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不妊治療・妊活のクリニック探し・情報収集ならあかほし 基礎知識コラム 卵子の数は増やせないってホント?妊娠するために知っておきたい「卵巣の老化」と「生理」のおハナシ①

卵子の数は増やせないってホント?妊娠するために知っておきたい「卵巣の老化」と「生理」のおハナシ①

2023/05/09 公開
2023/05/11 更新

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生理や排卵については知っているけれど、意外と知られていないのが「卵巣の老化」です。卵巣の老化をとめることはできるの?知っておきたい卵巣の病気は?

学校では教えてくれなかった卵巣のちょっとコワい真実について、「早発卵巣不全」の治療の第一人者、ローズレディースクリニック院長・石塚文平先生に伺いました。石塚先生の貴重なインタビューは4回にわたり連載予定です。

1回生理がくるごとに卵胞は約1,000個も減る

妊娠をするためには、卵子が必要なことはみなさん知っていますよね。ですが、この卵子の数が生まれたときからひとり一人決まっていることは知っていますか?

お母さんのおなかの中にいるときに、女性はすでに原始卵胞という卵子の元を持っています。7カ月の胎児の卵胞数は平均で約700万個もありますが、生まれたときにはすでに約200万個に減っています。

そして初潮をむかえるころには、50万個程度に。とてもたくさんあるように感じられると思いますが、残念ながら、原始卵胞がふえることはなく、月経(生理)を迎えるたびにどんどん減る一方です。

思春期になると、まず脳が目覚め、脳下垂体というところから、卵巣に「卵胞を育てるように」という指令が出ます。そこで眠っていた原始卵胞の一部が、発育をスタートします。その数は生理周期あたり数百個。そのほかに多くの卵が発育せずに消滅していきます。つまり卵は毎月数千個ずつ減っていきます。発育する卵胞からは、女性ホルモン(エストロゲン)が分泌され、さらに成長していきます。

月経周期の始まりには数ミリ以上に発育した卵胞(前胞状卵胞)が、5~10個以上あります。ふつうはその中から、最も大きく育ったものが1個だけ排卵し、チャンスがあれば妊娠します。妊娠が起こらなければ、女性ホルモンの分泌がいったん減り、また次の月経周期が始まり、前胞状卵胞が育ち始めます。

毎月それがくり返されて、排卵に至らなかった多くの卵胞は、途中で発育が止まり、消滅していきます。一般的には50歳前後に卵巣にある卵胞の数が2,000個以下になると、卵胞は発育しなくなり、女性ホルモンの分泌が減り、閉経へ。妊娠することは限りなくむずかしくなります。

卵巣が働くのは、思春期から閉経までの、卵胞が発育する時期とイコールです。つまり卵巣機能とは卵胞の発育のことで、生物として妊娠を目ざすためのものなのです。

卵巣機能の低下は自分では防げない

月経不順などで、婦人科を受診すると、「卵巣機能が悪いですね」と言われることがあります。しかし、医学的に厳密に言えば「卵巣機能の低下」は、卵巣に残る卵の数が少なくなって、卵胞が発育しなくなる状況をさします。

卵巣機能の低下(卵子の減少)を自分の努力で止めることは残念ながらむずかしく、食事や体重のコントロールなどで改善できるものではありません。逆に生活習慣で明らかに卵子数を減少させるものとして喫煙があげられます。

一方で、一時的に卵巣機能が乱れている場合で、「卵巣機能が悪い」と言われるケースがあります。たとえば拒食症などの影響でやせすぎになると、脳が思春期前の状態に戻ってしまい、卵巣を刺激しなくなることがあります。無月経になることもあります。しかし、こうした状況のかたでもすぐにお子さんを望んでいるかたには、排卵誘発剤などで対処することが可能です。

このように、月経周期の異常の中には、本来の意味での「卵巣機能の低下」とそうでないものがあり、実際には後者のほうが圧倒的に多いのです。ですから、もし「卵巣機能が悪いですね」と言われたら、一時的に低下しているのか、卵子の数自体が少ない状態なのか専門医に確認するといいでしょう。

