4ページ目(4ページ中) | 自分で出てきた子を拾って…、流産に慣れている自分も嫌…、期待したくないから喜べない…【流産を経験しました】
ですから、悲しいのに涙が流れないという方もいますが、涙を流していないから悲しんでいないというわけではありませんし、「正しい悲しみ方」があるわけでもありません。
早く悲しみが薄れる人もいれば、何年も強い悲嘆反応にさいなまれ続ける人もいます。病気ではなくても、ご自身がつらい場合には、同じような悲しみを経験した人のピア・サポートを受けたり、悲嘆を扱う「グリーフケア」の専門家に相談するのもとても役に立ちます。
悲嘆反応には段階があり、一般的には下記のプロセスを経て回復していきます。
ただし全員がこの過程をたどるとは限らないし、段階を経ないで回復するケースもあります。
《悲嘆反応のプロセス》
1)情緒危機…悲しい気持ちににぶくなったり、何事にも無気力になります。
↓
2)抗議―保持の段階…失ったものを探したり、追い求めて取り戻そうとする状態になります。これが数年続くこともあります。
↓
3)断念…失ったものが本当に戻らないということがわかり、本格的な喪失体験をする。
引きこもりや抑うつがみられることもあります
↓
4)離脱―再建…失った物から心が離れるようになり、完全な立ち直りが始まる。
泣きたいときは泣いていいし、無理に元気になる必要はない
泣きたい時は泣いてください。かといって無理に泣く必要はありません。ご自身にわいてくる感情を、そのまま認め、しっかり感じていいのです。
周囲の人からは、「早く忘れなさい」とか、「いつまでもいなくなった赤ちゃんのことにこだわらないで次の妊娠のことを考えなさい」と言われるかもしれません。ですが、無理に忘れようとする必要はありません。
流産したお子さんのことに思いを寄せることができるのは、お二人だけのことも多いのですから、しっかりとその子のことを考えてあげていいのです。
自分なりの思い出作りとして、エコー写真を保存したり、名前をつけたりする方もいらっしゃいます。
さきほど供養のお話が出ていましたが、やることでご自身の気持ちが軽くなる、ラクになるのであれば、それもよいでしょう。
「ふたりで悲しむ」ということも大事ですが、それぞれの悲しみ方は異なることも忘れないようにしましょう。どちらの悲しみが深いか比べたり、相手が悲しんでいないように見えることを責めたりはやめましょう。
「ふたりに起こった悲しいことを、ふたりが悲しんでいる」のです。ただ、ふたりで話し合ったり気持ちを語り合うのが難しい場合は自治体の不妊・不育専門相談センターや専門性をもつカウンセラーさんを頼るのがいいでしょう。
また、「悲しみは時間薬で癒される」ということを聞いたことがあるかもしれません。要するに時間が経てば悲しみも薄らぐはずという考えですが、それは人によって異なります。流死産に関する調査をしたところ3割の人が1年経っても辛さが続いていることがわかっています。
人によって辛さが癒える時間は異なるということを覚えておいてください。悲しみがいつ癒えるかわからないくらい大変な経験をしたのですから、ご自分を責めず、悲しみの時間を大切にするようにしましょう。
辛くてうつのような状態になってしまった場合は、だれかの支援が必要です。ただ相談できていない人が3割近くいるという調査結果もあります。
どこに相談したらいいかわからない場合は、自治体の不妊・不育相談センターにアクセスしてみてください。また、流死産の当事者支援をおこなっているピアサポートを頼ることもとても役に立つでしょう。
流死産をくり返すと不育症の可能性も。正しい情報を知っておくことが大切
2回以上の流死産をくり返した場合は、「不育症」と言われる状態です。ただ、不育症は、議論の多い概念のため、医療機関によって定義や捉え方もばらつきがあったりもします。
また、不育症検査をしたところで、原因がみつからないことあります。さらに治療法も必ず次の流産を防げるという効果的なものが確立しているわけではないことも知っておきましょう。
そういった情報をきちんと把握したうえで、検査が必要と感じたら、一度主治医に相談してみるといいでしょう。より不育症についての詳しい情報を知りたい場合は、国の研究班が作成した「フイク・ラボ」というサイトをチェックしてみるのもいいかと思います。
関連記事:不育症とは?無事に出産できる?原因・検査・治療についてドクター解説
向き合い方は、ご自身がいいと思うやり方でOK
流死産の辛さを乗り越えるには時間はかかります。一般的には半年くらいかかるといわれたりもしていますが、もっとかかる場合もあります。最近の考え方では、子どもとのお別れを無理にしようとしなくてよいという考え方が主流となっています。
もちろん自然と薄れていくのはいいですが、無理に忘れる必要はありません。
週数が進んでお腹の子が大きくなってから失うと、辛さも増えてしまうと考える方もいますが、週数によって悲しみが決まるわけではありません。あくまでも流死産を体験したご自身がどうとらえるかによって決まります。
たとえば、妊娠がわかって間もないタイミングでもとても苦痛に感じる人もいらっしゃいます。化学流産だから、稽留流産だから、などということはないんです。早く立ち直る必要はなく、悲しい気持ちとじゅうぶん思い切り向き合うことが大切です。
Iさんがおっしゃっていましたが、次の妊娠出産に向けて焦ってしまう気持ちもあると思うのですが、まずはしっかり体と心を休めることを優先させるようにしてください。
夫やパートナーが辛い場合はどうする?
