両親にも言えない…夫婦のリアルな不妊ストーリーも/矢沢心さん・登坂淳一さんらと考える「不妊症・不育症にやさしい社会」とは?厚労省オンラインフォーラムレポ
厚生労働省が行っている、不妊症や不育症に関する正しい知識や情報を発信するとりくみの一環として開催された「みんなで知ろう!不妊症・不育症のことフォーラム」。本オンラインフォーラムの模様、寄せられた不妊症・不育症ストーリーをレポートします。
不妊症・不育症のことを正しく知ろう!厚生労働省のとりくみ
厚生労働省では、不妊症や不育症に関する正しい知識や情報の発信、周囲に相談しやすい環境づくり、不妊症や不育症治療当事者に関する間違った情報をなくしていくことを目的にさまざまな普及啓発をすすめています。その一環として、『みんなで知ろう!不妊症・不育症のことオンラインフォーラム』が開催されました(2023年1月27日)。
今回のテーマは「不妊症・不育症にやさしい社会にしていくために」。
進行は、自身も不妊治療の経験を持つ登坂淳一さん。ゲストに、10代のころから多嚢胞性卵巣症候群を患っていた女優・タレントの矢沢心さん。国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 不妊診療科診療部長の齊藤隆和先生、特定非営利活動法人Fine ファウンダー/理事 松本亜樹子さんが登壇され、それぞれの立場から、不妊症・不育症についてディスカッションが交わされました。
矢沢心さん&登坂淳一さんの妊活体験
トークセッションでは、不妊治療を経験された矢沢さん、登坂さんが、自身の経験について語る場面も
おふたりには『赤ちゃんが欲しい』でも以前取材、じっくりお話いただいています。
»»矢沢心さんの不妊治療インタビュー「4年間の不妊治療。心拍確認後の流産…」を読む
»»元NHKアナウンサー・登坂淳一さん「不妊治療で僕がとっても驚いた3つのコト」を読む
『#あなたの不妊症・不育症ストーリー』をご紹介!
オンラインフォーラム開催にあたり、『#あなたの不妊症・不育症ストーリー』を募集。寄せられたストーリーのなかから、いくつかのストーリーを矢沢さん、登坂さんが紹介しました。
寄せられたストーリーを矢沢さんが朗読
原因不明のまま進んだ長くつらい不妊治療
●福島県・かんなままさんのストーリー
私は24歳で結婚して、25歳で不妊治療を始めました。
25歳という年齢。多くの方はまだ若いと思われると思います。まわりからも「若いからすぐできる」と言われてきましたから、まさか私が不妊治療の当事者になるとは思ってもいませんでした。
しかも私の場合、不妊の原因は不明。
不妊検査では何も問題がなく、夫の検査も問題ありませんでした。何が原因なのかそれすらわからないまま、不妊治療といわれる治療法、いわゆるタイミング法から顕微授精まですべて経験しました。
顕微授精で授かれたのは、治療を始めて2年後の27歳の時でした。その2年間は本当につらく長い日々でした。
私より遅く結婚した友だちや先輩方が続々と妊娠し、すでに2人目を授かってるなんて方もいました。ニュースで流れる芸能人のおめでた話も、正直精神的につらくなるので聞きたくなかったです。
すべての治療を経験してトータル300万円近くかかっています。金銭的にも精神的にもボロボロになりかけた時に、やっと娘が来てくれました。
顕微授精でできた受精卵を子宮に戻す前に私は、当時大好きだった仕事を辞めました。精神的にストレスを感じるものをすべて排除して、移植日を迎えようと決めたからです。
尊敬する上司に退職の相談をしたら、「会社の人間としては残ってほしいけど、一人の人間としてあなたに子どもを授かってほしいから応援したい」と退職を受け入れてくれて、泣きながらお話ししたのを覚えています。
今回の経験で、年齢は関係ないし、子どもが欲しい時にできるとは限らないと実感しました。不妊症は誰にでも起こりうることだと思いました。長くつらい経験ではありましたが、今はただ、もうすぐ2歳になる娘が元気に成長してくれるのを楽しみに見ていたいです。
ゴールが見えずつらいことばかり。何度落ち込み、泣いたか…
●埼玉県・ゆいなママさんのストーリー
28歳の時に、5年お付き合いした同い年の夫と結婚しました。
仕事は保育士。子どもが大好きで、結婚したらすぐに彼との子どもが欲しいと思っていました。結婚している仲の良い友人や同僚などは、子どもを産んでいる子がほとんどだったので、当たり前のように自分もママになれるものだと思っていました。
最初に通った病院は地元の産婦人科で、患者は妊婦さんが圧倒的に多く、真逆の治療で通う自分がとても惨めでした。
また、若い妊婦さんの高めのヒール靴や、香水やタバコの匂いがする妊婦さんなど、時々見かけると、勝手にイライラしていました。
