元体操日本代表・田中理恵さん×大内久美医師「将来の妊娠に向けた早期からの身体づくりとは?」【前編】 | 不妊治療・妊活のクリニック探し・情報収集ならあかほし(赤ちゃんが欲しい)
MENU
不妊治療・妊活のクリニック探し・情報収集ならあかほし 妊活ライフコラム 元体操日本代表・田中理恵さん×大内久美医師「将来の妊娠に向けた早期からの身体づくりとは?」【前編】

元体操日本代表・田中理恵さん×大内久美医師「将来の妊娠に向けた早期からの身体づくりとは?」【前編】

2025/07/08 公開
2025/07/14 更新

画像ギャラリー

現在2人の子どもを育てる、元体操日本代表の田中理恵さん。現役選手のころはハードな練習と厳しい体重管理で身体を過酷な状況に追い込み、将来の妊娠を考える余裕はなかったと話します。そんな田中さんと生殖医療専門医・大内久美先生による対談が実現。貴重なお話を前編・後編に分けてお届けします。

後編を読む元体操日本代表・田中理恵さん×大内久美医師「妊活&妊娠中にたいせつな栄養とは?」【後編】

女性アスリートの多くが経験する“体重との戦い”

大内先生:最近では、女性やカップルが将来の妊娠のために健康管理を行うプレコンセプションケアという考え方が広がっています。田中さんは現役選手時代、いかがでしたか? 妊娠のための健康管理はされていたのでしょうか?

田中さん:正直に言うと、現役選手のころは将来の妊娠について全く考えていませんでした。ただ、思い返せば、指導者でもあった父がずっと「体操人生は長い。でも、体操が終わったあとの人生のほうがもっと長いんだぞ。絶対に月経を止まらせるような無理なトレーニングをするな」という言葉をかけてくれていて。これは大学の先生も同じ考えで、くり返し言ってくださっていました。当時は選手として受け止めていましたが、今になって、これは妊娠のための健康管理でもあったんだなと感謝しています。

大内先生:お父さまや大学の先生がそうおっしゃる背景には、体重管理などで苦労された経験があるのではないでしょうか?

田中さん:そうなんです。体操選手は体重が0.5kg増えただけでも回転の感覚が大きく違ってくるので、選手時代は常に体重を気にする生活でした。ケガをして、通常の練習ができなくなってしまったときに、身長が10㎝以上、体重も10㎏以上増えてしまって。自分の体型の変化に心がついていかなくて、とにかく痩せなきゃ痩せなきゃと思ってしまって、高校生のころはハードな練習があるにも関わらず、朝はほとんど食べず…。せいぜい食べてもバナナを1本だけ。だから、練習中はエネルギー不足でパワーが出ないし、集中力もなし。大会が近づくと、食べること自体が精神的負担になるほどでした。

大内先生:それはとても大変でしたね。女性アスリートの3主徴に「利用可能エネルギー不足」「月経異常」「骨粗鬆症」がありますが、利用可能エネルギーが不足すると女性では排卵が遅れたり、無月経になることがあり、その状態ではアスリートは本来の力が発揮しにくくなります(また、低エストロゲン状態で骨がもろくなり、疲労骨折などのリスクも高くなります)。

田中さん:おっしゃるとおりです!日本体育大学に入学したことで、大きな転機が訪れました。大学1年生のころ、監督から「3食しっかり食べなさい!身体によいものを食べるように」と、競技に耐えられる身体づくりのための増量を命じられたんです。これを機に栄養についても勉強するようになりました。健康的に目標体重を達成することに成功。しっかり食べて筋肉トレーニングを行うことで、理想的に筋肉がつき、最終的にパフォーマンス力もぐんとアップしました。私自身はこの“パフォーマンスのための強い身体づくり”が、結果的にそのまま将来の妊娠にもつながることにもなったんじゃないかと思っています。

