「流産を繰り返しています…もしかしたら不育症?」気になる不安や疑問に不妊治療専門ドクターがアドバイス
流産や死産を経験された方は、「私たちは赤ちゃんに会えるの?」と不安に思われている場合が多くあります。そんな「不育症」に関する不安や疑問に、その分野に詳しい不妊治療専門医がお答えします。不育症を乗り越えて妊娠した方の体験談もチェックしてください。
不育症とは?
日本産科婦人科学会は、不育症を「生殖年齢の男女が妊娠を希望し、妊娠は成立するが流産や死産を繰り返して生児が得られない状態」(産科婦人科用語集・用語解説集 第4版 日本産科婦人科学会編)と定義しています。
流産を2回繰り返すことを「反復流産」、3回以上連続して流産することを「習慣流産」といいますが、最近では、2回流産を繰り返したら、不育症を疑ってくわしい検査をするようになってきています。
また、一度は正常に出産していても、2人目以降の妊娠の際に2回以上の流産、死産があった場合は、続発性不育症として、検査をし、治療を進めることがあります。
ART(生殖補助医療)における年齢別の流産率
*日本産科婦人科学会「2022年ARTデータブック」より
・25歳…13.0%
・30歳…17.9%
・35歳…21.5%
・40歳…32.6%
・45歳…57.1%
現在は、血液中や尿中のhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)値が陽性となっても、超音波で胎嚢が確認できない化学流産(正式には生化学的流産)は、流産の回数に数えないとされています。しかし、化学流産を非常に早期の流産とする考えもあり、議論が続いています。
子宮外妊娠(異所性妊娠)や、胎盤をつくる繊毛細胞に発生する病気(胞状奇胎など)は、流産回数に含めないとしています。

不育症の原因って?
「不育症」とは、はっきりした原因のある病気ではなく、赤ちゃんが育たないさまざまな要因を含んだ状態のこと。そのため、「原因」ではなく、流産を起こすかもしれない「リスク因子」という言葉が使われています。
最近になって、不育症のリスクを調べる検査手法も進化し、ようやくガイドラインのようなものができつつあります。ただ、まだわからないことも多く、検査をしても65%の人にはこれといった異常が見つかりません。
また、リスクがあっても、必ず流産するとは限らず、2回流産した人が治療をせずに次の妊娠で無事に出産する確率は約80%ともいわれています。不育症の検査は、一部だけだと効果的な治療が行いにくいため、推奨されている検査は、一通り受けるほうがよいでしょう。
「不育症」考えられるリスク因子
●中隔子宮や双角子宮など「子宮の形態異常」
●甲状腺機能の亢進や機能低下などの「甲状腺機能異常」
●自己免疫疾患のひとつである「抗リン脂質抗体症候群」
●夫婦どちらかの「染色体の構造異常」
●血栓ができやすい「血液凝固異常」
●リスク因子不明の大半で考えられる赤ちゃんの「染色体異常」
*厚生労働省「不育症管理に関する提言2025」(「不育症管理に関する提言」改訂委員)より
不育症については、まだ原因を解明したり、予防をしたりするための研究がされている段階で患者さんにとってもわからないことが多いですよね。
そこで、「もしかして不育症かも?」と悩まれている方から寄せられた質問を、2名の不妊治療専門ドクターに聞いてみました。
「こんな場合は不育症なのでしょうか?」不妊治療専門医がお答えします
Q.一人目を出産後、二人目で不育症になることもありますか?
A.もともと不育症要因はあっても一人目は運よく出産できるケースもあります

神奈川レディースクリニック(神奈川県横浜市)
名誉理事 小林 淳一 先生
Q.死産を経験。妊娠が継続できない理由として考えられることは?
A.大変つらいご経験でしたね。不育リスク因子スクリーニングを検討してみては?

峯レディースクリニック(東京都目黒区)
院長 峯 克也 先生
不育症検査の保険適用は?助成制度はある?

