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胚移植後に注意!妊娠率を上げるために避けるべきNG行動とは【医師監修】

2024/03/31 公開

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体外受精や顕微授精でできた受精卵(胚)を子宮に戻す胚移植を受けた後、妊娠が成立するまで、どんな生活をすればよいのでしょうか?その間に、してはいけないことって何?国内での不妊治療の黎明期から、生殖医療専門医としての経験を重ね、これまで1万1千例を超える妊娠例を手がけている山下正紀先生が、こまやかに、本音で教えてくれました。

体外受精の胚移植って?

「体外受精」「顕微授精」では、本来女性の卵管内で行われる精子と卵子の出合い(受精)が、医療の手助けによって、体外で行われます。そうしてできた受精卵(胚)を子宮に戻すのが、胚移植です。

・初期胚移植と胚盤胞(はいばんほう)移植

受精から2~3日経ち、細胞が4~8細胞に分割した状態の初期胚を移植するのが「初期胚移植」、さらに培養をつづけて、受精後5日目ころに着床前の状態に育った胚盤胞を移植するのが「胚盤胞移植」です。

不妊治療が保険診療になって以降に起きた変化の1つに、できるだけ妊娠の可能性の高い胚盤胞まで培養するということがあります。というのも、できた受精卵を凍結した場合、そのすべてを移植し終えないと、保険では次の採卵ができません。

保険で受けられる移植の回数には上限(40歳未満で6回、43歳未満で3回)があるので、妊娠の可能性の低い胚でもとりあえず凍結しておくというのは、得策ではありません。そのため、初期胚移植はあまり行われなくなっています。また、たとえ胚盤胞になっても、グレード(質)の低い胚は凍結しないという方針のクリニックもふえています。

関連記事:体外受精、保険適用の治療回数の数え方がわからない!採卵は何回まで?

・新鮮胚移植と凍結融解胚移植

採卵した周期に移植するのが「新鮮胚移植」、培養した受精卵をいったん凍結保存し、次周期以降に子宮内膜の状態を整えてから融解して移植するのが「凍結胚移植」です。日本産科婦人科学会の最新データ(2021年)を見ても、凍結胚移植が約88%。妊娠が成立したケースでは、凍結胚移植が約93%と圧倒的に多くなっています。

・凍結胚移植の際の2つの方法

凍結胚移植を行うときには、ご本人の自然な排卵を待ち、排卵時期を特定して行う「排卵周期」と、ホルモン剤の使用で子宮内膜をつくる「ホルモン補充周期」があります。排卵周期を行うには、排卵があり子宮内膜が7mm以上あるなどの条件が整うことが必要です。

また排卵日を特定するために通院の回数が増えます。ホルモン補充周期では、薬によって子宮内膜を育てるため、移植日の調整がしやすく、通院と仕事との両立という点で有利な方法です。なおホルモン補充周期で移植し妊娠が成立した場合は、妊娠9週頃まで、ホルモン補充が必要となります。

・胚移植後の妊娠判定は

初期胚移植では移植後3~5日後、胚盤胞移植であれば、移植後1~2日以内に着床すると考えられますが、妊娠判定は移植後2週間がめどになります。胚が着床すると、のちに胎盤になる組織(絨毛)からhCGというホルモンが分泌されるので、血液検査や尿検査でその量を調べます。

保険適用以前は移植後1週間程度の早期にhCGの血液検査をすることもありましたが、保険ではこの検査は1回のみとなっているので、より確実な2週間後に行います。この時点なら、尿検査でも十分に妊娠の判定が可能です。

なお、妊娠判定で陽性となっても、ごくごく初期の流産や異常妊娠の可能性もあり、妊娠が確定となるのは、超音波検査で子宮内に胎児の入っている袋(胎嚢)が確認できた時点になります。

胚移植後に起こる症状は?

多数の卵子を得るために、注射などで強い卵巣刺激を行うと、投与した排卵誘発剤の影響で卵巣が腫れたり、お腹に水がたまったりするなどの症状が出ることがあります。これは卵巣過剰刺激症候群(OHSS)と言われるものですが、採卵周期に胚を戻す新鮮胚移植では、着床後に大量のhCGが分泌されるので、これらの症状が長引いたり強くなったりすることがあり、注意が必要です。新鮮胚移植後におなかの張りや痛み、吐き気などが出たら、すぐに医師の診察を受けましょう。

凍結胚移植では、腹痛やお腹の張りなどが出ることはまずありません。まれに子宮頸管が曲がっているなどの移植がむずかしいケースで、カテーテルを入れるときに頸管に傷がつき、少量の出血をみることがありますが、1~2日でおさまり、そのことが妊娠の成立に影響することはありません。