40歳以前で生理がこなくなる “早発卵巣不全”

通常、卵子は加齢とともにゆるやかに減少していきますが、急激に卵子の数が減り、40歳以前に閉経状態になることがあり、これを「早発卵巣不全(早発閉経)」と呼んでいます。

卵子が減ってしまう原因としては、多くのものに遺伝子が関連しており、10~15%では染色体の異常が関わっていることがわかっています。遺伝子や染色体の異常が関わっているものがあることがわかっています。それ以外の外的な要因としては、抗がん剤や放射線治療によるものがあります。がん治療では、生殖細胞に大きなダメージを与えます。

また、おたふくかぜや腹膜炎後などにも見られることがあります。そして、それらのはっきりした原因が見つからない、特発性といわれる早発卵巣不全もあり、恐らくは多くの未発見の遺伝子の異常と思われます。生理がしばらくきていないのに放置していて、早発卵巣不全に気づいていないというケースもあるので、思い当たる場合は早めに専門のクリニック、または病院を受診してください。

赤ちゃんを望む場合、卵巣機能の低下はとても大きな不妊の要因になるので、できるだけ早く検査、そして治療をスタートさせることがたいせつです。

月経周期や期間、量の異常は受診を


卵巣機能が低下したときの自覚症状は、更年期と似ています。まず月経周期が乱れます。閉経になるときの典型的なパターンは、まず周期が短くなり、そのあとだんだん間隔が長くなり、なくなるというものですが、それまで順調であった月経が突然パタッと来なくなる人もいます。また女性ホルモン(エストロゲン)が減ってくると、いわゆるホットフラッシュ(ほてりやのぼせ)などの症状も起きやすくなります。

月経量が減ってくるときは、卵胞の発育が悪く、黄体機能不全になっていると考えられます。無排卵になったり、月経がだらだらと長くつづくこともあります。

月経の周期や期間、量などに変化があるときは、早めに婦人科を受診して、卵巣機能はもちろん、ホルモン機能や子宮そのものにも異常がないかを確認しましょう。女性の医師がいるクリニックもふえているので、あまりかまえずに受診できるといいですね。

卵巣機能低下のチェックには「AMH検査」がおすすめ

将来的に子どもが欲しいと思っているなら、自分の卵巣機能が正常かどうか、知っておきたいものです。卵巣に残っている卵の数の目安とされるAMH(アンチミューラリアンホルモン)検査を受けることがおすすめです。

AMHホルモンは原始卵胞から発育を始めた卵胞が分泌するホルモンです。年齢によって数値には幅がありますが、この値が低い場合は、残っている卵子の数が少ないことになりますから、なるべく早く妊活に取り組むことがたいせつです。

また、卵胞がうまく発育しないと、脳から「もっとがんばって発育するように」と指令が出て、FSH(卵胞刺激ホルモン)の分泌が高まります。FSH値は月経周期の中で変動するので判断がむずかしい場合もありますが、一定値以上に高い場合は、卵巣機能が低下している可能性があります。

結婚前後のかたは、「ブライダルチェック」を受けてみるのもいいでしょう。将来の妊娠に大きな問題がないかを調べる検査で、多くの婦人科クリニックで行われるようになっています。施設によって内容には違いがありますが、FSH、AMH検査が含まれているところを選ぶのがいいでしょう。

また、避妊や子宮内膜症などの治療の目的で、ピルを服用している場合には注意が必要です。飲み続けてしまうことで、ほんとうに排卵しているかがわかりづらくなりますから、卵巣機能の低下を見逃すリスクがあります。この間も卵巣機能の低下を調べる方法がありますので、専門医にご相談ください。

卵巣機能を保つためにはどうすれば?

