誰にも言えなかった不妊治療。２年の月日が俺には10年に感じるほど長かった｜ダイアモンド✡ユカイさん〈男性妊活〉体験記【後編】

「無精子症」と診断され、顕微授精で３人の子どもを授かったダイアモンド✡ユカイさんの、男性妊活振り返りインタビュー後編。

取材の際、「時間をムダにしないためにも男性が積極的になってほしい！」と熱く語ってくれたユカイさんからの、妊活男性に向けたメッセージとアドバイスをお届けします。

無精子症で心が折れた俺を支えてくれたものは、ズバリ、鈍感力！

不妊治療をしていたのは２年弱だけど、俺には10年に感じるほど長かった。

当時は不妊治療のことはだれにも言えなかったよね。親は昭和ひとケタ世代だから、言っても理解できなかった。世間にもまだ体外授精は受け入れられにくい感覚があったと思う。

心が折れそうになったとき自分を支えてくれたものは、ズバリ「鈍感力」。通院のたびにいちいち凹んでいたらキリがないからね。こまかいことに一喜一憂せず、やるべきことを淡々と進めていった。

人生、成功するには「ウン・ドン・コン」が必要。ロックンローラーの夢を叶えた俺は“運”に恵まれて“根”性もわりとあるほうだったけど、“鈍”感力は不妊治療でかなり鍛えられたと思ってる。

人生は「点」の集まり。俺がロックンローラーになれたのもひとつの「点」、武道館でライブをやれたのも、気づいたらバラエティーに出ていたのも「点」。無精子症が判明し、不妊治療で子どもを授かったのもまた「点」。

そのときどきで、目の前のことから逃げずに真剣に向き合った結果、人生にいろんな「点」ができて、あとで振り返ると全部つながっていた。その点とは、一期一会のことだ。それが人生につながっている。

早いうちに夫婦できちんと家族計画を話し合おう

俺が無精子症のことを書いた本『タネナシ。』を出版してから10年以上。今では男性不妊も保険診療になり、世間のとらえ方もずいぶん変わったと思う。

最近は講演会に呼ばれることも増えたけど、『タネナシ。』を読んで検査を受けて無精子症だとわかったとか、子どもを授かったといった声を聞くとうれしいよね。

こうのとり大使として埼玉県の高校へ講演に回ったこともあった。避妊については保健体育で教えるけど、不妊のことは教えないよね。約100人に１人が無精子症だと聞いた生徒は、みんなびっくりしてるよ。

講演会で必ず言うのは、「早いうちに夫婦で家族計画を話し合ってほしい」ということ。

今は女性の結婚年齢も上がり、東京では平均が30歳くらい？女性は35歳を過ぎると妊娠率が下がっていくし、タイムリミットまであと10年くらいしかないことになる。

30歳でタイミング法を続けて35歳のときに検査で夫の無精子症がわかったら、５年間の努力が水の泡になる可能性も。

子どもが欲しいなら、まずは男性が積極的に検査を受けてほしいね。

鈍感力を最大限に発揮せよ！

採精室って人生の矛盾を感じる場所だよね（笑）。謎のAVが用意されててさ、「俺、こんな場所でいったい何やってんだ？」って。でも結局、生きていくことって矛盾だらけ。いちいち気にしていたら何もできない。そんなときこそ鈍感力を発揮してクールに乗り切ろう！

お酒を控えてラジオ体操と筋トレ！

浴びるほど飲んでいたお酒を控えて、スイーツ男子に変身！ラジオ体操をやったあとは腕立て60回、腹筋60回、屈伸30回からのジャンピングを５セット。男性ホルモンを増やすには自分に合った筋トレが効果的。おかげで、還暦を過ぎた今も元気に過ごせてよる。

現実としっかり向き合おう

不妊治療は俺を成長させてくれた。妻にやさしい言葉をかければよかったとか反省もあるけど、自分は未熟な人間だと教えてもらったよ。今は妊活に及び腰な男性も、逃げていると人生の次のステップに行けない。しっかり向き合ったほうがきっと幸せになれると思う。

PROFILE●ダイアモンド✡ユカイさん
1962年生まれ、東京都出身。ロックバンド「RED WARRIORS」を結成し1985年にデビュー、1990年からソロで活躍。著書に自身の不妊治療をつづった著書『タネナシ。』（講談社）がある。オフィシャルブログ「ユカイなサムシング」

取材・文／岩村優子

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