ワクチン接種の専門医に聞く!妊活中だからこそ知っておきたい「先天性風疹症候群」について
妊娠を意識し、カップルが自分たちの体の状態を整えて、赤ちゃんを授かる準備をする「プレコンセプションケア」。その中には、あらかじめワクチンを接種して病気を予防することも含まれます。
妊娠中に感染症にかかると流産や早産のリスクが高くなったり、生まれたあとに赤ちゃんにも障がいが残り、最悪の場合亡くなってしまうこともあります。だからこそ、妊活中から正しく知っておきましょう。
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ワクチン接種をすることはママと赤ちゃんを守ること
感染症の中でも、ワクチン接種で予防できる病気のことを「VPD:Vaccine Preventable Disease」といいます。
実は、ワクチン接種で予防できる感染症は20~30くらいしかありません。そのうち、妊婦や胎児に重要なVPDは6~7に限られます。妊娠を希望する方やその家族は、あらかじめこれらのワクチン接種を受けることが大切です。
その理由は2つあります。
1つ目は、妊娠中に感染症にかかると母子ともに重症化しやすく、胎児にも奇形などが起こる可能性がありますが、VPDはワクチン接種さえすれば防げる可能性が非常に高いからです。
妊娠前にワクチン接種をするべき2つ目の理由は、妊娠してからでは接種できない生ワクチンが、含まれているためです。
代表的なワクチンは、弱毒化した生きたウイルスが入っている「生ワクチン」と、毒性を完全になくして免疫をつけるために必要な成分のみにした「不活化ワクチン」の2種類に分類されます。
妊娠中に予防したいVPDの生ワクチンは、風疹(三日ばしか)、麻疹(はしか)、水痘(水ぼうそう)、ムンプス(おたふくかぜ)の4つで、それぞれ生涯で計2回接種が必要です。妊娠中には接種できないため、妊娠する前に必要な回数のワクチン接種を計画的にすませておく必要があるのです。
先天性風疹症候群になると赤ちゃんに障がいが出たり、死亡することも
では、あらかじめ免疫をつけておきたい感染症に妊娠中にかかってしまうと、具体的にどのような影響が出るのでしょうか。最も気をつけたいのは、「先天性風疹症候群」(CRS:Congenital Rubella Syndrome、以下CRSと表記)です。
CRSは風疹(三日ばしか)の免疫をもっていない妊婦さんが妊娠中に感染することで胎児にも感染し、赤ちゃんが難聴や白内障、先天性心疾患などをもって生まれてくるものです。妊娠6週までに感染した場合は100%、16週までに感染した場合は最大50%の確率で胎児にも感染します。
日本で2012~2013年に風疹が大流行し、約17,000人の風疹患者が報告されました。その際、45人の赤ちゃんがCRSで障がいをもって生まれ、約1/4が生後間もなく亡くなってしまいました。2018~2019年にも約5,000人の風疹が報告され、その流行に伴い5人のCRSの赤ちゃんが確認されています。
風疹はワクチンを2回接種していれば、感染することはほとんどありません。世の中で風疹が流行しないようにみんながワクチンで予防することが、お母さんと赤ちゃんを守るために最も大切なことなのです。
男性も接種を確認しましょう
今の子どもたちは1~6歳までの間に、2回の麻疹・風疹混合ワクチンを接種しています。しかし、大人の場合、年齢によっては、当時の予防接種制度の影響で小児期にワクチンの接種回数が不足していたリ、そもそもクチンを接種する機会がなかった年代もあります。
たとえば「1979(昭和54)年4月1日までに生まれた男性」や「1962(昭和37)年4月1日までに生まれた女性」は小児期にワクチン接種を受けていませんし、「1990(平成2)年4月1日までに生まれた男女」は、小児期にワクチン接種を1回しか受けていない年代です。
2012~2013年の流行時には、感染者の60%以上が30~50代の、上記の年代に相当する男性でした。男性が感染すると、家庭内で妻に感染させるだけでなく、職場で流行することで、間接的に妊娠可能な年齢の女性が感染する可能性が高くなるのです。
国では2019年度から40~50代の男性を対象に「風疹第5期定期接種制度」を実施していて、無料で風疹ワクチンを接種することができますが、クーポン券が家庭に送付されてきても、あけないままだったり、あけても忘れてしまったりしている可能性もあるかもしれません。
また、多くの自治体で、女性だけでなく、男性に対しても無料(または安価)でワクチン接種ができる制度があリます。生まれてくる赤ちゃんをCRSから守るため、女性も男性もワクチン接種を受けていなかったり、回数が不足していたり、また接種歴がわからない場合も、積極的にワクチンを接種して予防しましょう。
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日本内科学会認定医、総合内科専門医、日本プライマリケア連合学ム認疋家庭医療専門医・指導医、CertificateinTravelHealthTM(ISTM.国際渡航医学認定医)。2004年岡山大学医学部卒業。兵庫県立尼崎病院にて初期研修医、亀田総合病院総合診療・感染症科で後期研修医ののち、神戸大学医学部附属病院感染症内科を経て、11年亀田ファミリークリニック館山家庭診療科フェロー、15年より家庭診療科医長、17年より現職。3人の子の母でもあり、「自分の家族だったらどうするか」を常に考えて診察にあたっている。
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