「あぁ…綺麗な子だ…」ヒット漫画家・おかざき真里さんが描く不妊治療の現場『胚培養士ミズイロ』インタビュー/胚培養士?なんですか?から始まった…作品制作の裏側を聞きました
『胚培養士ミズイロ』おかざき真里/小学館
画像ギャラリー『週刊ビッグコミックスピリッツ』(小学館)で2022年10月に連載がスタートした注目作『胚培養士ミズイロ』。不妊治療専門クリニックの胚培養士・水沢歩と、赤ちゃんが欲しいと願う人々の思いが織りなすヒューマンドラマを描く本作は連載開始当初から、SNSでも話題になりました。
手掛けるのは数多くのヒット作を生み出してきた漫画家・おかざき真里さん。今回、青年誌に不妊治療を描く意味は?なぜ胚培養士が主人公なの?漫画が誕生した背景についてたっぷりお伺いしました。妊活・不妊治療メディア『赤ちゃんが欲しい』のインタビューをお届けします。
【作品紹介】『胚培養士ミズイロ』

主人公は不妊治療クリニック・アースクリニックで働く、天才胚培養士・水沢歩(みずさわあゆむ)。“男性不妊”、“高齢出産”など、さまざまな問題に直面しながらも、赤ちゃんが欲しい夫婦たちの強い想いに応えていく…。そんな不妊治療の現場で働く人たちを描く注目作品。『週刊ビッグコミックスピリッツ』(小学館)にて連載中。2023年1月30日に単行本 第1集が発売予定です。
【プロフィール】おかざき真里(おかざき・まり)さん

多摩美術大学卒業。大手広告代理店に勤務していた1994年に漫画家デビュー。以来数多くの作品を発表し、女性たちの共感を得ている。代表作でもある『サプリ』は2006年にテレビドラマ化、『ずっと独身でいるつもり?』は2021年に映画化されている。
▶▶『胚培養士ミズイロ』第1話を特別公開!さっそく読んでみる
赤ちゃんが欲しかった32歳の私。
「不妊治療 病院」その次の検索ワードが浮かばなかった
「不妊治療 病院」その次の検索ワードが浮かばなかった
いまから20年ほど前ですが、私自身、結婚してから1年間子どもが授からなかったんです。その頃は「結婚して2年たっても妊娠しなかったら病院へ」という時代でした。治療方針も時代によって違うんだな、と思います。
結婚したのは32歳。当時としては遅いほうだったので、赤ちゃんはちゃんと授かるのか、病院に行ったほうがいいのか、やはり不安でした。
インターネットで調べようと思ったのですが、「不妊治療 病院」と打ち込んだあとに、どんなワードを入れていいかさえわからない。不妊治療に対しての知識はその程度しかなかったんです。
ありがたいことに33歳で自然妊娠しましたが、ママになって初めて「不妊治療で子どもを授かった」という人が周囲にちらほらいることに気づきました。
公園で出会ったママは、「2人目不妊で病院に通っていたから、上の子をママ友に見てもらってたの」とオープンに話してくれて、不妊治療って珍しいものじゃない、実はまわりにたくさんいるのだと知りました。でも、子どもを持つまで全然見えなかった世界であることもまた、そのとき実感したんです。
現在の日本では、14人に1人が体外受精で生まれているといわれていますよね。
そう考えると、私の子どもや姪や甥が、将来不妊治療する可能性だって十分あるわけです。親戚だけじゃなく職場の後輩がするかもしれないし、もしかしたらいま現在しているかもしれない。
不妊治療って、誰にとっても全然他人事じゃない。そんな気持ちは20年前からずっと心の中にありました。

『胚培養士ミズイロ』第1話 声を聴く人 より
「胚培養士?なんですかそれ?」から始まった徹底的な取材
「胚培養士」という職業を知ったのは、今回の企画が立ち上がってからです。
『週刊ビッグコミックスピリッツ』で連載をスタートするにあたって、こんなテーマはどうだろう、あんなテーマはどうだろうと検討を重ねたのですが、なかなか「これ」というものが見つからなかったんです。
そこで担当編集者のSさんに「おかざき真里に描かせたいもの、何かないかね?」と聞いてみたんです。すると理系出身のSさんは、「胚培養士を主人公にした物語を描いてほしい」と言ってくれたのです。Sさんは学生のときにその職業を知って「いつか漫画にしたい」と思っていたのだそうです。
胚培養士とは、自らの手で卵子と精子を受精させる生殖医療のスペシャリストです。でも私は、その仕事は医師がやっていると思い込んでいました。
私が知らないということは、『スピリッツ』の読者も知らない人が多いはず。「これならいける!描きたい!」頭の中で物語が動き始めた瞬間でした。
と言っても、なにぶん私のなかに知識のない世界です。都内にある不妊治療クリニックに取材をお願いして、6~7カ所で取材・見学させていただきました。そのほかにも大学病院や製薬会社の方にも話を聞くことができました。
卵子を見たとき「美しい…」と心から思いました
取材で印象深かったのは、卵子の美しさです。
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