元体操日本代表・田中理恵さん×大内久美医師「妊活&妊娠中にたいせつな栄養とは?」【後編】
体操日本代表としてオリンピックで活躍した田中理恵さんは、現在、2人の子どもを育てるママ。妊活や妊娠を振り返り、生殖医療専門医・大内久美先生と対談する後編のテーマは、「妊活&妊娠中にたいせつな栄養」。田中さんご自身も、葉酸サプリメントを妊活前から飲んでいたそうです。
前編を読む→元体操日本代表・田中理恵さん×大内久美医師「将来の妊娠に向けた早期からの身体づくりとは?」【前編】
妊活スタート前から“葉酸サプリ”を摂取
大内先生:妊娠に関心があるかたなら「葉酸」という言葉を見聞きする機会は、多いのではないでしょうか?すでにサプリメントを飲んでいるというかたも、いるかもしれません。田中さんご自身は、いかがでしたか?
田中さん:私の場合は、妊活を開始する1年ぐらい前から、サプリメントを飲み始めました。当時飲んでいたのは葉酸のサプリです。
大内先生:妊活前から飲み始めていたというのは、すばらしいですね!厚生労働省は「妊娠を考え始める前からの摂取」を推奨しています。生まれてくる赤ちゃんの健康のためという目的が大きいのですが、妊娠前に葉酸をしっかり摂取していたグループでは妊娠成績がよいという報告もあるので、妊娠そのものを考えるうえでも葉酸を摂取することは重要になります。
田中さん:妊活中のかたは知っておきたい情報ですね。
おなかの赤ちゃんの健康のためにも“葉酸”はたいせつ
大内先生:妊娠を考えたとき、赤ちゃんの神経管が形成される時期に、葉酸がとても重要になってきます。その神経管がつくられるのは妊娠6週前後なのですが、自然妊娠した場合に、妊娠に気づくのは早くて4~5週。そして「産婦人科に行こう」とするころには6週を過ぎてしまう場合もあります。そうすると、妊娠に気づいて受診するころには、神経管がつくられる時期はすでに過ぎてしまっていることになります。そのため、妊娠を考え始めた時点で、葉酸を意識して摂取しておく必要があるんです。

田中さん:そうなんですね。摂取する時期も重要なんですね。
大内先生:産科の先生がたも、外来などで葉酸の必要性をお話しされると思います。私たち生殖医療科では“妊娠する前”、つまり妊娠を希望して当科に来られるかたに対して、最初の段階で「葉酸はとても大事ですよ!」ということをお伝えしています。妊娠する少し前から、妊娠を考え始めたら葉酸を摂取しておいてほしい、というのが私の思いです。
田中さん:私自身は先輩ママである義姉などからアドバイスをもらっていたので、妊活前から飲むことができていました。これはものすごくラッキーだったなと、感謝しています。
大内先生:先ほどもお話したように、葉酸をしっかり摂ることは妊娠率自体にもよい影響があると報告されていますので、妊娠前の段階から、推奨量をサプリメントで補っていくことの意義はとても大きいと思います。
つわりのとき、葉酸サプリがお守り的な存在に
大内先生:妊娠してからもずっと、葉酸は重要だとされています。というのも、胎盤の形成や機能にかかわる疾患に、葉酸が影響しているから。“造血(赤血球をつくる)”にも葉酸は必要です。妊娠が進むと、体内の血液量が増えることで貧血になりやすくなるので、鉄分だけでなく葉酸も継続して摂取しておきたいですね。なお、妊娠初期と中・後期で必要量や推奨量は変わるため、そのあたりも含めて、適切な量を摂れているか意識していけたら理想的です。
田中さん:私は一人目のとき妊娠中のつわりがひどすぎて、もう入院ギリギリだったんです。何も食べられなくて、ずっとゴミ箱に顔を突っ込んでいるような状態で(笑)。そんなときでも「葉酸サプリさえ飲んでいれば、大丈夫のはず」と、まるでお守りのような存在で精神的にも助けてもらっていました。
妊活中や妊娠初期であれば、葉酸の必要量は1日400μg
田中さん:葉酸が重要だということはわかりましたが、サプリメントからの摂取でよかったのでしょうか?食べ物から摂ったほうがよかったのかな?と気になったのですが。
大内先生:食事だけでじゅうぶんな量の葉酸を摂るのはむずかしいこともありますし、葉酸には熱に弱く調理過程で失われてしまうという特徴もあるんです。たとえば、ブロッコリーなどの緑黄色野菜から摂ろうとしても、加熱によって葉酸の含有量が減ってしまいます。だから、たくさん食べているつもりでも必要量に達していないことが多い。推奨量まで摂るには、ものすごく大量に食べる必要があります。そういう背景もあって、厚生労働省も葉酸について、特に“妊娠を考えている女性”に対しては、サプリメントでの摂取を推奨しています。
田中さん:どれくらいの量を摂取したらよいのでしょうか?
