染色体トラブルのない受精卵をつくるには?着床しやすくするためにできることはある?【にしたんARTクリニック神戸三宮院(医療法人ART会)】
不妊治療中のかたからのお悩みにドクターがお答え。今回は、「PGT-Aを受ける前に卵巣刺激方法を変更するかどうか迷っています」という方からの質問に、にしたんARTクリニック神戸三宮院(医療法人ART会)の大谷徹郎先生がアドバイスします。
【質問①】染色体トラブルのない受精卵をつくるためにはどうしたらいい?
大阪府/ゆりさん(36歳)、赤ちゃんが欲しい歴2年
『体外受精でグレードのよい胚を3回戻しましたが、妊娠できませんでした。近々、PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)を受ける予定ですが、卵巣刺激の方法を変えるかどうか迷っています。刺激法を変えると、正常な染色体を持つ受精卵の割合は変わりますか? また、着床しやすくするために、何かできることはありますか?』
【回答】たくさんの受精卵をつくれば正常卵に出合う可能性は高まります
にしたんARTクリニック神戸三宮院 (医療法人ART会)
理事長 大谷徹郎先生
1979年神戸大学医学部卒業。ワシントン大学医学部、ドイツ・キール大学医学部留学などをへて、1996年神戸大学医学部附属病院助教授。2000年より大谷産婦人科不妊センター院長。2011年神戸ARTクリニック開設。2023年7月、長年の不妊治療の経験・ノウハウをより多くの患者さまに届けるために、「にしたんARTクリニック神戸三宮院(医療法人ART会)」に改称。
PGT-Aは妊娠の可能性を高め流産率を下げる検査です
PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)は、体外受精の際、胚移植する前に胚盤胞の染色体を調べて、異常がないことを確認するための検査です。
女性の年齢が上がるほど妊娠しにくくなるのは、すでに知られていることですが、年齢を重ねるほど染色体に異常がある割合もふえていきます。染色体にトラブルがある胚盤胞を移植すると、着床しない、または流産という結果になってしまうため、繰り返し流産しているかたや、グレードのよい胚盤胞を戻しているのになかなか着床しないかたには、PGT-Aは有効な検査だといえます。
検査の方法としては、通常の体外受精や顕微授精と同様に、卵巣刺激を行って卵をつくり、採卵して受精させます。その後、当院では受精後5日目以降の胚盤胞に成長したものから5~10個程度の細胞を採取します。
採取するのは、胎盤になる部分なので、生まれる赤ちゃんに影響がおよぶことはありません。その細胞を、次世代シーケンサーという分析機器にかけて検査し、染色体数を判定します。その後、染色体に異常がないと判定された胚盤胞を子宮に移植します。
当院でのPGT-Aで正常と判断された胚盤胞1個を戻した場合の妊娠率は、年齢にかかわらず70%程度と非常に高く、流産率も年齢にかかわらず10%程度になっています。PGT-Aは、流産のリスクを下げ、妊娠率を上げることができる技術だといえるでしょう。
グレードが悪くても染色体が正常な胚盤胞なら妊娠の可能性はあります
通常は胚盤胞を顕微鏡で見て評価し、グレードをつけます。そして胚移植する際は、グレードのよいものほど妊娠しやすいだろうと判断され、グレードのよいものから胚移植されます。しかし、質問者さまのように、グレードのよい胚盤胞を子宮に戻しても、なかなか妊娠しないというかたはいらっしゃいます。その理由の一つに考えられるのが、胚盤胞の染色体異常です。
実は、胚盤胞の見た目だけでは、染色体異常があるかどうかまではわかりません。グレードのよい胚盤胞でも、染色体異常があれば妊娠できませんし、逆にいえばグレードが低くても染色体が正常な胚盤胞であれば、妊娠の可能性は高くなります。
では、どうしたら正常な染色体を持つ胚盤胞を得ることができるのでしょうか。
体外受精・顕微授精では、高刺激法(アンタゴニスト法)、中刺激法、低刺激法、ショート法、PPOS法、自然周期法といった卵巣刺激の方法があります。
当院では血液検査と生理2~3日目の超音波検査で、育ちかけの卵胞の数をみて、そのかたに合ったベストな卵巣刺激法を提案し、最終的には患者さまの意向もふまえて決定しますが、どの卵巣刺激法でも正常な胚盤胞に出合える確率は、ほぼ同じだということがわかっています。
ただし、年齢が高くなるほど、胚の染色体異常率は急激に上がります。35歳あたりから徐々に上がっていき、40歳を過ぎると胚盤胞のうち7~8割に染色体異常がみられます。異数性の割合に個人差はありませんが、移植可能胚と出合える可能性は個人差があり、40歳を過ぎて1回目のPGT-Aで染色体が正常な胚盤胞が見つかるかたもいれば、20回以上繰り返しても見つからないかたもいます。
いずれにせよ、たくさんの卵ができるほど正常な胚盤胞に出合える可能性が高くなるので、一度にできるだけたくさんの卵を得る方法で卵巣刺激を行うことが近道です。
【質問②】着床しやすくするためできることは?
