2ページ目(2ページ中) | 女性ホルモンの一つ「プロゲステロン」って知ってる?量が足りないと妊娠しにくい?【医師監修】
プロゲステロンの値は時期や時間によって変化する
プロゲステロンは常に分泌されていますが、その基準値は月経周期により異なります。卵胞が育っている時期には0.1ng/ml程度、排卵後の黄体期には10~20ng/ml程度と、いつ測定するかによってたいへん大きな差があるのです。
不妊治療でプロゲステロンの値を調べる場合は、排卵1週間後あたりに検査をします。黄体機能不全の目安になるのは、この時期のプロゲステロンの値が10ng/ml以下であることです。
ただし困ったことに、プロゲステロンの値は一日の中でも大きく変化します。最小時と最大時では6倍ぐらい違うこともあります。ですから、プロゲステロンの値だけを見て黄体機能不全と即断するのは難しい場合もあります。
黄体機能不全と判断されればもちろん治療を行いますが、なかにはあまり治療の効果が見られないケースがあります。基準値から大きくはずれていないプロゲステロンの値をどう評価するかは、不妊治療の成否を分ける鍵のひとつかもしれません。
黄体機能不全の治療はどうするの?
黄体機能不全の治療は、薬によるコントロールがメインです。そのやり方は大きく2つあります。いずれも、最終的には子宮内膜を着床に適した状態に維持していくという点については目的は同じです。
従来は、タイミング法、人工授精などでプロゲステロンの値が低いだけのケースでよく用いられてきましたが、最近の検討ではこうした治療は妊娠率を上げる効果はないことが分かってきているため、あまり意味がないと考えられるようになってきています。
一方で体外受精の場合は必ず黄体機能不全になるので、いずれかの治療を行う必要があります。
治療その1.
黄体に活を入れる・黄体賦活化療法
あまり働きのよくない黄体に、「しっかり働いてね!」といわばムチを入れる療法です。これを黄体賦活化療法(おうたい ふかつか りょうほう)と言います。
排卵のある人は黄体ができているはずなので、黄体賦活化療法を選択する場合があります。具体的には、黄体からのプロゲステロンの産生を促進するHCGというホルモン剤を注射します。
治療その2.
プロゲステロン(黄体ホルモン)を補充する・黄体補充療法
排卵が確認できず黄体ができていない可能性のある人などには、黄体補充療法が行われます。
黄体ホルモンを体の外から補充してやる方法です。
●飲み薬
錠剤で黄体ホルモンを補います。
手軽に使えるのですが、より自然に働く天然型のものは吸収効率が悪いのが欠点です。
●注射
天然型のものは毎日打つ必要があり、また非常に痛いのであまり使われません。
一般的に使われるのは人工型のものです。
●膣座薬
天然型のものが発売されており、使いやすく効果も高いものです。
薬の投与は妊娠反応が出るまで
プロゲステロンの働きが弱くて黄体機能不全と診断された場合、妊娠反応が出るまでは薬を投与します。妊娠反応が出れば、以後は胎盤からプロゲステロンが分泌されるので薬の投与はやめてもいいのですが、大事をとって胎嚢(胎児を包む袋のようなもの)がエコーで確認されるまでは投与を続けることも多いです。
市販のプロゲステロンクリームの効果は?
プロゲステロンを配合した、「プロゲステロンクリーム」というものが市販されています。腕などにクリームを塗るだけなので薬よりも手軽ですが、これは、主に更年期の女性向けの商品です。
天然のプロゲステロンは、そのままでは皮膚から吸収されません。皮膚を通してプロゲステロンを体に届けるためには、なんらかの人工的な誘導剤を使用する必要があります。それが胎児にどのような影響を及ぼすのか、はっきりとはわかっていません。どうしても使いたい場合は、医師によく相談してください。
プロゲステロンの数値を高める生活習慣
睡眠時間や睡眠の質、特定の食品、飲酒、ストレス……さまざまなことが言われていますが、プロゲステロンの量と因果関係が認められる生活習慣はありません。
妊活の基本は「規則正しい生活リズムでバランスのよい食事をとり、体を冷やさず過度なストレスをためないこと」ですが、それを実践したからといってプロゲステロンの値がグンと跳ね上がるわけではありません。
逆に、「生活リズムが不規則だからプロゲステロンの量が少ないんだ」と自己嫌悪に陥る必要もありません。極端な健康法に走ったり、思い詰めたりしないでくださいね。
ただし、たばこはNG。プロゲステロンの量には関係ありませんが、遺伝子レベルで悪影響を及ぼします。妊活を機に、ぜひきっぱり禁煙してください。
まとめ
プロゲステロン(黄体ホルモン)は妊娠に関わるホルモン。他のホルモンと微妙なバランスを保ちながら、生殖機能を担っています。不妊治療をすすめるにあたり、自分とパートナーの体について知ることは大前提となります。専門医に相談しながら、現状を把握し、治療法を見きわめていきたいですね。
取材・文/中根佳律子
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