前にもお話ししたように、卵巣機能を自分でコントロールするのはむずかしく、卵巣機能を保つために「これが効く」というものはありません。ただし、気をつけたい点はいくつかあります。

まずは、体重を適正にコントロールすることです。体脂肪率が適正でないと、月経不順は起きやすくなります。BMIが肥満の範囲にあるなら、ダイエットで標準範囲に入るように努力します。ただし、急激に体重を減らすのはNGです。また、血流が低下すると、卵巣に影響するので、適度な運動もたいせつです。

妊娠を希望しなくてもホルモン補充療法を

卵巣機能が落ちても、妊娠を希望しない場合は、何も治療しなくていいのでしょうか?

答えはNOです。卵胞が発育をやめ、本来体にあるべき女性ホルモンが長期にわたって不足すると、血管が弱くなり、骨量も低下します。脳は女性ホルモンによって保護されているので、のちのちになって体調不良になったり、60代の死亡率が高くなる、認知症が早くあらわれるなどという報告もあります。美容という点でいえば、女性ホルモンの不足は、肌の状態にも大きく影響します。

治療は、一般的には飲み薬や貼り薬でエストロゲン(卵胞ホルモン)を補充します。40代以降では、飲み薬(経口投与)から貼り薬(経皮投与)に変えていくほうが、薬剤が肝臓を通らず、直接血液中に入るので、長期的な体への負担を下げられると考えられます。

ホルモン補充によってがんの罹患率が上がると心配されるかたがいますが、40歳代まではホルモン補充を適正に行えば、正常に生理があるかたと同じ状態に戻すだけなので、乳がんや子宮がん、卵巣がんの発生に影響を与えることはありません。通常通り、乳癌検診、子宮癌検診などを行うことは必要です。乳がんや子宮がんなどの検診を定期的に受けていれば、過度な心配はないとされてます。

気をつけたい「卵巣」の病気あれこれ

卵巣の病気はかなりたくさん種類がありますが、主なものを簡単に説明しましょう。

チョコレート嚢胞(のうほう)

卵巣にできる子宮内膜症がチョコレート嚢胞です(チョコレート嚢腫(のうしゅ)ともいいます)。月経のたびに出血して、卵巣の中にその血液がたまり、ドロッとしたチョコレート状に見えることから、この名前がつきました。多くの場合は良性ですが、まれにがん化することがあり、特に5~6cm以上と大きい場合には注意が必要です。

チョコレート嚢胞があると、卵胞の発育が悪くなるといわれていて、不妊の原因になることもあります。

多嚢胞(たのうほう)性卵巣症候群(PCOS)

病気ではありませんが、卵胞の発育がうまくいかず、卵巣に未熟な卵胞がたくさんある状態です。脳から出るFSH(卵胞刺激ホルモン)、LH(黄体化ホルモン)の2種類のホルモンのバランスがうまくいかず、LHが高いのが特徴で、男性ホルモンも多くなります。肥満も多嚢胞になる要因で、日本では欧米とくらべ、重症の人は少ないのですが、不妊の原因としてはやはり多いものです。

卵巣がん

卵巣がんは自覚症状が少なく、初期診断がむずかしいがんです。検査は子宮体がんの検診時に超音波でチェックしたり、血液中の腫瘍マーカーという物質を調べます。

一部の卵巣がんでは、乳がんとの関係が深く、発症の原因になる遺伝子が明らかになっていて、予防的に遺伝子診断も行われるようになってきています。卵巣がんが発見されたら、手術でがんを取り除き、抗がん剤治療を追加することが多いです。

〜次回、第2回「生理トラブルを見過ごさないで!」へ続く〜

監修
監修

ローズレディースクリニック院長。
昭和大学医学部卒業、慶應義塾大学産婦人科、カリフォルニア大学留学を経て、聖マリアンナ医科大学産婦人科教授、同大学生殖医療センター長、同大学高度生殖医療技術開発講座特任教授を歴任、平成26年に同大学名誉教授、同年ローズレディースクリニック院長に就任。早発卵巣不全の研究と治療に長年取り組み、日本全国から患者が訪れる。

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