古い、狭い、日当たりが悪い、うるさい。「四重苦」部屋から引っ越した私が授かったもの【100人の妊活・不妊治療記#011】
朝から晩までパソコンの前を動かないデスクワーク時代を経て、いざ妊活を開始。ずっと放置してきた生理不順が大変でした。いつ生理がくるかわからず、排卵日が特定しにくくて…。ここでは、生理不順に悩んだすえ、1回目のタイミング法で妊娠したNさん(32歳)の体験談をご紹介します。
【100人の妊活・不妊治療記#011】みんながどんな妊活・不妊治療でママになったのか取材しています。(ご本人の年齢や検査の数値などは取材時点のものです)
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「生理がこなくてラク♪」と楽観視していた
ずっと生理不順に悩んでいました。高校生から22歳までは、生理が年に数回しかなかったのですが、そのころは子どもが欲しいどころか、結婚願望すらなし。生理がこなくて楽ちん♪と、のんきなことを思っていました。
その後、生理が遅れるたびに「妊娠していたらどうしよう」と悩むのが嫌になり、22歳から28歳までは避妊のためにピルを飲んでいました。それ以降は、周期に多少の前後はありつつも、毎月、生理がくるようになっています。ただ、PMSは年々ひどくなっています。
仕事優先だったから、予定より遅れて妊活スタート

ホットドリンクを飲むようにして、温活もがんばりました!
本当はもっと早く結婚、妊娠、出産したかったのですが、29歳で入籍した当時は私が転職したばかりで、仕事優先でした。また、コロナ禍で挙式が延期になってしまったため、予定より遅く、妊活を始めたのは私が30歳、夫が32歳のときでした。
いざ妊活を始めてからの生理不順は大変! いつ生理がくるかわからず、排卵日が特定しにくい。PMSで生理前になるとどうしようもなくイライラして、夫に当たり散らしていました。本当に申し訳なく思っています。
検査したら、男性ホルモンの数値が高かった!
クリニックに通い始めたのは、30歳のときです。生理不順の自覚があったので、妊活開始とともに治療もスタート。血液検査をしたところ、男性ホルモンの数値がとても高いことがわかりました。そのためうまく排卵ができていないとのことだったので、ピルを飲んでホルモンを安定させる「カウフマン療法」を行いました。治療開始後、1~3ヶ月おきに血液検査をするのですが、男性ホルモンの数値はなかなか下がりません。
結局、数値が落ち着くまで9ヶ月もかかってしまい、その間はピルを飲んでいるので、もちろん妊娠できません。それがとてももどかしく、その9ヶ月がとても長く感じられました。
転院後、1回目のタイミング法で妊娠