関連記事:卵巣過剰刺激症候群(OHSS)って?体験談も

胚移植後にしてはいけないこと

胚移植後の生活で気をつけるべきことが書かれているネット記事はたくさんありますが、見るとどれも示し合わせたのではないかと思われるほど、同じことが出ています。

患者さんからよく受ける質問を挙げてみましょう。

・安静は必要ですか?
・性交渉は大丈夫ですか?
・運動はNGですか?
・食べてはいけないものはありますか?
・お腹に力の入る仕事や立ちっぱなしの仕事は休んだほうがいいですか?
・入浴はOKですか?温泉に入っても大丈夫ですか?
・お腹を(カイロなどで)温めたほうがいいでしょうか?
・自動車や自転車の運転はしてもいいですか?
などなど。

もちろん、患者さんにしてみれば、時間とお金をかけて治療を受けた妊活の最終段階で、いろいろと不安になるのは当然です。とくに神経質なタイプの方は、こまかいことまで心配されますが、結論から言ってしまうと、大抵のことでは、着床やその後の妊娠継続に影響することはないだろうということです。

体外受精が始まった当時、採卵は腹腔鏡で行われ、入院が必須でした。その後も移植を含め、ずっとベッドで安静にしていました。しかし、80年代の後半から外来でできる経腟による採卵が広がり、移植後に安静にしても、普通に生活しても、妊娠率は変わらないというデータが続々と出てきて、いまの「安静は必要ない」という形に落ち着いています。

そもそも、自然の妊娠では、来るはずの生理が来なくて初めて「あれ? 妊娠?」と思うケースも多く、排卵から着床前後の時期に、意識して行動を制限したりはしません。多くの人が何も気にせずにふだん通りの生活をつづけているはずです。人類はそうして子孫をつないできました。体外受精や顕微授精でも、着床すれば、その後の経過は自然妊娠と何も変わらないのです。

ただし、移植当日だけは、万一の感染を避ける意味で、浴槽への入浴はせず、シャワーにすることをお願いしています。移植当日にわざわざスイミングに行ったり、温泉に入る方は少ないと思いますが、これらも念のため控えておきましょう。

妊娠を妨げるNG生活習慣

胚移植後に限定したことではありませんが、なによりNGな生活習慣は喫煙です。

喫煙は妊娠率を低下させ、流早産を起こしたり、胎児の発育を妨げるなど、よいことは一つもありません。夫の喫煙による受動喫煙も、妊娠出産に悪影響があることが明らかになっています。妊娠を望んだ時点で、ご夫婦そろって禁煙しましょう。

飲酒には、喫煙ほど明らかな妊娠への影響はないとされていますが、飲みすぎはやはり禁物です。女性は男性にくらべ、アルコールを分解する能力が低いため、酔いやすく、酔いが醒めるまで時間がかかることが知られています。お酒にはリラックス効果もあり、完全にやめることがむしろストレスになる人もいるでしょうが、妊活中も妊娠中も、赤ちゃんへの影響を考え、できるだけ控えるようにしましょう。

カフェインは、妊娠中に1日300mgを超えて日常的に摂取すると、流産や赤ちゃんの低体重を招くことがあるとの報告がありますが、200mg以下(1日にコーヒーをマグカップ1~2杯程度)であれば、その心配はないとされています。

NGではなく、その逆に、妊娠を考えたときから意識して積極的に摂取したいのが、葉酸とビタミンDです。葉酸は赤ちゃんの細胞を作るのに欠かせない栄養素で、不足すると先天性の障害(神経管閉鎖障害)が出ることがあります。ほうれんそうやブロッコリーなど緑色の野菜やいちご、アボカド、納豆などに多く含まれていますが、妊活中や妊娠初期に必要とされる量を、食事のみからとるのはむずかしいので、サプリメントでの摂取が推奨されています。

ビタミンDは卵巣機能を向上させ、体外受精での妊娠率を上げることにも関わっていることが最近の研究で明らかになってきました。

実際に不妊で悩む方の血液中のビタミンD濃度を調べると、不足しているかたが多いのです。ビタミンDは日光を浴びることで形成され、多く含まれている食品は鮭やいわしなどの魚類、きのこ類、卵などですが、必要量を摂取するには、やはりサプリメントを利用するとよいでしょう。

胚移植後の不安を解決するために

胚移植後も、特別なことはなく、ふだん通りの日常生活でよいのは大前提ですが、私自身は、「これをしてもいいのかな?こんなことは大丈夫かな?と迷うことがあったら、その行動をしなくてすむなら、やめておきましょう」と、患者さんにはお話ししています。

