卵子凍結のメリット・デメリットは? 知っておきたい基礎知識【専門医監修】
「いずれは子どもが欲しいけれど、今は考えられない」。そんな女性の間で、最近注目されている「卵子凍結」。でも、聞いたことはあるけれど実はよく知らない、という人も多いのではないでしょうか?
そこで、卵子凍結の基本的なことから聞いてみたかった疑問まで、浅田レディースクリニック理事長の浅田義正先生に伺いました。連載の第1回目は卵子凍結の必要性やメリット・デメリットについてです。
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そもそも卵子凍結とは?

卵子凍結というと、「どのくらい通院が必要なのか?仕事を休まないといけないのか?」「採卵するときの痛みはある?」といった、現実的なことが気になる人が多いかもしれません。ところで、そもそも、なぜ卵子凍結が有効なのでしょうか?
女性の体は、ホルモンの働きによってコントロールされています。月経が終わると、卵巣にある卵胞が成長していく「卵胞期」、育った卵胞から卵子が飛び出す「排卵期」を経て、妊娠に備えて子宮内膜が厚くなる「黄体期」となり、妊娠しなければ子宮内膜がはがれ落ちて、また月経が始まります。
このサイクルが毎回くり返されるため、卵胞がそのたびにつくられていると勘違いしやすいのですが、実は卵胞は月経周期ごとに毎回つくられるわけではなく、女性が生まれる前から卵巣にあるのです。
女性が生まれる前の卵巣には、卵胞の元となる原始卵胞が700万個ほどあり、生まれる時点で200万個ほどになって、卵巣で保存されます。その後は年齢とともに少しずつ減っていき、思春期には20~30万個ほどに。
思春期になると排卵が始まりますが、排卵される卵胞は1つでも、同じ時期には複数の卵胞が育ってそのまま消滅するため、その後はどんどん減っていき、35歳ごろには1~2万個ほどになります。

出典:ヒトの卵子数の年齢による推移(産婦人科学書1 生殖医学 富永敏朗編1994)
つまり、卵胞は女性といっしょに年齢を重ねているということです。そのため、加齢とともに数が減るだけでなく質も低下して染色体異常がふえるので、妊娠率が低下し、流産率が上昇します。それには、「高齢になってから妊娠しなくていいように」という、体の安全装置として働いているという面があります。
血管も加齢によって老化し、動脈硬化などを起こしていることが多く、若いころに比べると妊娠・出産に伴うリスクがふえるからです。
でも現代では、若い時期に結婚することや、結婚してもすぐに妊娠・出産することはなかなかむずかしくなってきています。
卵子凍結では、採卵した時点での卵子を残しておける=卵子が老化していく時間を止めることができます。採卵した年齢での妊娠率をキープしておけるので、仕事のキャリアやパートナーの有無と、妊娠・出産年齢との間で悩まなくてもすむ方法といえるのです。
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医療法人浅田レディースクリニック理事長。
より短い治療期間で妊娠という結果を出すため、エビデンスに基づいた治療や痛くない不妊治療・痛くない採卵を行なう。1982年名古屋大学医学部卒業。88年名古屋大学医学部附属病院産婦人科医員として不妊外来を担当。95年同病院分院でICSIによる治療開始。同年日本ではじめて精巣精子を用いたICSIによる妊娠例を報告。2004年浅田レディースクリニック(現・勝川クリニック)開院、10年浅田レディース名古屋駅前クリニック開院、18年浅田レディース品川クリニック開院。著書に『名医が教える最短で授かる不妊治療』『女の子が知っておきたい卵子のハナシ。』がある。
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