タイミング法をしても授からず、何度かトライしたのち、子宮内ポリープが見つかり切除手術。その後、人工授精を3回行いましたが妊娠せず。採卵をして体外受精と顕微授精を行い、12個の受精卵を凍結。移植で1回目も2回目も着床するが、継続できず…。
–{投稿者・ゆいなママさんのその後ーー}–
3回目の移植で無事に妊娠でき、35歳で女の子を出産できました。
不妊治療中、何度落ち込み、泣いたかわからないぐらい気持ちが沈みました。そのたび夫は一緒に凹むのではなく、励ましてくれ、わざとふざけて笑わせようとしてくれ、暗くならないよう接してくれました。本当に感謝しています。
でも、何年も子どもができない状況で、保育士として働くことがきつくなったり、子どものいる友人の誘いを断るようになり、買い物も子連れの多いショッピングモールなどは行きたくなくなり、自分からまわりの人との交流を断ってしまいました。
不妊治療のつらさを話して涙を流してくれた友人にさえ、会うのが嫌になり、そんな自分が嫌で、負のループから抜け出せませんでした。
病院は同じ悩みを持つ患者さんであふれ、待ち時間が2~3時間は当たり前。多い時は1週間毎日通院。仕事先に急な休みや早退をお願いしたりしました。不妊治療は本当にゴールが見えず、つらいことばかりでした。
流産を経験。なんで?なんで?何が悪かったの?自問自答
●静岡県・Aikoさんのストーリー
結婚したのは24歳の時。夫は7歳年上です。
26歳になったころ、まわりからも挨拶がわりに「お子さんは?」と聞かれることも増え、だんだん焦りが出てきて、夫婦で病院に行きました。
その時の診断結果は、男性不妊。乏精子症でした。わが家の場合は、男性不妊だったので一番最初から顕微授精という選択をしました。初めての採卵でとれた卵は一つ。受精まで順調に進みお腹に戻すこともできました。
すでにこの時、私の中では妊娠したのと同じくらいの気持ちでいたと思います。
がしかし、数日後に病院に行き数値の確認をしたところ、妊娠数値が出ていないと。なんで?なんで?何が悪かったの?と、診察室で涙をこらえるのに必死でした。とにかく一人になりたくて、駐車場の車の中でわんわん声を出して泣きました。電話で夫に報告。帰ってからあらためてたくさん話をしました。
もう次の治療なんて考えられない、こんなにつらい思いは二度としたくない、もう治療したくないと泣きながら夫に訴えました。夫は「それならもう病院に行かないようにしよう」と言ってくれ、すべて私の好きにさせてくれました。
おいしいものを食べたり、夫婦で温泉に行ったり、しばらくのんびり休憩したと思います。でもやっぱり自分の子どもを抱きたい、夫をパパにしてあげたい、という気持ちはいつも頭の片隅にあったと思います。
1ヶ月くらい経つと気持ちは落ち着き、冷静に考えられるようになり「本当の自分はどうしたいのか」自問自答した時、もう一度病院に行こうと思い治療を再開しました。
そこからも本当に長くて苦しいトンネルでした。その後、無事に男の子が生まれ、今ではその子も8歳です。弟もいます。弟は長男出産から1年半後、再度治療を始めて1年でできました。決して無駄ではない6年半でした。
あの時に人の痛みを知り、どん底を見たり、光を見たりしたことは、今の自分の糧になっています。当たり前は当たり前じゃないということも学びました。
不妊治療は夫婦で話し合って決めたことなのに…離婚
●島根県・しえさんのストーリー
独身の時、卵巣嚢腫になり腹腔鏡手術で治療。その時、卵巣は残してもらっていたのですぐに子どももできるだろうと思っていました。
結婚して1年経っても授からず、病院に行ってタイミング法も試してもダメで、33歳に通水検査で卵管閉塞が原因ではないかと手術。これできっと赤ちゃんを授かるだろうと、病院も変えて不妊治療を再開。
夫とは、タイミングの時にしか求めないほぼ義務的な感じのまま、セックスレスに。夫の非協力的な言動も見え隠れしはじめ、体外受精の話になった時には、夫は完全に協力する気もなくなり、怒り出す始末。
不妊治療は夫婦間で話し合って決めたことなのに…。あきらめることもできず、夫への不信感などもあり、結果離婚。
不妊治療は夫婦でよくよく話し合い期間を設けることも大事だと思い、新たな人生を歩んでいる最中です。
ひとりで抱えていた私に夫が話してくれた自分の気持ち
●神奈川県・あーこママさんのストーリー
2年間の不妊治療を経験しました。
私の夫は、あまり自分の気持ちや考えていることを話さない人です。不妊治療の時は特に、夫婦で進んでいるはずなのに、ひとりぼっちで頑張っているような寂しさを感じたこともありました。
繰り返す流産に、この悲しみや苦しみは私一人にしか分からない、自分一人で何とかしなければいけないと頑なに思っていた時、初めて夫が自分の気持ちを話してくれました。
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