女性の卵巣年齢を知ることがARTでたいせつな理由とは？【とくおかレディースクリニック】

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女性の卵巣年齢は、卵巣の中にどのくらい卵子が残っているかをあらわします。卵巣年齢の体外受精への影響について、とくおかレディースクリニック院長・徳岡晋先生と、同クリニック顧問に就任した久慈直昭先生の対談をお届けします。

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女性の卵巣年齢を知ることがARTでたいせつな理由とは？

とくおかレディースクリニック
顧問　久慈 直昭 先生

医学博士。慶應義塾大学医学部卒業後、米国オクラホマ・ネブラスカ大学留学。慶應義塾大学医学部産婦人科学専任講師等をへて、2014年東京医科大学産婦人科学教授。2023年より同大学客員教授。2025年とくおかレディースクリニック顧問に就任。日本専門医機構認定産婦人科専門医。日本生殖医学会認定生殖医療専門医・指導医、管理胚培養士、臨床遺伝専門医、麻酔科標榜医。

とくおかレディースクリニック
院長　徳岡 晋 先生

医学博士。防衛医科大学校卒業後、防衛医科大学附属病院にて臨床研修。防衛医科大学医学研究科にて学位（医学博士）取得。自衛隊中央病院、木場公園クリニックでの勤務をへて、2005年にとくおかレディースクリニックを開院。日本専門医機構認定産婦人科専門医。日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医、日本生殖医学会認定生殖医療専門医。

およそ３割の患者さんが卵巣年齢40歳相当以上であることが判明

徳岡先生　女性の卵巣年齢は、AMH（抗ミュラー管ホルモン）を調べることでわかります。卵巣に残っている卵子のもと「原始卵胞」の数は個人差があるので、AMHには正常値は決められていませんが、多くの病院ではJISART（日本生殖補助医療標準化機関）の参考基準値を用いています。30歳なら4.02、35歳なら2.62、40歳なら1.47なので、30歳のかたのAMH値が1.5であれば、卵巣年齢は40歳相当になります。

当院では、2023年１月〜2024年12月までに体外受精を行った患者さんのべ805件のAMHを調べました。そのうち、値が1.5以下のかたは272件、33.8％でした。

久慈先生　女性の卵巣には生まれる前から原始卵胞が500万〜700万個あり、生まれたときには200万個に減って、思春期を迎えるころには20万〜30万個になるといわれています。ただ、生まれる前にもっている原始卵胞の数も、その後にどのくらい減っていくのかも遺伝などによって決まっているため、思春期のころの原始卵胞の数は５万個のかたもいれば、60万個のかたもいると考えられます。

徳岡先生　初潮を迎えたあとは毎月1,000個ぐらいの原始卵胞が減っていくのですが、患者さんが「ピルを飲んでいるので卵子は減っていないはず」とおっしゃることがよくあります。排卵や生理のあるなしと卵子の減少とは関係ないとお伝えすると驚かれますね

卵巣年齢が高いと体外受精での採卵数が少なくなる

久慈先生　AMHはあくまで卵巣に残っている卵子の数の指標で、卵子の質をあらわしているわけではないので、AMHが低くても妊娠するかたもいます。ただ、AMH値が低く卵巣年齢が高いと、自然に排卵しにくい、卵胞が育ちにくい、排卵誘発に反応しにくく採卵数が少なくなるなどの症状が見られます。

これは私見ですが、赤ちゃんになる卵子は体外受精で10個採卵できても１個しかなく、多く採卵できた場合はまだ成熟していない卵子や成熟しきった卵子などといっしょに、赤ちゃんになるのにぴったりの卵子が採卵できる確率が高くなる。ですから、採卵数が１〜２個だと、赤ちゃんになる卵子が含まれていないことが多いのではないかと思っています。

徳岡先生　卵巣年齢が高い場合、当院では卵巣刺激の方法を変えてみるほか、卵子の質を高めるために葉酸などのサプリメントや漢方、エクササイズなど適度な運動もおすすめしています。それでも何度も体外受精にトライしなくてはならないことも少なくありません。

久慈先生　卵子の質という点では、BMIが高すぎる肥満や、低すぎるやせの場合には影響があるといわれています。BMIが高すぎる場合は、排卵障害をはじめ、いろいろな理由で不妊につながることがわかっています。

徳岡先生　当院では生理が来ない＝FSH（卵胞刺激ホルモン）が高くてAMHが低いかたには、カウフマン療法を行っています。２〜３カ月程度ホルモン剤を使って卵巣を休ませ、FSHの値が下がったら、主にクロミッドを使ったマイルドな方法で排卵誘発を行います。

久慈先生　カウフマン療法は、卵胞ホルモンと黄体ホルモンの服用や注射で人工的に月経周期をととのえ、一定期間ののち薬を中止することで卵胞の発育と排卵が促されるという方法ですよね。この方法でFSHの値が下がる場合もありますが、残念ながらそうでない場合もありますね。

徳岡先生　最近では、「PFC-FD療法」といって、患者さんご自身の血液から抽出した成長因子を卵巣に直接注入して活性化する方法が有効という論文も発表され、当院でもこの方法で妊娠されたかたもいます。

早めにAMH検査を受けて不妊治療やライフプランに役立てましょう

久慈先生　逆にAMHが高いほどいいかというと、そうではありません。AMHの値が高すぎる場合は、未熟な卵胞がたくさんできて排卵しにくくなる「多嚢胞性卵巣症候群（PCOS）」が疑われます。特に値が７以上のかたでは、排卵誘発によって卵巣が腫れる「卵巣刺激症候群（OHSS）」になることもあります。

徳岡先生　先ほどの当院での調べでは、AMHの値8.0以上が50件、6.2％ありました。マイルドな卵巣刺激にするとあまり採卵できず、注射による卵巣刺激をするとOHSSの可能性が高くなるので、見極めが必要になりますね。

久慈先生　AMHは妊娠しやすい期間の目安となります。値によって治療方針が変わるので、女性はAMH検査を早く受けてご自身の体の状態を知り、治療やライフプランを考えることがたいせつだと思います。

徳岡先生　当院では体外受精勉強会を開いていますが、ほとんどの女性がご自身のAMHを把握している一方で、パートナーの男性に伝えているかたは２割に過ぎません。AMH値がわかったら、ご夫婦で共有すると男性がより協力的になって、早く不妊治療をスタートできるのではないかなと思います。

とくおかレディースクリニック
住所：
東京都目黒区中根１-３-１
三井住友銀行都立大学駅前ビル６階

電話：
03-5701-1722

アクセス：
東急東横線「都立大学駅」より徒歩30秒

診療時間：
月・火・水・金 　9:30～13:00
月・火・水・金　15:00～19:00
土　9:00～13:00
木・土曜午後・日・祝　ART特別指定外来のみ

企画：サンワードメディア