【回答】「PFC-FD療法など子宮側の治療もしっかりと行いましょう」
受精卵を胚盤胞にまで育てるためにさまざまな工夫をしています
PGT-Aは受精卵を胚盤胞まで育てないと検査ができません。高齢の女性は胚盤胞まで育つ割合も低くなるため、当院では卵巣刺激法や、培養の際に使う培養液などを工夫し、できるだけ胚盤胞に成長できるようサポートしています。
また、胚盤胞になりやすくなるサプリとして女性にとり入れているのが、DHEAです。残念ながら市販はされておらず、日本では医薬品となります。
子宮鏡検査やERA検査、PFC-FD療法など、子宮側の検査・治療も行っています
PGT-Aのあとに正常卵を移植すると、約7割のかたは1回目で着床しますが、2割強のかたは着床しません。その場合、子宮に問題があると考えて検査を行っています。
例えば、子宮鏡検査でポリープや炎症がないかなどを調べるほか、「着床の窓」を調べるERA検査も積極的に行っています。これは子宮内膜に胚盤胞が着床できる時間や時期(=着床の窓)には個人差があるためです。適切な時期を調べたうえで移植することにより妊娠の可能性が上がります。
当院では、ERA検査と併せて、子宮内膜の細菌を調べ、着床しやすい子宮内環境にするためのEMMA(子宮内膜マイクロバイオーム)検査やALICE(感染性慢性子宮内膜炎)の検査をされるかたも多くいらっしゃいます。
ほかにも、「ネオセルフ抗体検査」や、御本人から抽出した成長因子を用いることで子宮内環境の改善が期待される「PFC–FD療法(子宮)」などもとり入れて、より着床しやすくなるように努力しています。
それでもうまくいかない場合は、移植前に子宮内膜をととのえる方法を変える場合もあります。ホルモン補充周期で使う薬を変えてみたり、自然周期で行ってみたりと、一人ひとりの患者さまに合わせて、さまざまな治療を行っています。
クリニック紹介/にしたんARTクリニック神戸三宮院(医療法人ART会)
受付・待合室にある大きな窓からは神戸の街並みを一望できます。
体外受精の際に利用するリカバリールーム。
診察室とは別フロアにあるキッズルーム。順番が表示されるモニターもあるので安心です。
卵子や精子、受精卵を扱う培養室。培養士は約7人在籍し、経験15年以上のベテランが2人もいて、心強いです。
にしたんARTクリニック神戸三宮院 (医療法人ART会)
住所:
兵庫県神戸市中央区雲井通7-1-1 ミント神戸15階
電話:
078-261-3500
アクセス:
各線「三宮駅」よりすぐ
診療時間:
月/11:00~20:00
火・木/9:00~17:00
水・金/9:00~20:00
土・祝/9:00~13:00
日/9:00~16:00
※診療時間は変更になる可能性があります。詳しくはホームページにてご確認ください。
公式HP:
https://www.ivf.co.jp/
企画/サンワードメディア
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