【第14回】不妊治療を終えた16人のドラマ 最新妊活レポート|あかほし

最新妊活レポート

第14回

不妊治療を終えた16人のドラマ

●「妊活、その後」を取材して・・・

春めいてきたこの頃、いかがお過ごしでしょうか?

前回に続き、最近発売された『不妊治療のやめどき』(松本亜樹子著・WAVE出版)の話です。

不妊治療をしても妊娠・出産できず、この先の可能性も低い・・・そうわかっていても、「次は妊娠するかも」と治療をやめられない。

また、治療をやめてしまったら自分はどうなるんだろう? 子どものいない人生を受け入れられるの? やめることが不安で治療を続ける人も。

本書では、16人の治療体験者の物語を紹介していますが、私はこの取材を担当させていただきました。

治療のためにキャリアをあきらめた人、夫婦の気持ちの温度差に悩みながら治療をした人、32歳で治療をやめた人、46歳まで治療した人、海外での治療を経験した人、養子を迎えた人、里子を迎えた人・・・さまざまな人が登場します。

治療期間も数年から14年間までと、人それぞれです。

治療を終えてから数年経っている人が多く、取材の時には落ち着いた口調で話されていましたが、当時の感情がよみがえるのか、ときおり涙を浮かべる人もいました。私も、思わずもらい泣き・・・。

その涙は、治療の痛みや苦しみ、悔しさというよりも、パートナーの優しさや思いやりに触れた時の話のほうが多かったように思います。

治療当時もパートナーの優しさを感じていたでしょうが、時間が経って、あらためて感謝の気持ちがわいてくることもあるようです。

どんなに望んでも子どもが授からなかった悲しみは変わらないとしても、治療を体験したことで得たもの、その一つが夫婦の絆だと、皆さんのお話を聞いて、あらためて実感しました。

●ひとり一人にドラマがある

「今だから、話せることもあるんですよね」

取材させていただいた方の言葉です。これには、私も同感です。

彼女は「同じ当事者だからこそ、伝わるものがある」と積極的に自分の体験談を話しています。

治療中は無我夢中で、周りはおろか自分のこともよく見えないもの。何かを考えたり、振り返ることはむずかしいのがあたり前でしょう。

少し離れて見ると、抜け出そうともがいている自分に気づくかもしれません。

そうわかっていても、どうしようできないことは、私も自分の体験から実感しています。

ある日、きっぱりと「次の治療を最後にしよう」と決意して実行する人は少数派。

次第にクリニックに足が向かなくなり、そのまま通院しなくなる・・・という人は少なくないでしょう。

そんなふうに時間を過ごしていく中で、少しずつ頭の中も心も整理されて、「あのときはこんなふうに考えていたんだな」と振り返ることができるのだと思います。

時間が経った今、その体験を誰かに話す。

それは、今まさに治療中の人にとって、何かのヒントになるかもしれません。 今回、私もそのお手伝いができて、とてもうれしかったです。

「不妊治療のやめどき、その後」をテーマにお話を聞いた16人の皆さんは、どの方もとっても素敵でした。

悩み、迷い、戸惑いながら懸命に生きてきた、パートナーとともに道を歩いている人たち。

でも、彼女たちが特別なのではありません。

現在治療中の人、そろそろやめどきを考え始めた人、誰もが自分の道をちゃんと歩いて、自分のドラマを作っているのです。

治療がどんな結果になっても、そこから得るものはきっとあるし、人生というドラマは続きます。 ぜひ、自分らしいドラマを紡いでいきましょう。

●『不妊治療のやめどき』(NPO法人Fine理事長・松本亜樹子著、WAVE出版)特設ページ
http://j-fine.jp/book/funin.html
著者の体験もふくめた妊活コーチの視点からの話、16名の「不妊治療・その後」のストーリー、医師・胚培養士・看護師・心理士のメッセージなど。妊活中の人も、そろそろ終わりを考えている人も、これからの人にも、おすすめの1冊です。

Profile

高井 紀子

編集者&ライター。自らの不妊経験を生かし、2000年より不妊に関する単行本やムック、雑誌、ウェブサイトなどの編集・執筆等を手がける。趣味は温泉めぐりと空を眺めること。不妊体験者を支援する「NPO法人Fine」スタッフ。