不育症の検査は、有効性や安全性が確認されているものは保険適用で受けられます。
検査をしても異常が見られない場合にさらに行う検査などは、研究段階として保険が適用されず自費扱いとなっていましたが、2021年4月から保険適用外の一部検査のうち「先進医療」として実施される検査が助成の対象となりました。
●対象者
2回以上の流産、死産の既往があるもの。
●対象となる検査
先進医療として実施されている不育症検査。現在は「流死産検体を用いた遺伝子検査(次世代シーケンサーを用いた流死産絨毛・胎児組織染色体検査)」が該当。
流死産検体の染色体検査を行うことにより、流産の要因が胎児要因であるか否かを知ることができます。この結果により、胎児染色体が正常であれば、親の要因による流産の可能性が高く、詳細な検査にすすむ指標となります。
●実施医療機関
当該先進医療の実施医療機関として承認されている保険医療機関のうち、保険適用されている不育症に関する治療・検査を、保険診療として実施している医療機関。実施している医療機関は限られますので厚生労働省のHPで確認を。
●助成額
先進医療検査費用に対して、1回につき5万円上限(助成回数の制限はなし)。
今後、有効性や安全性が確立された治療についても、順次保険適用をめざす方針が打ち出されています。この制度以外にも、保険適用の不育症検査に対する助成制度を設けている自治体もありますので、お住いの地域の自治体に確認してみましょう。⇒全国の不育症相談窓口一覧
「不育症を乗り越えて妊娠しました」体験談

「プロテインS欠乏症だと判明するも、冷静に受け止めて薬の服用を継続」
odecoさん(31歳)
28歳のときに9週で稽留流産に。この流産経験と流産後に受講した「不妊症・不育症ピアサポーター」(日本助産師会主催)の研修を通して、10代のころから女性は自分の体について知っておくことの重要性を感じました。
その後、不妊治療クリニックを受診し、2回目のタイミング指導で妊娠。 ところが血液検査をすると、今度は不育症の原因のひとつである「プロテインS欠乏症」であることが判明。ただ、不思議とショックはなく、私は「そういう体質なんだ」と思い、前回の流産もそれが原因だったのかもしれないと、事実を冷静に受け止めました。
その後は、医師の指導のもと薬を服用しながら妊娠生活を送りました。
「不育症スクリーニング検査では異常なし。でも年齢のことを考えて早めにクリニックへ」
みさきさん(37歳)
妊活をスタートしてから2回自然妊娠したものの、1回目は妊娠8週で、2回目は妊娠7週で心拍が止まってしまい、流産しました。流産や死産をくり返す「不育症」を知り、思い切って不育症外来を受診。不育症スクリーニング検査を受けました。
その結果、特に異常は見つからず、不育症の治療も行う必要はないとのことでしたが、年齢とともに妊娠しても流産率は上がっていくというお話があり、不妊治療をスタートするのも1つの方法だとの提案がありました。
指導を受け始めてから2回目のタイミング法で、運よく妊娠。それでも心拍が止まってしまうのではないかと心配がつきませんでしたが、胎児エコーも得意とするクリニックだったため妊娠中もフォローしてもらえました。
「不育症外来のあるクリニックへ転院。安心して治療ができた」
みわさん(35才)
不妊治療専門クリニックで高プロラクチン血症が判明したのが30才のとき。投薬治療を開始後すぐに妊娠しましたが、流産になりました。そして半年後に再び妊娠するも、流産に。
落ち込む私の横で夫が流産や不育症について調べてくれて、不育症外来のあるクリニックへ転院。不育症につながる原因は見つからなかったけれど、不育症にくわしい先生がいると思うだけで気持ちが安定しました。その安心感がよかったのか、体外受精で妊娠することができました。
「化学流産と稽留流産を経験。その後、中隔子宮が見つかって手術を」
ポチらぶさん(28才)
結婚してすぐ自然妊娠しましたが化学流産に。その後半年以内に再び自然妊娠したけれど、今度は稽留流産に。ネットで調べるうちに「不育症」の言葉にたどりつき、不育症にくわしい不妊治療専門クリニックを受診。そこで中隔子宮といわれました。
手術をすれば妊娠の可能性は上がると説明され、2回流産を経験していた私たち夫婦は、迷わず手術をえらびました。それから8カ月後に妊娠。もうすぐ出産をむかえます。
*体験談はあかほしWEBに掲載された内容を再編集しています。
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