【20代で養子を迎えた家族の物語】無精子症・不妊治療から特別養子縁組でわが子を抱いた!20代夫婦の歩みとは?
不妊治療や特別養子縁組、さまざまな家族のあり方について、『赤ちゃんが欲しい(あかほし)』読者のみなさんと考えていけたらと、ナビゲーターに元宝塚歌劇団月組トップスターの瀬奈じゅんさん、パートナーの千田真司さんをお迎えし、家族の物語をお届けしていきます。
今回お話を伺うったのは、かつて妊活情報誌『赤ちゃんが欲しい』を愛読していたFご夫妻です。無精子症の不妊治療を経験され、20 代半ばで実子を持つ夢を絶たれたおふたりが、特別養子縁組で幸せな3人家族になるまでのヒストリーを伺いました。
F家の妊活ヒストリー
夫23歳・妻22歳/中学の先輩・後輩同士で結婚
夫24歳・妻23歳/夫の無精子症が判明。MD-TESE手術で精子をとり出し、顕微授精にトライし始める
夫26歳・妻25歳/治療の選択肢がなくなり、不妊治療を終了。実子をあきらめる
夫28歳・妻26歳/民間団体ベビーライフに登録。特別養子縁組で生後5日のRくんを迎える
夫28歳・妻27歳/試験養育期間を終了し、特別養子縁組成立。晴れて戸籍上も家族になる
精液検査をしたら、精子が1匹もいなかった
ふたりが結婚したのはそれぞれ妻22歳、夫23歳の時。若いママとパパに憧れて、すぐに子どもがほしいと思っていました。ところが1年ほどして不妊の検査をしたら、夫の精液には精子が1匹も見つからず、無精子症だとわかりました。いわゆる男性不妊です。
「まさか自分が原因だとは思っていなかったので、頭が真っ白になりましたね。『非閉塞性無精子症』といって、精子がうまく作れない状態でした。その元の原因となったのが、男性のX染色体が1つ多い『クラインフェルター症候群』という病気です。通常、男性の染色体はXY、女性はXXですが、僕の場合、XXYだとわかりました」
そこで、夫Sさんは精巣の中から精細管という精子を作っている管をとってきて、精子をとり出しMD -TESE(顕微鏡下精巣精子採取術)という手術を受けました。精子は動いてはいなかったのですが、それでも受精は可能だということで、顕微授精に移りました。『赤ちゃんが欲しい』を読んでいたのはこのころ。
妻Rさんも採卵をして、顕微授精して、グレードのよい受精卵ができたと言われたときは、ふたりで大喜び。市販の検査薬でも妊娠反応が出たのですが、結局、化学流産してしまいました。その後も何度か顕微授精。3回は移植できたのですが、精子の受精能力が低く、手術でとり出した精子もついになくなってしまいました。
「再度、僕がMD -TESEの手術を受けましたが、もう片方の精巣からは精子をとり出すことができませんでした。その後、精子になる前の細胞で顕微授精できる病院が九州にあると聞き、東北から足を運んでみましたが、そこでも治療は無理だと言われて。ほかに選択肢がなくなり、実の子どもを持つ可能性が消えてしまいました」
妻のRさんにとっても、それは大きなショックでした。
「みんなにもまだ若いから大丈夫だよと言われていたのに、25歳で実の子どもをあきらめなければならないと知って、絶望的になりましたね。当時はけんかもよくしました。不妊治療って、お互いにぎくしゃくしてしまいますよね。夫は精子をとり出す手術をしたら終わりだけど、私はその後、毎日注射をしにひとりで病院に通わなければならない。夫は私に対して罪悪感もあったようです」
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