身長10cmの、小さな赤ちゃんの火葬。「天国に行けるといいなぁ」産声のない出産、死亡届【わたしの死産体験談】
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厚生労働省は妊娠12週(4ヶ月)以降に死亡した胎児を出産することを「死産」と定義しています。「死産」の原因は、赤ちゃん自身の先天性異常や母体側の要因などさまざまとされています。今回は、死産を体験した女性の手記をお届けします。
私には、妊娠した我が子を14週と数日で空へ見送った経験があります。結婚して間もなくの妊娠。友人や知人の出産体験談を聞いて、当時は「妊娠したら赤ちゃんは生まれてきて当然」なのだと思っていました。
妊娠することも無事に出産することも、奇跡の連続だと今なら分かります。なかなか人には言えず、封印してきた私の大切な過去がどなたかの参考になりますように。
当時27歳、結婚後すぐに授かった命
私が結婚したのは27歳。春に挙式をして、妊娠が判明したのは秋のはじめ頃でした。
私には子宮内膜症や生理痛の悩みがあり、スムーズに妊娠できるか心配していましたが、妊娠検査薬の陽性の印を見てホッとひと息。夫婦でお酒や旅行が好きだったので、「もう少し2人の時間があってもよかったかもね」なんて言いながら、夫と喜びあいました。
新しい命に期待に胸を膨らませていたのも束の間。妊娠6週頃からつわりが始まり「トイレと友達」の日々を過ごすことに。職場への妊娠報告も早めにすることになりました。
当時私はメーカー本社で総合職として働いていて、都内に住みながら出張で北は北海道、南は九州と文字通り飛び回っていたので、吐きづわりを抱えながらの仕事はなかなかハードでした。職場の上司や同僚にたくさんサポートしてもらったことを覚えています。
「嫌な予感…」健診で先生たちがザワついて
つわりで仕事を休む日もありましたが、「キツいのはきっと今だけ!」とできる限り出社しました。そして安定期を待ちわびながら過ごしていた妊娠13週頃、里帰り出産の予約を確定させるために地元の産婦人科で健診を受けました。
いつもと違う健診結果に頭の中が真っ白
地元のクリニックの主治医の先生にエコーを診てもらう段階で、思わぬ言葉を聞きます。
「ん?あれ?ちょっとB先生を呼んできて!」
エコーを見ながら、主治医の先生がもう一人の先生を呼ぶよう看護師さんに指示しています。嫌な予感がして、冷や汗がじんわり出ました。
別の先生が診察室に入ってきて、主治医の先生と詳しくエコーを見ながら話しています。しばらく考え込んだ後、2人がクルッと私のほうを向いて言いました。
「念のため大きな病院でちゃんと診てもらおうか」
「原因は私?」とにかく調べまくった1週間
先生方によると、「NT(首の後ろに見られるむくみ)が気になる、胎児の頭に水がたまっているように見える」とのことでした。「胎児水腫」の疑いがあるそうです。私自身にはそれまで全く自覚症状がなく、つわりと全力で戦っていた最中の出来事。健診での先生の言葉は、まさに寝耳に水でした。
紹介されたのは国立の周産期医療の専門病院。予約は1週間後です。私は初めて聞いた病名や大病院の名前に不安を覚え、予約日までにさまざまなことを調べました。
「胎児水腫は胎児の成長に関係するの?」「生まれるときに障害が残る可能性は?」「出産に当たってのリスクは?」次から次に疑問が生まれ、そのたびにスマホで調べて一喜一憂します。胎児水腫は発症確率が低い珍しいケースのよう。
まさか自分の身にそんなことが起こるわけがない、と言い聞かせつつも不安はぬぐえません。「胎児に影響が出てしまうような生活をしていたのだろうか…?」「つわりがひどかったから?」「食生活が偏っていたから?」「仕事を無理したから?…」決め手となる兆候は思い当たらなかったものの、気になる節が多すぎました。
我が子の胎児写真を何度も見ましたが、専門知識がない私にはどこがむくんでいるのか分かりません。間違いであってほしい、と願いながら予約日を待ちました。
まさかが本当になった瞬間
なにをするにもうわの空で1週間を過ごし、予約日がやってきました。夫は仕事だったので、母につき添ってもらっての受診です。
診察時に淡々と告げられた結果
診察を待つ間は、「赤ちゃんに本当に異常があったらどうしよう」「出産はどうなるのだろう」「この子に障害がある可能性は…」「でも、この病院ならなんとかなるかもしれない!」などと考えていました。もちろんすべて、お腹の中の赤ちゃんが生きている前提です。
しかし、診察が始まってすぐに先生から出たひと言が、それまで私が考えていたことをすべて吹き飛ばします。淡々と、感情をこめずに告げられました。
「……心拍がないね」
慌ててエコー画像をのぞくと、赤ちゃんはこれまでの健診で画面越しに見ていた姿とは違い、黒い影のように止まっていました。
今日もつわりがあるのに
「あぁ、そっか……心拍がないんだ。生きてないんだ。今日もつわりがあるのになぁ。毎日話しかけていたのになぁ。夫になんて言おうかなぁ……」
こらえていた涙があふれてきます。「かわいそうに……」そうつぶやく母の声が聞こえました。たった14週の胎児の短い命を哀れんだのでしょうか。私も気づかないうちに小さな命を失ってしまっていたことが悲しくて、申し訳なくて、胸がいっぱいでした。
診察後は別の先生と今後の方針を相談しました。お腹の中の赤ちゃんを出してあげないといけないとのことで、分娩室が空いている日を予約。妊娠12週以降の胎児死亡は「死産」という扱いになるという説明を、思考が飛んだ空っぽの頭で聞きました。
職場への報告と周囲の反応
急遽決まった分娩。その前後の数日間は仕事を休むことになるため、診察の翌日は通常通り出社して、上司やつわりの時にサポートをしてもらった同僚に報告しました。死産の際の職場でのルールが分からなかったため、タイミングをみて人事部へも相談しました。
そこで印象に残っているのが人事部にいたベテラン女性社員Sさんの応対です。
体験談・後編>>人事部の方にかけられた言葉が
※あくまで個人の体験です。治療や薬の処方などに関しては必ず医師に相談してください。
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