野田聖子(衆議院議員)さん「国自体が不妊化している!?〜不妊治療、がん検診、女性の働き方の“いま”を語る」 石塚文平先生(不妊治療専門医)スペシャル対談①
約10年前・米国での卵子提供を受け、母として、政治家として活躍なさる衆議院議員・野田聖子さんと、早期卵巣不全の第一人者・ローズレディースクリニック院長 石塚文平先生のスペシャル対談が実現しました。
お二人が考える、そして感じる、女性の“いま”の問題点について、それぞれの視点を交えた貴重な意見交換の現場から、妊活メディア『赤ちゃんが欲しい(あかほし)』編集部がレポートします。
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野田聖子さんプロフィール
1960(昭和35)年、福岡県生まれ。上智大学卒業後、帝国ホテルに入社。1987年、岐阜県議会議員。1993(平成5)年、衆議院議員初当選。1998年に戦後最年少(当時)として郵政大臣に就任、その後、消費者行政推進担当大臣、自由民主党総務会長、総務大臣、女性活躍担当大臣、衆議院予算委員長等を歴任、現在は内閣府特命大臣(地方創生・少子化対策・男女共同参画)、女性活躍担当大臣、子ども政策担当大臣、孤独・孤立対策担当大臣。米国での卵子提供を経て、男の子を出産。1児の母。真輝くんとの日常をつづったブログ「ヒメコミュ」。
石塚文平先生プロフィール
昭和大学医学部卒業、慶應義塾大学産婦人科、カリフォルニア大学留学を経て、聖マリアンナ医科大学産婦人科教授、同大学生殖医療センター長、同大学高度生殖医療技術開発講座特任教授を歴任、平成26年に同大学名誉教授、同年ローズレディースクリニック院長(東京都世田谷区)に就任。早発卵巣不全の研究と治療に長年取り組み、日本全国から患者が訪れている。妊活メディア『赤ちゃんが欲しい(あかほし)』で連載中。
子宮頸がんワクチンが普及していないという問題
石塚 野田先生には、以前学会にいらしていただいたときに、お目にかかっていますね。息子さんは、もう小学生ですか?
野田 5年生(10歳)です。最近は難しい年ごろの入り口というか、ちょっとかわいくない(笑)。パパや他の人がいると、私のことを「おばさん」とか言ってきて、でも2人きりになると「おっぱい~」なんて甘えてくる。ツンデレにだまされて喜んじゃうんです。そういうことを全部ひっくるめて、やっぱり比べるものがないくらい、かわいいです(笑)。
石塚 うちにも息子がいますが、まあ、男は中学校くらいまでは、それなりに大変です。でも、男の子は基本的に、母親にはやさしいですね。とくに、一皮むけて大人になると。
野田 ところで、石塚先生は不妊治療専門クリニックの院長でいらっしゃるので、まずお伝えしたかったのですが、私は不妊治療の応援と同時に、乳がんと子宮頸がんの検診をすすめる議員連盟の会長もさせていただいますが、がんにかかる前の予防がとても大事だと思っているんです。
子宮頚がんワクチンも、これまでほとんど普及していないという現実があるので、これをぜひ何とかしたいと考えています。
石塚 今回の新型コロナウイルスで、一般の方のワクチンに対する意識は、少し変わってきたのではないでしょうか。
野田 コロナのワクチン接種は進んできましたが、ワクチン接種をためらうことで、不利になることがあるように、いくら不妊治療が進歩しても、子宮がんで命を落としてしまっては、治療をした意味がないことになってしまいます。
石塚 若い方ががんになってしまった場合、治療前に卵子や精子を凍結保存して、将来の妊娠の可能性を残す「がん生殖医療」に産科婦人科学会でも力を入れていこうとしています。
でも、まだまだ啓蒙が足りないというか、がん治療医にも、一般の婦人科医にも、知識がいきわたっていません。
野田 必ず出てくるんですよ、「不妊治療と命と、どっちが大切なんだ!」という意見が。でも、せっかくがんが治っても、愛する人の子どもが持てないとしたら、とてもつらい。少しでも子どもを産める可能性があるなら、そういう医療があるということを知っておいていただきたいですね。
