〈滝沢友紀さん〉産後うつで入院。今は「まぁ、いっか」が夫マシンガンズ滝沢さんとの合言葉【インタビュー後編】
漫画家、イラストレーターとして活躍する滝沢友紀さん。夫は、お笑い芸人として活動しながらゴミ清掃員の顔も持つ、マシンガンズの滝沢秀一さんです。
42歳のとき不妊治療で長男を出産、その後、44歳でまさかの自然妊娠。幸せのなかで静かに訪れた「産後うつ」を経て、滝沢さんが見つけた、“頼る勇気”と“家族のかたち”について伺いました。
インタビュー最初からを読む>>夫マシンガンズ滝沢さんと40歳からの挑戦! 想定外の不妊原因を乗り越えて【インタビュー前編】
止まらない涙、眠れない夜。産後2ヵ月で訪れた異変
――眠れない、食べられない、急に涙が止まらなくなってしまう。第2子の産後2ヵ月月ごろから表れたさまざまな症状に、友紀さんはどう対処されたのでしょう?
本当は、下の子を安心できる誰かに託して、ひとりで休む時間が持てたらよかったんだと思うんです。でも、夫は仕事柄、家を空けることが多くて、子どものお世話に慣れていない。たまに家にいる日があっても、私のほうが夫に任せることが心配で、それができなかったんですよね。
「ガルガル期」(※)なんていう言葉もありますけれど、「赤ちゃんは私が守らなければ!」という気持ちが強すぎて、夫にすら頼れなかった。(※)産後のホルモンバランスの影響で、本能的に子どもを守ろうと周囲に対して攻撃的になること。
――異変を感じつつも、強い責任感がかえって友紀さんを追い込んでいったんですね。
そんな私でも「どうしても今日は無理だ」と限界を感じた日があって、夫に「今日は家にいて」と訴えたことがありました。でも夫は、「責任があるから急に休むわけにはいかない」と、私の状態を気にしながらも仕事へ。
――家族を養うために仕事に行った滝沢さんの気持ちもわかりますし、でも、そのときの友紀さんの思いを想像すると、胸が詰まります。
このとき「もうダメだ」と思って、長男の保育園のママ友に「助けて」とLINEをしたんです。彼女は3人のお子さんを育てるママで、ときどき長男のことも預かってくれていた人。当時の私にとって、唯一頼れる存在でした。私が送ったメッセージを見て、彼女はすぐに助産師さんに連絡をとってくれて、まもなく助産師さんが家に来てくれたんです。
「私が赤ちゃんを連れて外に出るから、少し眠りましょう」
そう声をかけてもらったとき、全身の力が抜けて、本当に安心しました。…でも、眠れなかったんです。体は疲れ切っているのに、心がざわざわして、部屋を歩き回らずにはいられない。休めない。
「助けて」と言えた日が、すべてを変えた
――「助けて」と声を上げたときには、体だけでなく、心も限界を超えていたのですね。
そうだと思います。
私が幸運だったのは、「これは危ない」と察して力になってくれるママ友がいたこと。彼女は、すぐに小児科の先生や保健師さんにも連絡をして、つないでくれたんです。医療のプロがチームを組んで、「まずは病院に行きましょう」と受診の道筋をつくってくれて、そこで正式に「産後うつ」と診断されました。
娘は乳児院にショートステイをお願いして、私はもう一度受診すると、そのまま大きな病院に入院することに。
子どもたちはというと、夫も私も近くに頼れる親戚や知り合いもなく、夫一人で2人の子の面倒を見ることも現実的ではありません。そんな状況だったので、娘はショートステイから施設入所に切り替わり、乳児院でお世話をお願いすることになりました。

お兄ちゃんと妹。乳児院へは定期的に面会に行っていました。
――八方塞がりの状態から、医療につながることができた。一方で、家族と離れての入院も、きっとつらかったことと思います。
入院前の私は、保育園に息子を預けて家に戻ると、「何もできない、どうしよう」と焦るばかり。入院が決まっても、治るという希望は一切持てず、「子どもたちとはもう会えないかもしれない」と悲観的なことばかり考えていたんです。
何よりつらかったのは、抗うつ剤服用のため、母乳をストップしなければいけなかったこと。長女はよく母乳を飲む子で、私も授乳の時間が幸せだったから…。せっかく飲んでくれるのに、私のせいで強制的にやめなければならないと思うと、申し訳なくて。
入院施設のある病院に行くまでの間で母乳を止めないといけなかったので、泣きながら母乳を絞ったことを覚えています。
――入院期間はどのくらいだったのでしょうか?
2ヵ月弱です。ひたすら眠り、規則正しく食事をして、自分のことだけ考えればいい環境のなかで、次第に回復していきました。
入院中の心の支えは、やっぱり子どもたち。息子と娘に向けて、「ママはあなたたちのことが一番大事だよ」「必ずよくなるからね」と毎日メモを書いて、書くことで心を落ち着かせていました。
それから、入院する前、最初に診察をしてくれた先生が「産後うつは治りますよ」と言ってくださったことも支えになりましたね。当時はよくなる未来なんて思い描けなかったけれど、入院して少しずつ体調が整ってくると、「必ず治る」という言葉がすごく励みになりました。
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