妊娠中の4Dエコー。顔が見られて、会える日がいっそう楽しみになりました
妊婦さんや子連れの方を見るのがつらかったので、最初は産婦人科ではなく、若い独身女性がピルを処方してもらったり、婦人科系の検査や治療をしていたりという人が多いレディースクリニックに通っていました。先生はサバサバした明るい女性で好きでしたが、いつもとんでもなく混んでいて、待ち時間がすごく長かった…。
貴重な土・日に病院へ行っても、何時間も待って、やっと先生と話せて、忙しそうだから話を存分に聞いてもらえない。毎回モヤモヤしていた気がします。予約制のクリニックを探せばよかったなと思いました。
治療を開始して9ヶ月後、ホルモン値が正常になってきたところで、排卵日を確実に特定するために排卵誘発剤を打ち、子宮の壁を厚くする薬を飲みながら、タイミング法を3ヶ月ほど続けました。が、妊娠には至らず。
その後、クリニックからのすすめで紹介状を書いてもらい、不妊治療専門の先生がいる病院へ転院。すべての投薬をやめたところ、タイミング法1回で妊娠することができました。
不妊治療専門の先生に言われて少しショックだったのは、妊娠がわかったときに「妊娠したみたいです」と陽性の妊娠検査薬を見せたら、「本当に? それ、排卵検査薬じゃないの?」と言われたこと。超音波検査で妊娠を確認してもらったときも事務的に「じゃあ、次回からは別の医師が担当するから」と言われ、もうちょっと喜んでくれてもいいのにと……思ってしまいました。
このまま仕事を続けていたら…
妊活していた当時、私は製薬会社で新薬の治験結果を英訳するなどの仕事をしていました。コロナ禍だったため、仕事は完全にリモートワーク。激務で8時から25時くらいまで、パソコンの前から動かない生活をしていました。
妊活を始めて半年ほどは仕事をしていましたが、妊活のことを真剣に考えられる状況ではなかったと思います。それまでは仕事を最優先に生きてきて、妊活をする・しないという以前に、とにかく仕事が忙しすぎました。そして、仕事をセーブできるような環境でもなかったため、休職を経て退職。このまま仕事を続けていたら、メンタルをやられてしまう……そうと思ったくらい、追い込まれていたように思います。
ストレスになるものを排除して、しばらくゆっくり過ごしたい。切実にそう思いました。とはいえ、仕事を辞めたら辞めたで、語学勉強をしたくなって始めてしまいましたが、意識して「何もしない日」をつくり、心も体も休めるよう気をつけました。それまでの私は休むことに罪悪感を感じてしまうタイプだったのですが、今は休んでいいんだと、自分に言い聞かせて乗り越えました。
また、不規則な生活やストレスによってホルモンバランスがくずれることを知ったので、なるべくストレスをためない生活を心がけました。それもよかったのかもしれません。
「妊娠できないかも」という不安
自分よりもしんどい思いをして、お金も時間もかけて不妊治療している人はたくさんいると思います。それでも妊活は、自分にとって人生でいちばんしんどかった時期でした。
生理不順の治療中、何ヶ月も続けている基礎体温が正常なのか、そうでないのかがわからなくて、悩んだこともあります。排卵検査薬を使ってみたら、毎回、陽性になっているように見えて、いったい何が正しいのかわからなくなったり。
妊活していることを夫以外の人には話していなかったため、ひとりで抱え込むことが多く、精神的につらかったです。長くて暗いトンネルの中にいる気分でした。心のどこかで「まだ30代前半だから大丈夫」と思う反面、このまま時間だけが過ぎ去り、あっという間に年をとって、どんどん妊娠しにくくなるかもしれない。もう妊娠できないかもしれない。そんなふうに思うこともあって、不安でした。
私のリクエストを100%受け入れてくれた夫
夫に言われてうれしかったことは、「もし子どもができなくても、2人で仲よく暮らしていけばいいよ」。その言葉を聞いて、少しだけプレッシャーから解放されました。
夫とは妊活中にケンカすることもありませんでした。夫はブライダルチェックをした際に、やや精子の数が少なく、運動率もやや低いと指摘されたようです。が、1ヶ月後に診てもらったときは問題なし。そのときの体調によるのかもしれません。
ブライダルチェックを嫌がる男性はけっこう多いと思っていたのですが、夫はすんなり受けてくれ、私の体のことを気づかってくれ、協力的だったと思います。自分から積極的に情報を探して実行するほどではありませんでしたが、私が「こうして欲しい」と言ったことは、嫌な顔をせずやってくれました。
ベビちゃんは新居に引っ越す日を待っていた?

妊娠が判明した日に見上げた、きれいな青空。ずっと忘れない。私たちの赤ちゃんは引っ越す日を待っていたのかな、と思いました。
私たち夫婦の場合、通院せず成り行きにまかせていたら、妊娠・出産はできていなかったかもしれません。
ひどい冷え性で、真夏でもおなかとおしりが冷え冷えだったので、温かいものを飲んだり、薄着をしないようにしたり、血行をよくするためのストレッチをしたりしていました。健康に気をつかうようになって、早寝早起きをしました。水を1日2リットル飲んで、腸活もしました。
住まいが古い、狭い、日当たりが悪い、うるさいところだったので、引っ越しもしています。妊娠が判明したのは、入居したその日でした! 私はひとりで新居に行き、夫や引っ越し業者が到着するのを待っていたのですが、異様にだるくて、がらんとした部屋に寝転がっていました。
そのときに窓から見えたきれいな青空が、今でも忘れられません。「赤ちゃんは親を選んで生まれてくる」というような迷信には興味がなかったのですが、私たちの赤ちゃんはきれいな家に引っ越すのを待っていたのかな、と思いました。
※あくまで個人の体験です。治療や薬の処方などに関しては必ず医師に相談してください。
取材・文/小山まゆみ
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