【妊活の誤解】体外受精や顕微授精をすれば、必ず妊娠できる?〜名医がズバッと答えます②

現在、日本で不妊治療をするカップルは5.5組に1組といわれていて、体外受精などの高度生殖医療(ART)で生まれた赤ちゃんは年間5万人を超えます。
赤ちゃんが欲しいと願う人にとって、いまや不妊治療は身近なもの。でも、まだまだ誤解されていることも多いようです。
高度生殖医療の最先端を走り続ける名医・浅田義正先生がスバッと答えます!
この記事では誤解されがちな体外受精における妊娠数(妊娠の成功率)ついて、不妊治療専門ドクターが解説します。
体外受精・顕微授精は万能?
よくある誤解「体外受精や顕微授精をすれば、必ず妊娠するのでは?」
体外受精・顕微授精というと、「不妊治療の最後の砦だから、妊娠率が高いに違いない」「トライすれば必ず妊娠するだろう」と思うかもしれません。
また、「だから、あせらなくてだいじょうぶ。40歳になってダメなら、体外受精をすれば妊娠するよね?」と考えるかもしれませんね。
ところが、そうではありません。
体外受精・顕微授精とは?
そもそも体外受精、顕微授精とは、どんな治療でしょうか?
そもそも体外受精、顕微授精とは、どんな治療でしょうか?
体外受精
男性の精子と女性の卵子を体外で出会わせて、受精を待つ方法。受精後、培養した受精卵(胚)を女性の子宮に移植する。
卵管が詰まっているなどのほか、タイミング法や人工授精を繰り返しても妊娠しない場合の治療法。
顕微授精(ICSI)
顕微鏡を使って1つの精子を選び、それを卵子の中に直接注入する方法。精子の数が極端に少ない場合や、体外受精で受精しなかった場合の治療法。
いずれも採卵する前には、複数の卵子を成熟させるために、排卵誘発剤を投与して卵巣を刺激することが多いのが特徴です。また、胚を凍結して、翌周期以降に移植する場合もあります。
体外受精でできるのは「受精卵をつくるところまで」
体外受精や顕微授精は、一般不妊治療と呼ばれるタイミング法や人工授精と比べると、とても高度な治療です。また、費用は医療施設によって違いますが、全額自費で1回数十万円とお金もかかります。
治療は、ひとり一人プランを立てて行い、採卵に向けて準備をします。 たとえば、採卵する前に排卵してしまわないように排卵を止める薬を投与したり、複数の卵子を育てるために排卵誘発剤を投与したりします。薬の副作用でおなかが腫れたり、採卵時に痛みを感じたりする場合もあります。
このように女性の体への負担が大きい治療で、その分、妊娠への期待が高まるのは当然といえます。
しかし、体外受精・顕微授精といえども、誰もが必ず妊娠できるものではありません。実は、体外受精・顕微授精でできるのは「受精卵をつくるところまで」なのです。
受精卵が育つかどうかはわからない
受精は本来、排卵した卵子と射精によって腟から上がってきた精子が、卵管で出会って起こるもの。体外受精・顕微授精では、これが体の外で起こります。
精子と卵子が出会えば、すべてが受精するというわけではありません。なかには受精が起こらない場合もあります。
受精するには、精子や卵子の状態、そしてタイミングも大きなポイントです。卵子の受精能力は排卵から約24時間で、その間に精子と出会わなくては受精することができません。体のなかで起こっていることは見られませんが、体外受精・顕微授精では精子と卵子の入れた容器を顕微鏡で確認して(現在はモニター画面で確認)、「受精したかどうか」の結果がわかります。
これが、体外受精・顕微授精でできるのは「受精卵をつくるところまで」という意味です。
子宮に移植した胚がその後、順調に育つかどうか、子宮内膜に着床するかどうかは、現在の医療ではわからないのです。
受精卵の成長には、年齢、カップルの遺伝子の組み合わせ、遺伝子の偶然の組み換えなど、たくさんの要因が影響しています。
赤ちゃんが生まれるには平均25個の卵子が必要
一人の赤ちゃんが生まれるまでには、どれくらいの卵子が必要だと思いますか?
2012年までの数字で、アメリカとヨーロッパの学会がまとめたデータがあります。それによると、平均25.1個も必要でした。年齢でみてみると、38歳未満では6〜16個でした。
また、2016年に発表された海外の論文では、一人の赤ちゃんが生まれるまでに必要な卵子は、30代前半では十数個、40〜42歳で40個くらい、43歳以上では90個くらいという結果でした。現実的に考えて1回の採卵で90個の卵子を採卵するのは無理ですから、赤ちゃんを授かるのは、それくらいむずかしいということなのです。
体外受精・顕微授精で出産した割合は約12%
日本では、日本産科婦人科学会が体外受精・顕微授精など高度生殖医療(ART)のデータをまとめています。2016年の報告では、ART治療をしたうち妊娠した割合は、胚移植あたりで30%、総治療では17%、出産した割合(生産率)は11.7%でした。
いかがでしょうか?
もしも、体外受精・顕微授精が万能ならば、妊娠率は100%になるはずですよね。
「体外受精をすれば必ず妊娠するだろう」というのは大きな誤解であり、体外受精・顕微授精は万能ではありません。
妊娠率は年齢によっても違いますし、施設によっても異なります。通院している人は、自分の通院先で体外受精の成績を確かめてみるといいでしょう。
編集部まとめ
高齢で妊娠・出産する有名人のニュースにふれると、だれもが高齢になっても妊娠できるイメージを持ってしまいがち。でも実際には、体外受精・顕微授精を行なった人すべてが、妊娠できるわけではないことが、示されたデータからわかります。治療についての選択は、先送りせず、考えていきたいですね。
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浅田レディース品川クリニック院長。
より短い治療期間で妊娠という結果を出すため、エビデンスに基づいた治療や痛くない不妊治療・痛くない採卵を行なう。1982年名古屋大学医学部卒業。88年名古屋大学医学部附属病院産婦人科医員として不妊外来を担当。95年同病院分院でICSIによる治療開始。同年日本ではじめて精巣精子を用いたICSIによる妊娠例を報告。2004年浅田レディースクリニック(現・勝川クリニック)開院、10年浅田レディース名古屋駅前クリニック開院、18年浅田レディース品川クリニック開院。著書に『名医が教える最短で授かる不妊治療』『女の子が知っておきたい卵子のハナシ。』がある。
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