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不妊の予防を政府がサポート!厚生労働省「不妊予防支援パッケージ」とは?

2021/11/16 公開
2023/07/10 更新

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厚生労働省が発表した「不妊予防支援パッケージ」。女性の健康を包括的に支援することで、不妊予防に向けた取り組みを推進するためのこの政策。具体的にどんな内容が盛り込まれているのか、調べてみました。

不妊の予防や治療費軽減のための政策が次々に進行中

政府は昨年とりまとめられた「全世代型社会保障改革の基本方針」において、

①不妊治療の保険適用
②不妊治療と仕事の両立支援
③里親・特別養子縁組制度の周知

の3点にとり組む方針を決め、加速する少子化対策として、不妊治療の支援事業の拡充にとり組んでいます。

中でも①の保険適用については、今年から始まった助成金の大幅な拡充に加え、2022年4月から体外受精や顕微授精などの高額治療に対する公的医療保険適用の実現に向けての取り組みが進んでいます。詳細については現在審議中ですが、不妊に悩むあかほし読者にとって、経済的負担の軽減は大きなサポートになるでしょう。

さらに2021年7月、内閣府、文部科学省、厚生労働省が連携し、「不妊予防支援パッケージ」をとりまとめ、田村厚労大臣(当時)が発表しました。これは生涯にわたる女性の健康を包括的に支援することで、不妊予防に向けた取り組みを推進するためのパッケージです。どんな内容なのか、まずはその背景から見てみましょう。

約8割の女性が何らかの月経トラブルを抱えている

内閣府の調査では、グラフのとおり20代で6割以上、30代で5割以上の女性が月経痛を抱えています

月経に関わる不調の状況(女性のみ)

グラフ:月経に関わる不調の状況
出典:内閣府「男女の健康意識に関する調査」(平成30年)

月経による体調不良や精神不安、PMS(月経前症候群)、月経不順などの割合も多く、月経に関わる不調がな
いという女性はわずか2割前後にとどまり、多くの女性が何らかの月経トラブルを抱えていることがわかります。

月経痛による受診者の子宮筋腫・子宮内膜症等の割合

グラフ:月経痛による受診者の子宮筋腫・子宮内膜症等の割合
出典:厚生科学研究「リプロダクティブ・ヘルスから見た子宮内膜症等の予防、診断、治療に関する研究」(平成12年)

月経痛で婦人科を受診した女性のうち、器質性月経困難症(子宮内膜症、子宮筋腫などを原因とする月経痛や体調不良)の割合は20代で3割、30代で5割、40代で7割と、年齢とともに高くなっています。

子宮内膜症や子宮筋腫等は卵巣がんや不妊につながるリスクがあります。そのため、早期発見、治療、重症化予防を行うことがとてもたいせつです。

一般女性のうち約3分の1は月経痛に何らかの医学的介入を必要としています。月経痛のため半年のうちに1日でも仕事を減らしたり、休んだりする女性は27.3%も存在するなど、勤労女性の社会的QOLを低下させている現状がわかりました。一方、月経中の自分の状態について、周囲から理解されていないと答えた女性は全体の4割を超えており、月経に関する社会的啓蒙の必要性もうかがわれます。

月経異常を感じても受診しない女性が多数

働く女性の月経に関する異常症状があった際の対処方法

回答結果:働く女性の月経に関する異常症状があった際の対処方法
出典:日本医療政策機構「働く女性の健康増進に関する調査」(2018)

このグラフでもわかるように、多忙な毎日を送る働く女性の半数弱は、月経に関する異常症状があっても、何の対処もせずに仕事をしています。市販薬や医師に処方された薬を飲みながら仕事を続ける女性も多く、婦人科などを受診する人は約3割にとどまります。

また、中高生女子の約8割は、月経による勉強・運動への影響があるとしながらも、その94%は病院に行かないことがわかっています(日本子宮内膜症会議 スポーツ庁委託事業「子どもの体力向上課題対策プロジェクト」(平成28年)より)

過酷な練習に明け暮れる女性トップアスリートの世界でも、7割以上がPMSを自覚しています。運動性の無月経も深刻な問題です。

これらの状況をふまえて現在、婦人科などにアクセスしやすい社会の実現が求められています。女性のライフステージや生活環境に寄り添った支援を行い、気づかれにくい不妊リスクをなくしていくことがたいせつです。

働く女性も婦人科にアクセスしやすい社会へ

今回の「不妊予防支援パッケージ」では、①働く女性、②保険・医療、③学校・アスリート、と、3つの側面から、不妊を予防するさまざまな取り組みが行われています。ここではまず、働く女性のためのサポートについて見ていきましょう。

●事業主団体に対し、月経困難症に悩む女性労働者への配慮(婦人科を受診しやすい配慮など)について要請を行う

●職場における相談体制の拡充

・産業医等に対し、婦人科疾患など女性の健康課題についての研修を拡充
・産業保健総合支援センターの産業医にも研修を行い、中小企業で働く女性の相談ニーズに対応する
・産業保健総合支援センターと女性健康支援センターや不妊専門相談センターとの連携を強化し、効果的な相談
体制を整備

●さまざまな機会を活用した女性の健康課題に関する情報発信の強化

・職場の定期健診で、女性の健康問題に関する情報や、子宮頸がん検診、婦人科等の定期健診を促すリーフレットを配布
・事業主、労働者向けのセミナー開催、企業における取り組み事例の収集・提供等によって、女性の健康問題に関する情報提供や啓発をはかる
・健康経営の啓発強化

政府の指導によって、職場でも婦人科を受診しやすい配慮や、産業医などに相談しやすい環境がととのうとありがたいですね。子宮内膜症や子宮筋腫といった不妊の原因になる婦人科疾患の早期発見、治療にもつながります。

保険・医療の面から不妊予防をサポート

次に、「不妊予防支援パッケージ」の中で保険や医療の面から、不妊リスクをなくしていく取り組みについて紹介していきましょう。

●女性の健康に関する情報発信の強化

・HPやスマホでのセルフチェック情報を紹介
・女性の健康習慣における各種キャンペーン
・女性健康支援センターの周知啓発

● HPV(子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス)ワクチンに関するていねいな情報提供

●子宮頸がん検診などの拡充

・子宮頸がん検診の受診率向上を図るため、情報発信、周知啓発の取り組み強化
・休日夜間対応など、働く女性等への配慮
・子宮頸がん検診の過程で、子宮筋腫、子宮内膜症等の病状等が疑われる場合に、精密検査の受診をすすめる取り組みの徹底を図る
・職域における子宮頸がん検診の精度管理の推進

●健診の在り方の研究

・諸外国の健診制度も参考にしながら、わが国の健診の在り方の改善を図っていく

特に子宮頸がん検診の拡充には力を入れている印象です。働く女性も休日や夜間に検診を受けられたり、健診の過程で子宮筋腫や子宮内膜症の精密検査に進むことができれば、不妊の予防にも効果が期待できます。


編集部より

妊活中の女性・カップルにとっても心強い今回の「不妊予防支援パッケージ」。政府が不妊の予防や治療のサポートに力を入れることで、周囲や職場の理解も深まり、子どもを持ちたいと考える人の希望がかなう社会の実現につながります。

「不妊予防支援パッケージ」には、ほかにも学校・アスリート向けの支援など、さまざまな取り組みがあります。くわしくは厚生労働省のホームページをご覧ください。

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