〈卵子凍結体験談〉35歳、パートナーなし。卵子の質が落ちるって本当?その現実を知って【前編】
「卵子凍結」とは、将来の妊娠・出産に備えて卵子を取り出して、マイナス196℃で凍結保存しておく最先端の医療技術のこと。
卵子凍結を決断した女性8人の思いや葛藤をまとめた『-196℃の願い 卵子凍結を選んだ女性たち』(著者/松岡かすみ・発行/朝日新聞出版)より、卵子凍結をして子どもを授かった女性の体験談を、あかほしWEBで特別公開します。
※『-196℃の願い 卵子凍結を選んだ女性たち』の一部を抜粋・編集しています。※記事内の画像は全てイメージです(Shutterstock)。
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30代半ばの私には、もう時間が残されていないのかもしれない
●倉田佳子さん(仮名・47歳・大阪府出身) 39歳の時、凍結しておいた卵子を使った体外受精で子どもを授かり、40歳で第1子となる男の子を出産(現在小学1年生)。
大学を卒業後、大阪の企業に就職。忙しい部署での仕事は、やりがいもあって充実していた。何不自由ない実家暮らで時間と稼いだお金は自由に使える。自由気ままに、社会人生活を謳歌していた。
「20代半ばぐらいまでは、子どもも別に好きじゃないと思ってたんです」
それが変わってきたのが、妹が出産した26歳頃のこと。自分に懐いてくれる小さくて純粋な心を持つ姪っ子を「可愛いな」と思うようになり、自分も将来、産めたらいいなと思った。とはいえ、若さゆえに焦りは全くなく「そのうち私にも、そんな機会が訪れるだろう」と、のんびり構えていたという。
「コンパや婚活パーティに行く機会も、それなりにあって、中には好意を寄せてくれる人もいました。でも私は、“もっといい条件の人がいるんじゃないか”と思う繰り返しで…。今思えば、傲慢だったと思います」
忙しく仕事優先の日々を過ごすうち、あっという間に時は経ち、気づけば30代半ば。30歳を過ぎた頃から、親や祖母からの結婚へのプレッシャーも増すようになり、焦りも出始めていた。だが、30代半ばに差し掛かった頃から、コンパなどへの誘いが、パタリと途絶えた。
「この前の飲み会、何で呼んでくれんかったん?」と友達に聞くと、「だって35 歳過ぎた女は、需要ないで」と、にべもない返事。ショックだったが、はっきり言ってくれたことで目が覚めた部分もあった。
ちょうどその頃、仕事関係の資料で、卵子の加齢についてのデータを見る機会があった。資料には「35歳を過ぎたら、卵子の質が落ちる」とあり二度見するも、40歳を超えた芸能人が妊娠・出産したニュースを度々目にしていたこともあり、「いやいや、35歳って早くないか?」と思う自分がいた。仕事の面では、「乗りに乗ってきた時期」でもあり、まだまだ自由気ままな自分中心の時間と仕事を優先したかった。
だが自分は、世間的に見れば、あるいは生物学的に言えば、もう若いとは言えないのかもしれない。産むことを望むなら、もうあまり時間が残されていないのかもしれない――。得体の知れない不安が突如、胸に広がった。
パートナーはいないが卵子凍結セミナーへ
折しもその頃、実家で購読している新聞に、卵子凍結についての記事が掲載されていた。咄嗟に「あ、これで将来に産める可能性を残せるかも、と思った」。その時点でパートナーはおらず、いつパートナーができるかも分からない。だが少なくとも、もう少し後になっても、産める可能性を残せるのではないかと考えた。
当時はまだ、大阪で卵子凍結について積極的に発信しているクリニックは限られていたため、どの医療機関で卵子凍結するのかという問題は比較検討するまでもなく、絞り込まれた。まずは詳細が知りたいと、すぐにそのクリニックが主宰する卵子凍結セミナーに申し込む。
セミナーには、大勢の女性が来ていた。年齢層も幅広く、30代〜50歳前後の人もいる。「生理は順調やし、大丈夫やろ」と話している50歳ぐらいの女性もおり、「上には上がいるなあ」と思ったという。卵子の加齢に伴う、妊娠率や出産率の減少。年齢とともに妊娠・出産のリスクが上がること。30代後半は、かなりタイムリミットが近づいた年齢であること――。セミナーで初めて知ることはたくさんあった。

卵子凍結の過程における副作用やリスク、高額な費用など、懸念点についてもしっかり説明があったことで、「このクリニックは信用できそうだな」と思えた。費用は高額だが、収入もそれなりにあるし、貯金もある。副作用がどう出るかは、やってみないと分からない。
決めかねているうちに1年が経ち、「これにかけてみるしかない」と腹を括くくったのが、37歳の時のこと。加齢や部署が変わったことのストレスなどが影響し、生理が不順になり始めていた。「生理の周期が乱れてきたら、自然娠は難しいかもしれない」と思ったことも後押しになった。
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