生理トラブルを見過ごさないで! 妊娠するために知っておきたい 「卵巣の老化」と「生理」のおハナシ②
生理が順調なら妊娠できる?そもそも生理ってなに?など、気になる「生理」と「妊娠」の関係について、早発卵巣不全の治療の第一人者、ローズレディースクリニック院長・石塚文平先生に伺いました。石塚先生の貴重なインタビューは4回にわたり連載予定です。
石塚先生連載
第1回⇒⇒卵子の数は増やせないってホント?
そもそも生理ってなに?どうなれば赤ちゃんができる?
月経(生理)が始まる時点では、体内の女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)はどちらも低レベルです。
そこで脳の視床下部というところから、GnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)が分泌されます。GnRHは脳の下垂体を刺激して、FSH(卵胞刺激ホルモン)の分泌を促します。すると卵巣はその指令を受けて、ストックされている卵胞の発育をスタートします。
卵胞は目に見えるかどうかくらいの大きさになると、エストロゲンを分泌し始めます。
一般的には、月経周期のスタートに、卵巣には数ミリくらいの卵胞が5~10個以上あり、それらはエストロゲンによって、ぐんぐんと育ちます。その中から、勝ち残ったものがひとつだけ選択されて成熟卵胞となり、20ミリ近くなると排卵します。
排卵は、エストロゲンの上昇がシグナルとして脳に伝わり、脳下垂体からLH(黄体化ホルモン)が大量に分泌されることで起こります。排卵後の卵胞は黄体という組織に変わり、今度はそこからプロゲステロンが分泌されます。
子宮内膜は、排卵の前から、エストロゲンの働きで厚くなっていきますが、プロゲステロンが加わることで、それまで増殖していたものが、よりふわふわになって、受精卵がやってきたときに着床しやすいベッドの状態になります。
妊娠が成立すると、胎盤の元になる絨毛細胞ができ、そこから黄体を維持するホルモンが分泌され、内膜は厚いままで赤ちゃんを育てます。
受精卵が着床しない場合は、エストロゲンとプロゲステロン、どちらのホルモンも減少し、ベッドが維持されなくなって、体外に排出されます。この排出されたものが経血です。
その後、またFSHが分泌され卵胞が育ち始め、これが毎月くりかえされるのが月経の仕組み、すなわち毎月排卵すると共に赤ちゃんが定着するベッドを作っているのが月経がおきる原因です。
心配な生理はこんなケース
月経は非常に微妙なホルモンのバランスによって成り立っています。このバランスがくずれることで、月経周期に乱れが生じます。またホルモンバランス以外にも、子宮や卵巣の病気が影響することもあります。
【月経(生理)周期】
月経開始から排卵までの低温期の長さは、人により違いますが、排卵から次の月経までの高温期は遺伝的に一定で約14日間です。
月経周期は25~35日であれば正常範囲とされています。
周期が短い場合は黄体の働きが落ちている黄体機能不全の場合が多く、周期は短くても、月経期間が長くなることがあります。排卵までの時間が長くかかるのは、卵胞がなかなか発育せず、排卵が起こりにくいケースなどがあります。
【日数】
4~5日間くらいが通常です。
1週間以上つづく場合と2~3日で終わってしまう場合は、どちらもホルモンバランスに問題がある場合があります。
【量】
医学的には140ml以上を過多月経としていますが、測定できないことが多く、判断がむずかしいものです。
しかし、経血の中に血液の塊がたびたび出るようなら過多と考えます。以前より明らかに量がふえた、日数も長くなっているなどの自覚があれば要注意です。原因は子宮筋腫、子宮腺筋症などの病気が潜んでいたり、ホルモン分泌に問題のある場合があります。
【月経痛】
月経時には、月経血を排出するために、子宮の収縮を促すプロスタグランディンという物質が分泌されますが、これが痛みを起こします。
鎮痛剤を飲んでも、腹痛や頭痛、吐き気やめまいなどでつらく、仕事や学校に行かれないなど、日常生活に支障が出るときには月経困難症とされ、治療の対象になります。子宮筋腫や子宮内膜症などの病気があると、痛みをより強く感じることがあります。
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我慢しないで!月経前症候群
月経前症候群(PMS)は、月経が始まる前から起こる体や心の不調をいいます。
わけもなくイライラしたり、気分が落ち込んだり、腰痛や腹痛、頭痛、むくみや乳房の張りなど、症状はさまざまですが、月経が始まるとこれらの症状は消えてしまいます。
排卵後に分泌されるプロゲステロンが脳に影響を及ぼすためと考えられ、個人差はあっても、多くの女性が経験しています。万引きなどの女性の犯罪率はこの時期に高いという報告もあります。
症状が軽いときには、必ずしも治療は必要ではありませんが、日常生活にさしさわるときは、症状に合わせて、利尿剤や抗うつ剤、低用量ピルなどを服用します。我慢しないで、近くの婦人科やレディースクリニックを受診してください。
月経があっても無排卵の場合も
月経が起こるのは卵胞発育と排卵があるからですが、中には排卵はしていないのに、月経のような出血が見られるケースがあります。
これは「無排卵月経」と呼ばれ、子宮などには明らかな病気がないのに、子宮からの不正出血が起こる「機能性出血」のひとつです。基礎体温を測ると、低温期のみの一相性になります。
月経周期がまちまちで、持続日数も一定しませんが、ふつうの月経と区別がつきにくいことがあります。卵胞発育が安定しない初潮から数年間の若い世代や、卵胞が発育しなくなる更年期にもよく見られます。
エストロゲンとプロゲステロン、2種類のホルモンのバランスがくずれていることが原因で、ダイエットによる体重減少や、その逆に肥満の場合、また精神的なストレスなども影響すると考えられます。
出血が頻繁で、貧血が起こるなどのトラブルがあるときは、排卵誘発剤を使って排卵を起こし、またホルモンのバランスをととのえるために、ホルモン剤の投与を行います。
なお、不正出血のうち、性交後に出血するときは、子宮頚がんの疑いがあると言えます。早めに検診を受けましょう。
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月経トラブルが不妊に結びつくことも
月経不順があるからといって、妊娠できないわけではありません。とはいえ、妊娠しづらいことがあるのは事実です。
周期が乱れるときは、排卵が起こりにくかったり、なかったり、あるいは黄体機能に問題があることが多いもの。これらはいずれも不妊の要因になりやすいので、妊娠を希望するなら、早めに婦人科を受診することをおすすめします。
また、月経痛がひどいときには、子宮内膜症が隠れていることがあります。子宮内膜症は現在でも、原因がはっきりと解明されていません。卵巣にできる子宮内膜症のチョコレート嚢胞は、卵管などとの癒着を起こしやすく、程度によっては手術が必要になり、妊娠へのハードルが高くなることもあります。
もちろん、すぐに妊娠を希望しないときも、月経不順をよくあることと放置したり、痛みを我慢しないでください。まずは婦人科を受診して、どこに問題があるのかを調べることで、症状を改善できることもあります。
〜石塚先生の連載 第3回
「日本の体外受精妊娠率が低いわけは?男性不妊は増えている?」へ続く〜
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