石塚 最近ですが、悪性リンパ腫が再発した方が、「2度目のがん治療の前に卵巣を凍結したい」と、私のクリニックにいらしたんです。
でも、倫理規定上、再発の場合、卵巣の凍結はむずかしい。幸いがんの主治医の先生に理解があり、いま治療を1ヶ月待っていただいて、その間に排卵誘発をして、卵子を採ろうとしています。
野田 まさに運ですよね。知識のある医師に出会えるかどうかで、人生が変わってしまう。
石塚 その方も、実際の妊娠の可能性がとても低いことはわかっていらっしゃる。でも、希望がつなげるだけでもいいんです、と。
だれでも堂々と不妊治療を受けられる時代へ
野田 子どもを欲しいと願う人が、誰でも堂々と不妊治療を受けられるように、と思ってがんばっているんですが、日本って、国自体が不妊化していますよね。子どもを産むのに不利なことが多すぎる。私自身、子どもがいて損だと感じてしまう場面がいっぱいあります。
石塚 身近な問題としては、男性の育児参加ももっと進めなくてはいけません。でも、一方で、みんなが子育てをするようになったら、社会の効率というか、生産性は落ちませんか?
野田 子どもが増えることで、消費が増え、経済は活性化していきます。それに最近思うんですが、コロナ禍で男性の働き方も変わってきましたよね。
大企業が中心ですがテレワークをする企業が増えましたが、それでも業績が伸びているところはあります。どうしても対面が必要な業種はありますが、会社に出勤して働くことが当然だった時代は終わりつつあるのではないでしょうか。
石塚 確かに、私が医者になったころは、とにかく病院にずっと泊まり込んで、たむろして(笑)、それが当たり前でした。先輩方から「早く家になんて帰るな」と言われ。社会一般がそうでしたね。
テレワーク化でママでも外交がスムーズに
野田 テレワークをするようになって、私にとって一番恩恵があったのは、外交の分野です。これまで子どもがいる女性は、子どもを家に置いて海外出張に行くのはちょっとためらっていましたよね。
でも、オンラインなら、向こうは夜で、私は朝でも、会議が成立する。1年間で諸外国の方々とかなりのやりとりができました。これはジェンダーギャップが解消したなと感じています。
石塚 オンラインだと、むしろ親近感が増すところはありますね。私も初診をオンラインで行うと、そのあと患者さんとのやりとりが案外スムーズなときがあります。
野田 そうですよね。私も先日、初めて地元岐阜のメンバー20人位とオンライン飲み会に参加してみたのですが、みんな普段着で、普通のおじさん、おばさん(笑)。スーツを着て話す時とは違って、とっても気楽。一気にお互いの距離が縮まったなと感じました。
石塚 画面の中の世界と現実の境が、曖昧になっていく感じでしょうか。
野田 もうひとつ、オンラインならではの不意打ちというか、想定外の出来事がありますよね。会議の最中に子どもが入ってくることなんて、職場ではありえないことだけれど、オンラインなら自然なこと。子どもがいることと仕事を分けなくてもいい環境って、いいなと思います。テレワークという働き方は男性主体の職場を壊す、いい機会です(笑)。
石塚 テレワークが普及したことで、不妊治療を受ける方はふえているようです。毎日夫婦で家にいるので、話をする機会もふえましたから。ただ、出生率は上がっていませんが…。
野田 おなかの中の子は自分の命以上に大切ですから、このコロナ禍の中で、何かあったらと思うと、妊活をためらってしまうのかもしれませんね。
石塚 野田先生も体外受精、卵子提供と不妊治療経験者ですが、当時と今とで違いを感じられますか?
次回へ続く
>>スペシャル対談②「不妊治療の“高齢化”と卵子提供でうまれた子のその後について」
取材・文/山岡京子
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