではむずかしいことも考えられます。
そんなときには、再度病院で相談してみるなど、自分たちの妊活方針の見直しをしてみてはいかがでしょう。
それには、やはり「現在の自分たちの状況を知ること」が大事なのです。
Profile
高井 紀子
編集者&ライター。自らの不妊経験を生かし、2000年より不妊に関する単行本やムック、雑誌、ウェブサイトなどの編集・執筆等を手がける。趣味は温泉めぐりと空を眺めること。不妊体験者を支援する「NPO法人Fine」スタッフ。
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