流死産をした場合、もちろん夫も悲しいと感じているのですが、どうしても悲しみの表れ方としては女性の方が強いことが多いため、夫は妻を支える側に回ってしまい、男性自身のつらさや悲しみは自分の中に押し込めて出さない方も多くみられます。
「自分も一緒に悲しんでしまったら家の中が暗くなるから自分がしっかりしないと」とおっしゃる方も多い。ですが、自分の気持ちを抑えすぎてしまうとまいってしまうケースもあります。
妻を支えるというのは夫の大切な役割ではありますが、自分のつらさをがまんする必要はありません。2人で悲しんでいいのですし、妻には悲しむ気持ちを出したくないという場合は、我慢せずに専門家にサポートを依頼しましょう。
わが子との別れを経験する流死産。いろんな感情があって当然
繰り返しになりますが、「いつまでも悲しんでいてはいけないと思う」と考える必要はありません。
子どもの死をどうとらえるかは個人によります。周りの人は良かれと思って早く立ち直るように励ましてくるかもしれませんが、その励ましに応えらえないから落ち込んでしまう人も少なくありません。でもそれはあなたたちが悪いのではありません。
ここまで「悲しむことが大事」とお伝えしてきましたが、実際には仕事もずっと休むことができなかったり、日常の家事や雑事をしていく必要もありますよね。
日常を取り戻している時間には、亡くなった子どものことを忘れてしまっているように感じて罪悪感を覚えることもあるかもしれません。でも、悲しみからの回復には、その子のことを考えてしっかり悲しみに浸る世界と、日常の生活を送りながらこれからのことを考える世界、この二つの世界を行き来しながら進んでいくと考えてください。
どちらも大切な時間であり、悲しみへの適切な対処なのです。それぞれの時間を無理のない範囲で過ごすようにしましょう。
いろいろな感情が出てきて当然です。それだけに大きな体験をされたということなので、ご自身の気持ちを大切に過ごしてくださいね。
ーー先生ありがとうございました。本日の感想も聞けたらと思います。
Iさん:うちの夫はポジティブなんですが、先生の話を聞いてもしかしたら傷ついているかも…と。ちょっと気遣ってみていきたいなと感じました。供養についてもできていないことが気になっていましたが、先生の話を聞いてちょっと安心できました。自分のタイミングでやってもいいと考えられそうです。
今日は、リアルな友達にはなかなか聞けない話を聞くことができました。ありがとうございました。
Hさん:私も夫がそばにいてくれることのありがたさを感じましたね。私は最初の流産はちょっと前なんですが、時間が経っても辛いと感じることがあります。でも先生のお話の「時間が解決するものではない」というのを聞いて、ちょっと気持ちが楽になりました。本当にありがとうございました。
みなさんも、気軽に「あかほしお茶会」参加してみませんか?
(まとめ:高橋 知寿)
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生殖心理カウンセラー(公認心理師・臨床心理士)。
東京リプロダクティブカウンセリングセンター代表。
広島市出身。広島大学教育学部心理学科卒業後、1997年より広島HARTクリニックで心理専門職による不妊カウンセリングを開始。98年米国にて生殖心理学の研修を修了。2002年より東京HARTクリニック生殖心理カウンセラー。21年生殖と不妊の心理支援に特化した心理相談室を開設。日本生殖心理学会副理事長。
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