なぜなら、治療を受けても残念ながら妊娠できなかったという場合に、「あのときに、あのことをしなかったらよかった」という後悔が、できるだけ残らないようにしてほしいからです。流産でも同じことが言えますが、そうした結果は運命であり、ご本人の努力ではどうにもならないことです。

それなのに、自分を責め続けたり、悲しい気持ちが増幅されて、いつまでもマイナスの感情が尾を引くのは、今後にとって決して望ましいことではありません。

着床期にコンドームなしに夫婦生活をすると、子宮が収縮したり、子宮内に精子が入ることで、着床した受精卵に何か影響があるのでは?と心配される患者さんもいます。そのようなことはないのですが、不安があるなら、心の安定のために、移植後数日間は性生活や過度の運動を控えて、少しおとなしめの生活を心がけるとよいでしょう。

移植後から妊娠判定まで、なるべくストレスをなくして、と口で言うのは簡単ですが、それがむずかしいのです。何がストレスになるかは、暮らし方や性格にもよります。よく、「ネットサーフィンでよけいな情報にふれるのはリラックスできなくなる原因の一つなのでやめましょう」などと言われがちです。でも日ごろからネットであれこれ検索するのが好きな人に、それをやめろと言ったところで、かえってストレスになるかもしれません。

なお、移植後に基礎体温を測りつづける意味はほとんどありません。数字の上下に心配がつのるだけなので、やめておきましょう。

2週間、待つしかないのはつらいものです。それはご夫婦どちらにも共通ですが、自分の体の中で起こる変化に過敏にならざるをえない女性のほうが、やはり気持ちの負担は大きいはず。そこでこそ、夫の精神的な支えが重要です。妻の様子を気遣い、不安は受け止めたうえで、明るく「大丈夫だよ」と言ってあげてください。できるだけ気を紛らわせる楽しい時間を共有してください。

そして、もしもあれこれ心配や不安を感じたり、迷うことが出てきたら、とにかく担当医に相談するのがいちばんです。医師に聞くのは敷居が高いというなら、お世話になっている顔なじみの看護師さんや培養士さんでもかまいません。プロであるクリニックのスタッフに遠慮なく聞きましょう。こんな質問をしたらいやがられるのでは、とか、恥ずかしいなどと思う必要はありません。クリニックは治療の主役である患者さんのために存在しているのですから。

取材・文/山岡京子 構成まとめ/狩野啓子


この記事の監修は…「山下レディースクリニック」山下正紀 院長

住所:兵庫県神戸市中央区磯上通7-1-8 三宮プラザWEST4F

アクセス:
JR・阪神・阪急「三宮」駅より徒歩5分(さんちかを通り国際会館よりすぐ)
地下鉄海岸線 「三宮・花時計前」駅(3番出口よりすぐ)
電話:078-265-6475
HP:https://www.ylc.jp/

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3. クリニックに行く/問診票に記入
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4. 先生によるヒアリング
事前に記入した問診票を見ながら、医師と直接話す問診タイム。日ごろから気になっていることなどはここで質問を。過去の病歴や、流産・中絶経験などもつつみかくさず正直に答えることが重要です。

5. 内診&超音波検査
外陰部の視診や触診、腟鏡を使って腟内の状態確認を内診台の上で行います。外側からは見ることができない子宮や卵巣の内部は超音波で検査します。不妊治療における超音波検査は、内科の聴診と同様の位置づけだと考えましょう。

6. 血液検査&尿検査
血液検査と尿検査は、ほとんどのクリニックで初診の時に行われます。不妊の原因になる疾患が見つかればその治療が優先されるので、初診で調べるのが基本。

7. 会計・次回の予約
ひととおり検査が終了したら待合室に戻ります。その後、会計をすませて初診の検査は終了。検査結果が出るスケジュールを聞いて次回の予約をします。初診時の多くの検査は保険が適用されますが、保険適用の有無は確認しておくと安心です。

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監修
監修

山下レディースクリニック院長。
1980年奈良県立医科大学を卒業し、京都大学産婦人科に入局。舞鶴市民病院産婦人科医長に着任。86年オーストラリア・アデレード大学で体外受精の基礎から研鑚を積む。90年神戸中央市民病院に着任。産婦人科医長、体外受精チーフとして数多くの患者さんの治療にあたる。97年神戸三宮に山下レディースクリニックを開設。これまでに約10,000 人の妊娠をサポート。著書『最新! 不妊治療ナビ』(主婦の友社)が好評。日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医。日本生殖医学会認定生殖医療専門医。

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