大内先生:栄養をしっかり摂って、筋肉をつけて、オリンピックに出場!しかも、妊娠・出産もされたという田中さんのご経験は、非常に説得力がありますよね。若いうちから将来の妊娠に向けて健康な身体づくりを行うことがいかに重要か、これはアスリートに限らず、世の中の女性全員に伝えたいことです。

妊娠とキャリアの間で“妊娠時期を悩む”現実

大内先生:女性アスリートたちに話を聞くと、「どのタイミングで妊娠するか」ということ、つまり、競技を一度お休みして妊娠・出産をする時期に悩むかたが多い印象も受けます。

田中さん:そうでしょうね。私自身は引退後に結婚や妊娠を経験しましたが、現役時代であれば、数ヶ月お休みしたら、もう以前のように動けなくなってしまうのではないかと不安で仕方なかったと思います。

大内先生:妊娠・出産は競技がひと段落したところで、という考え方がベースにあるので、そのタイミングで悩むアスリートも少なくないと思います。最近ではアスリートの妊娠中から出産前後をサポートする仕組みづくりの動きも出てきていて、妊娠中も体力を維持できるようなトレーニングを継続したり、産後に体調をみながら速やかにトレーニングを再開できるようなサポートを行っている施設もあります。

田中さん:海外には妊娠・出産を経て復帰している選手も多くいるので、日本でもそんな選手が増えていくといいですね。

大内先生:「競技を中断して妊娠・出産する」という選択肢だけでなく、「競技を続けながら妊娠・出産・子育てをしていける」。本人が希望したときに競技生活やキャリアを続けながら、妊娠・出産に臨めるような世の中になってほしいですよね。

食べるものや睡眠が妊娠しやすい身体づくりの一歩

田中さん:私は現役生活を2013年に終え、2017年に結婚。翌2018年に第一子を妊娠しました。引退直後の私は結婚もしていなかったので、いつか母になるという意識も当然ながら薄く、「せっかく厳しい選手生活から解放されたんだから、もう頑張らなくていいんだ!少し羽を伸ばそう」という気持ちが強くて。体重計も隠し、「絶対に乗らない!」と決めました(笑)。人生26年目にして初めてファストフードをセットで頼んで完食してみたり、ポテトチップスも一袋全部食べたり。身体によくないとわかっていても、「絶対に食べてやる!」と。さらに夜更かしをして不規則な生活をしていたら、案の定、ニキビができ、体調もすぐれなくなって。「あぁ、やはり身体に出るんだな」と体感しました。

大内先生:そうだったんですね。子どものころから厳しい練習や体重管理をされてこられたら、そのような気持ちになるのはわかる気がします。

田中さん:そんな期間を経験したことで、食べるものや睡眠がいかに大事かということを改めて知り、規則正しい生活に戻しました。妊活を始めたころは、選手時代のような徹底した食事管理とまではいかずとも1日3食バランスよく食べることを意識して、あとはサプリメントをじょうずにとり入れて。妊娠に大切だと言われている葉酸だけでなく、いろいろな栄養素がバランスよく入っているものを選ぶようにしていました。そのおかげか、妊活してから割とすぐに妊娠することができたんです。

身体づくりと並行して、卵子凍結という選択肢も

大内先生:だいぶ前の話になりますが、ものすごく一生懸命に競技にとり組んでいた女性アスリートから、ある相談を受けたことがありました。それが、医学的理由ではないノンメディカルな卵子凍結についてでした。今でこそ、企業や自治体などで女性のキャリア支援やライフプランを考慮した制度が整いつつありますし、卵子凍結の話題もだいぶ身近になってきましたが、当時は日本生殖医学会としてもノンメディカルな卵子凍結については、積極的に推奨していませんでした。私の勤務していた病院でも、そのころは悪性腫瘍など、医学的な適応がある場合に限って卵子凍結を行っていました。たとえば、これから化学療法や放射線療法が必要になって、卵巣の機能が低下する可能性があるかたに対して、治療の前に卵子を凍結するなどのケースです。でも、ノンメディカルな卵子凍結については、病院として受け入れていなかったため、残念ながらその選手には対応できなかったのです。

