2ページ目(2ページ中) | 「卵巣嚢腫」とは?症状や治療法、放置した場合の危険性を詳しく解説
卵巣嚢腫の危険なケース【捻転・破裂】
5〜6cm以上の大きさになると、卵巣嚢腫が根元からねじれてしまう「捻転」や「破裂」を引き起こす可能性があります。
捻転や破裂が起こると、腹痛や吐き気などの症状が現れ、ひどい場合はショックで意識不明に陥ることもあり、この場合、緊急手術が必要となります。
妊娠の可能性がある人、妊活中の人の場合は、6cm以上の大きさで妊娠後にねじれることもあるため、こちらも手術で取り除いておく必要があります。
卵巣嚢腫の危険なケース【不妊】
卵巣嚢腫によって卵巣が大きくなると、卵巣に圧迫されて引き延ばされた卵管の働きが悪くなり、妊娠しにくくなることがあります。
また、大きくなった卵巣が動くため、卵管から手のように出ている卵管采が卵子をピックアップしにくくなり、妊娠のさまたげになります。
卵巣嚢腫が卵巣がんになる可能性は?
卵巣嚢腫のうち「漿液性嚢腫」と「粘液性嚢腫」は良性腫瘍ですが、超音波検査などで100%「良性」と判断することは難しいため、経過を見ていく必要があります。「皮様嚢腫」は35歳以上の場合に、まれにがん化することがあります。
また、良性の卵巣嚢腫と悪性腫瘍の中間的な性質の「境界悪性腫瘍」の場合は、放置するとがん化するおそれがあります。早めに受診し、適切な治療を行いましょう。
卵巣嚢腫は自己診断できる?
卵巣嚢腫は自覚症状がなく、初期の段階で気づくことはほぼ不可能でしょう。
自分で調べるときは、まず仰向けになり、軽くひざを立てます。その姿勢のまま、恥骨の少し上の部分を真ん中、右上、左上と指先で押してみて、何かしこりやふくらみを感じたら、卵巣嚢腫があるかもしれません。
何か違和感がある場合は婦人科・産婦人科を受診しましょう。
病院での検査方法と診断は?
ある程度の診断は、これらの検査で可能ですが、卵巣嚢腫の種類や悪性かどうかは実際に手術をして病理検査をするまでは確定できません。悪性かどうかをはっきりさせるためにも手術は有効です。
●内診
医師が膣内に指を入れて卵巣の大きさ、形、癒着の有無、腫れなどを確認します。ただし、ある程度の大きさにならないと診断しにくいため、次の超音波検査やMRI・CTがより正確です。
●超音波検査
経腟超音波検査(腟内に棒状の超音波プローブ器具を挿入し、反射波の情報を画像化する検査)、または経腹超音波(おなかにゼリーを塗り、おなかの外からプローブをあてる超音波検査)で、卵巣嚢腫の大きさと状態を調べます。
●MRI・CT
卵巣嚢腫の内部の構造をよりくわしく見るための画像診断。卵巣嚢腫の種類や、良性・悪性の予測を行います。
●腫瘍マーカー(血液検査)
MRI、CTと同じように、卵巣嚢腫の種類や良性・悪性の予測を行います。
卵巣嚢腫、どんな治療をする?
卵巣嚢腫には効果的な薬がないので、経過観察で様子を見るか、治療をする場合は手術となります。
手術のタイミングや、卵巣を全摘出するか、嚢腫部分だけを摘出し卵巣を温存するかは、患者さんの年齢や妊娠を希望するかによって変わるため、医師と十分に相談して決めてください。
経過観察
妊娠を希望しておらず、4~5cm未満の良性の卵巣嚢腫であれば、治療がいらないことも。定期的に超音波検査を行い、経過を見ます。
手術
手術(主に腹腔鏡下手術)で嚢腫を取り除きます。
卵巣嚢腫は嚢腫部分と正常な部分の組織がはっきりと分かれているため、正常な部分へのダメージは少なくてすみます。嚢腫部分と正常な部分との分離が難しい場合や、将来妊娠を考えない人は、状況に応じて卵巣をすべて摘出します。
・大きさが6cm未満の良性腫瘍の場合
痛みもないことから経過観察になることが多いです。
・6cm以上の大きさの場合
捻転や破裂のリスクが高まるので手術を適用します。
・妊活中の場合
比較的再発しにくい漿液性嚢腫や粘液性嚢腫の場合や、嚢腫自体が小さい場合は、そのまま妊娠にトライすることもあります。再発しやすい皮様性嚢腫の場合や、妊娠後にねじれる可能性のある6cm以上の大きさの嚢腫では手術になることが多いです。
手術は原則として嚢腫部分のみを取り除きます。もし片方を全摘出する場合でも、卵巣は2つあるので、1つ残れば妊娠は可能です。
手術後、約1カ月後からは妊娠にトライして大丈夫です。
手術の場合は開腹になる?
以前は「開腹手術」が中心でしたが、現在は内視鏡を使った「腹腔鏡下手術」が主流です。
「腹腔鏡下手術」は、おなかに2~3カ所小さな穴をあけ、そこから内視鏡を挿入し、腹腔の状態を確認しながら行う術式です。医師の高い技術力が必要ですが、傷跡も小さく、体への負担も少ないことから、回復が早いのがメリットです。通常4~5日の入院で退院できます。
ただし、「腹腔鏡下手術」を適用した場合でも、腹腔内の状態を見た医師の判断により、「開腹手術」に変更することもあります。
開腹手術になる場合
・悪性の可能性が否定できない場合
・腹腔内で癒着している場合
・手術の既往歴がある場合
なお、妊娠を希望している場合は、手術時に通水検査(卵管造影検査)を同時に行ってくれることもあります。
考えられる合併症は?
すでにお話した「捻転」や「破裂」の他にも、以下のような合併症が起こる可能性があります。
卵巣嚢腫が他の臓器と癒着している場合
卵巣嚢腫が腸管、膀胱、尿管などと癒着している場合、手術で癒着している部分をはがすため、臓器にダメージが起こる可能性があります。
両側の卵巣を摘出する場合
両方の卵巣をとってしまうとホルモンバランスが崩れ、のぼせ、ほてり、動悸など、更年期と同じような症状が現れることがあります。なるべく両卵巣を摘出することは避けますが、50才以上の場合は再発のリスクをふまえて、本人が希望すれば、両方の卵巣を摘出することもあります。
両側の卵巣嚢腫の部分的に切除する場合
卵巣は少しでも残っていれば、女性ホルモンの分泌や排卵などの働きを残せますが、部分切除により、卵巣機能が低下することがあります。
知らぬ間に卵巣嚢腫が大きくなってしまうと、卵巣を全摘出しなければならないこともあります。早期発見のため、定期的に超音波検査を受けることをおすすめします。
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