もちろん、将来子どもがほしいなら数が足りないので、あと何回か卵子凍結をする必要があったと思います。しかし一般の不妊治療とは違うので、医師からすすめてくることはなく、自分から言えば対応してくれるという感じでした。
ちょうどそのころ婚活を始め、今の夫と結婚を前提につき合うことになったので、確率の低い未受精卵子を凍結するよりも、結婚後に改めて不妊治療を考えたほうがいいのではないかと思い、追加の卵子凍結はストップしました。
結婚後すぐに希少ガンが判明。突然死の危険も!
その後、わりとすぐに結婚したのですが、体調をくずして血圧を測ってみたらすごく高くて、そういえば採卵のときも血圧が高いといわれたのを思い出し、検査を受けることに。原因がわかるまでに3ヶ月ぐらいかかったのですが、精密検査の結果「パラガングリオーマ」という病気が判明しました。
これは「褐色細胞腫」ともいう、希少ガンの一種です。高血圧を引き起こすホルモンを産生する腫瘍が腎動脈にでき、治療開始前は血圧が200/125を超えていました。しかも、ちょっとした刺激でパーンと血圧が上がると、突然死の危険性もあるということ。すぐに腫瘍摘出のために入院し、手術を行いました。
手術は無事に成功しましたが、摘出した腫瘍を調べたところ、良性か悪性かのグレーゾーンで、再発の可能性もあるということがわかり、今も定期的に通院し、降圧剤も飲んでいます。
検査薬で陽性反応が出たのに、胎嚢確認前に化学流産
この病気がわかったときは、結婚して「さあ、これから妊活しよう!」と思っていたところでした。年齢的にも時間がないのに、なんでよりによってこのタイミングで病気になるんだろうと、落ち込みました。
突然死の危険もあり、子どもどころではないので、しばらくは病気の治療に専念することに。手術後も体調が戻るまで半年ほど休んで、医師の許可が出てから妊活を始めました。すでに41歳になっていました。
最初はタイミング法にトライしたのですが、精神的にたいへんでした。夫も仕事で疲れて深夜に帰宅し、今すぐ寝たいときに、「今日が排卵日です」と言われても…。タイミングをもつのがむずかしく、お互いにすごくストレスでした。
妊娠検査薬で陽性が出たこともありました。婦人科に行くと、血液検査でも妊娠の兆候は出ていて、次回は胎嚢が確認できると思いますよと言われたのに、1週間後に生理がきてしまい、化学流産という結果に。
このときは本当にショックで泣きましたね。次からはもう、検査薬で線がうっすら出ても、期待しないようにしました。案の定、またすぐに生理がきてリセットしました。
1回目の体外受精、グレードAAの受精卵で妊娠
3~4回タイミング法にトライしたあと、自分から医師に申し出て、体外受精に移りました。
それは、『あかほし』ライターの友人に相談したところ、「40代の時間は若い人の何倍も貴重。タイミング法を1年も2年も続けているうちに年をとり、いざ体外受精を始めても手遅れということにならないように、なるべく早くステップアップしたほうがいい」とアドバイスされたからです。
これは本当にいい決断だったと思います。
1回目の採卵で7個の卵子が採れ、6個が胚盤胞になりました。そのうち、グレードのいちばんよかったAAの凍結胚盤胞を戻しました。そして1回目の移植で妊娠。
妊娠検査薬で陽性確認!前回のうっすらした線と違って、今回は線もクッキリ出ていたけど、本当に妊娠しているのか、疑心暗鬼でした。
はじめての胎嚢確認!前回はここまでたどりつけず、化学流産という結果に。とりあえず第一関門はクリアしたものの、まだまだ不安でいっぱい。
8週4日目。なんか動いてる!モニターで心拍を確認したときは、このおなかに本当に生命が宿っているんだなーと、感動しました。
無痛分娩のはずが、麻酔科医の出勤まで12時間陣痛に耐え、最後は鉗子で引っぱって出産。ほっぺに鉗子のあとがついていて、アンパンマンのばんそうこうを貼ってもらいました。
医師の話によると、独身時代の卵子凍結が数、グレードともに満足のいく結果にならなかったのは、病気(パラガングリオーマ)の影響も大きかったようです。その後結婚して不妊治療に取り組んだため、結局、このときの卵子を使うことはありませんでした。
最終的には病気の治療後に、体外受精で無事に出産までこぎつけることができました。残り5個の胚盤胞と、独身時代の3個の未授精卵子は、今も凍結してあります。
40代の妊活は時間との闘い。早めのステップアップが吉!
結婚前の卵子凍結に始まり、病気を乗り越え、妊娠まで長い道のりでしたが、年齢の割に体外受精はうまくいったほうだと思います。
生後11日目。カメラマンに自宅まで来てもらって撮ったニューボーンフォト。
いちばんたいへんだったのはタイミング法にトライしていた時期ですね。もうあれはやりたくないです(笑)。特に年齢を重ねているかたは、タイミング法を何度か試してみて、うまくいかなかったら、早めにステップアップしたほうがいいかもしれません。私も迷わず体外受精に移ったことで、貴重な時間をむだにせず、妊娠することができました。
今振り返れば、年齢的なリミットもあったので、「やれることは極力やるけれど、授からなくても後悔はない。授かれたらラッキー」くらいの気持ちでのぞんだことが、最終的によい結果に結びついたのかなと思っています。
※あくまで個人の体験です。治療や薬の処方などに関しては必ず医師に相談してください。
イラスト/あかださきこ 取材・文/岩村優子
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