田中さん:そうだったんですね。今は社会全体の流れが変わってきていて、東京都の助成がニュースでとり上げられるなど、卵子凍結という選択もしやすくなってきていますよね。

大内先生:そうなんです。たとえば、「今すぐ妊娠するつもりはないけれど、将来的には子どもが欲しい」「パートナーがいないけれど、いつかは…」というようなかたにとって、有効な手段の一つとして考えられるようになってきました。アスリートに限った話ではありませんが、責任の重い仕事を任されていたり、キャリアにおいて大事な時期にあったりする女性たちが「少し落ち着いてから妊娠を」と考えていたけれど、いざ希望したときには卵巣予備能(AMH)が低下していて、妊娠までに時間がかかってしまう。あるいは、思ったような結果が得られない。そういったケースも、日常の診療で実際に目にするんです。そうした現実を踏まえながら、“ノンメディカルな卵子凍結”も視野に入れて、女性がライフプランをもっと自然に選べるような世の中になってほしいと思っています。

田中さん:私もそう思います。女性アスリートも競技生活の途中で妊娠・出産・育児を経験できる、そんな柔軟な選択肢が広がる未来が訪れるといいですよね!

田中理恵(たなか・りえ)さん●PROFILE
1987年6月11日生まれ、和歌山県出身。6歳から、両親と兄の影響で体操を始める。2010年世界体操競技選手権大会で『ロンジン・エレガンス賞』を日本女子で初受賞。2012年ロンドンオリンピックには3きょうだいそろって出場。引退後はテレビやイベントなどへ出演し、活躍の幅を広げる。公式YouTubeチャンネル「田中理恵Riefit」

大内久美(おおうち・くみ)先生●PROFILE
亀田総合病院生殖医療科 部長代理。専門は不妊治療と女性スポーツ。2001年信州大学医学部卒業後、同大学医学部附属病院産婦人科、厚生連篠ノ井総合病院産婦人科などを経て現職。日本産婦人科学会専門医・指導医、日本生殖医学会生殖医療専門医・指導医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本女性医学学会認定女性ヘルスケア専門医。スポーツ医学科で「女性アスリート外来」を受け持ち、多くの女性アスリートの身体づくりをサポートしている。

取材協力/株式会社ベルタ まとめ/濱田恵理

〈あわせて読みたい記事〉
本当は栄養が足りていない!「ありがち朝ごはん」TOP3【妊活中の食事】
男性が妊活で食べるべきもの。精子を元気にする栄養素とは?【妊活中の食事】
【最強の妊活食材5選】鮭・さば缶・しらす・卵・きのこ!摂取できていますか?

\\あかほし会員にプレゼント♡//

Ayaさん

あかほし会員になると妊活情報誌がゲットできる!

\順次お届け中/
Dream Ayaさんが表紙の『赤ちゃんが欲しい 妊活パーフェクトガイド』

詳細はコチラ▶『あかほし会員登録(無料)ページ』
新規会員登録、アンケートより住所を登録ください。登録いただいた住所にお送りします。
※お送りのスケジュールはこちらを確認ください


※認証コードのメールが届かない場合、「迷惑フォルダ」「削除フォルダ」「スパムフォルダ」等に自動的に振り分けられてしまうことがありますので、ご確認ください。

ログイン後、アンケートより送付先の住所登録をお忘れなく。

『赤ちゃんが欲しい(あかほし)』は、主婦の友社が運営する妊活・不妊治療のお悩み解決メディア。ドクターや専門家監修の信頼コンテンツを中心に「妊娠したい」を全力サポートします。全国のクリニックや施設の検索もラクラク。

X LINE
人気記事ランキング
  • 24時間
  • 月間
閉じる