大内先生:厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2025年版)』には、「妊娠を計画している女性、妊娠の可能性がある女性および妊娠初期の妊婦は、胎児の神経管閉鎖障害のリスク低減のために、通常の食品以外の食品に含まれる葉酸を400 µ g/ 日摂取することが望まれる」と書かれています。

ビタミンB群なども含まれたサプリメント選びを
大内先生:妊娠と栄養について補足すると、葉酸だけでなく、最近ではビタミンDの重要性も注目されています。ビタミンDは魚やきのこなどに含まれますが、日光を浴びることで体内でも合成されます。ただし最近は、過度な紫外線対策の影響により、血中ビタミンD濃度を測定すると半数以上のかたが不足しているんです。カルシウムの吸収にもビタミンDがかかわっているので、カルシウムだけ摂っていても、それがうまく活かされないこともあります。ビタミンDは積極的に摂ってほしいです。
田中さん:確かに「ビタミンD」と耳にすることが増えたかもしれません。ほかにもありますか?
大内先生:ほかには、妊娠中は血液量が増えることで貧血になりやすくなるため、鉄分も不足しないように注意してもらえたら。さらに、葉酸はビタミンB群の1つで、ビタミンB群はそれぞれが助け合って働く性質があるため、葉酸単体ではなく、ビタミンB群全体(B1、B2、B6、B12、ナイアシン、ビオチン、パントテン酸、葉酸)を意識して摂るのがポイントになってきます。
田中さん:わぁ、そうなんですね!葉酸だけ摂っていても、じゅうぶんに働かないんですね。
大内先生:葉酸がきちんと吸収されるかどうかは、ほかのビタミンB群といっしょに働くかどうかが関係しています。そのため、ビタミンB群もまとめて摂れると理想的かと思います。それから、葉酸サプリといわれるものでも、葉酸の含有量はさまざまです。先述したように、ビタミンB群の種類、鉄や亜鉛が含まれているかどうかなども商品によって違いますから。
田中さん:でも、そこまでこまかく確認する機会って、あまりないような…。
大内先生:そうなんですよ。多くの人は、病院で「葉酸を摂ってね」と言われてドラッグストアに行き、「これがいちばん売れているらしいし、これでいいかな」というような感覚で選んでしまいがちです。“葉酸”と書いてあれば、すべて同じと思っているかたも多いかもしれません。
田中さん:確かに!葉酸サプリをこれから飲み始めるかたはもちろん、現在飲んでいるかたもぜひ、配合成分をチェックしてみてほしいですね。せっかく摂取するなら、より効果を得たいですもんね。大内先生、今回は貴重なお話をありがとうございました。
【参照】
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」より一例
(いずれも30~49歳女性の場合)
葉酸…推奨量400㎍
鉄…推奨量6.0㎎(月経なし)、10.5㎎(月経あり)
亜鉛…推奨量8.0㎎
ビタミンB6…推奨量1.2㎎
ビタミンD…目安量9.0㎍
ビタミンE…目安量6.0㎎
栄養素には「1日にこれくらいとれるといいな」という推奨量や目安量が定められています。また栄養素によっては、妊娠初期、中・後期で加算されるものもあります。
田中理恵(たなか・りえ)さん●PROFILE
1987年6月11日生まれ、和歌山県出身。6歳から、両親と兄の影響で体操を始める。2010年世界体操競技選手権大会で『ロンジン・エレガンス賞』を日本女子で初受賞。2012年ロンドンオリンピックには3きょうだいそろって出場。引退後はテレビやイベントなどへ出演し、活躍の幅を広げる。公式YouTubeチャンネル「田中理恵Riefit」
大内久美(おおうち・くみ)先生●PROFILE
亀田総合病院生殖医療科 部長代理。専門は不妊治療と女性スポーツ。2001年信州大学医学部卒業後、同大学医学部附属病院産婦人科、厚生連篠ノ井総合病院産婦人科などを経て現職。日本産婦人科学会専門医・指導医、日本生殖医学会生殖医療専門医・指導医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本女性医学学会認定女性ヘルスケア専門医。スポーツ医学科で「女性アスリート外来」を受け持ち、多くの女性アスリートの身体づくりをサポートしている。
取材協力/株式会社ベルタ まとめ/濱田恵理
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