現代人には圧倒的に不足している栄養素「オメガ3」って何?約37兆個の細胞を支えているってホント?妊活中から積極的に摂取したい理由
日本では早産が出産全体の約5%で発生、年々増加傾向にあります。早産は新生児死亡の75%、重篤な神経障害発症の50%の原因となっており、早産のリスクを下げることはとても大切です。
早産のリスクはさまざまですが、オメガ3の油に早産のみならず、流産も予防する働きがあることがわかってきました。日本脂質栄養学会 理事長で、オメガ3系脂肪酸に関する脳機能研究の第一人者である麻布大学 生命・環境科学部の守口 徹先生に詳しいお話を伺いました。
オメガ3不足は早産のリスク要因にもなり得る
ハーバード大学とデンマークの研究機関の共同研究において、妊娠中のオメガ3不足が、早産のリスク要因になり得ることが明らかになっています。※
自然早産の原因の多くに“細胞の炎症”があると考えられているのをご存じですか?そのため、抗炎症作用があるDHA(体内に蓄積されているオメガ3)が十分にある状態を維持することができれば、炎症を初期段階で鎮められる可能性が高くなり、早産、流産、新生児死亡など出生児の健康を脅かすリスクを抑えることができるのです。
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母体を整え、細胞膜を強く柔らかにしてくれる重要な栄養素
どんなに科学が進歩したとしても、受精卵はママのお腹の中でしか育たないことを考えると、妊娠するための母体を整えることにしっかりと目を向ける必要があります。
受精卵が順調に育ち、健康な赤ちゃんに育つまでのプロセスでは、数えきれないほどの細胞分裂を繰り返します。オメガ3は、体を作っている約37兆個といわれるすべての細胞を覆っている細胞膜の材料であり、細胞膜を柔らかくしてくれます。
どんなに体に良いものを食べていても、細胞膜が硬くては体内の栄養素をうまく細胞内に取り込めません。細胞膜が柔らかければ、細胞から細胞へと栄養がきちんと取り込めるようになり、細胞も丈夫になるのです。
しかし、魚食が減った現代人の食生活は、圧倒的にオメガ3不足の状態です。
オメガ3の油は体内で合成できない必須脂肪酸のため、普段の食事から摂る必要があります。
ホルモンバランスを整えてくれたり、アトピー性皮膚炎や花粉症などのアレルギー症状の改善、免疫力の向上、ドライアイ予防、イライラや不安の解消、乾燥肌や髪のパサつきの改善、中性脂肪や内臓脂肪が減る、物忘れ・記憶力の低下を防ぐなど、一生涯にわたり、うれしい作用をたくさん持っているオメガ3。そんな中でも、もっともオメガ3を摂取すべき時期が、妊活中・妊娠中、そして産後です。
オメガ3が、大事ないのちを守り育むためのとても重要な栄養素であることをぜひ知っていただき、魚介類を食べられない日には、毎日“小さじ1杯”のアマニ油やえごま油などからオメガ3を摂る習慣をしっかり心がけていきましょう。
※参考文献:①Olsen SF et al, Plasma Concentrations of Long Chain N-3 Fatty Acids in Early and Mid-Pregnancy and Risk of Early Preterm Birth. EBioMedicine. 35:325-333 (2018).
②Philippa Middleton et al, Omega-3 fatty acid addition during pregnancy, Cochrane Database Syst Rev, 11: CD003402 (2018)
ライター/オメガさと子
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麻布大学 生命・環境科学部 食品生命科学科 食品栄養学研究室 教授。
横浜市立大学卒 国立がんセンター研究所、東京大学 薬学部に研究出向の後、同大学で博士号を取得。 米国国立衛生研究所(NIH)で脂肪酸と脳機能に関して研究。 2008年より現職。 日本脂質栄養学会 理事長。気分障害を中心としたオメガ3系脂肪酸に関する脳機能研究の第一人者。
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