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不妊治療・妊活のクリニック探し・情報収集ならあかほし 基礎知識 子宮腺筋症の原因や治療法とは?薬で治る?妊娠はできる?【不妊治療専門医監修】

子宮腺筋症の原因や治療法とは?薬で治る?妊娠はできる?【不妊治療専門医監修】

2019/10/17 公開
2023/05/01 更新

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「生理痛がひどい」「出血量が多い、だんだんふえてきた」などという場合に考えられる病気のひとつが子宮腺筋症です。どんな病気? 妊娠への影響は? 治療法は?などの疑問に、全国でも数少ない子宮腺筋症の専門外来を立ち上げ、診療・治療にあたられている東京大学医学部附属病院の廣田泰先生に伺いました。

子宮腺筋症とは?子宮内膜症とは違う病気なの?

子宮内膜は受精卵を受け止めるベッドの役割を果たしています。内膜はホルモンの作用によって、排卵期に向けて厚くなっていきますが、妊娠が成立しないと、はがれて血液とともに体外に排出されます。これが月経です。

この子宮内膜に似た組織が子宮の筋層の中にできるのが子宮腺筋症です。同じような病気に子宮内膜症がありますが、子宮内膜症では内膜に似た組織は子宮の外、卵巣や腹膜などにできます。以前は同じ病気として扱われていましたが、薬による治療への反応が異なることなどから、独立した病気として子宮腺筋症と名づけられました。名称は新しくても、以前からある病気です。

なぜ、子宮筋層に、内膜に似た組織が入り込むのか、その原因はまだ明らかではありません。30代後半から50代の出産経験のある人に多いとされてきましたが、妊娠したことのない若い世代でも発症することはあり、婦人科系の病気の中では決して少なくないものです。子宮筋腫や子宮内膜症と合併することもよくあります。


 正常な子宮と子宮腺筋症の子宮/画像:東京大学医学部附属病院

子宮腺筋症の症状は?

子宮腺筋症の症状には、以下のようなものがあります。

過多月経、強い月経痛、月経時以外の不正出血、腰痛・骨盤痛貧血

子宮腺筋症の組織は、子宮内膜と同じように、月経のたびに厚くなり、はがれ落ちることを繰り返すので、だんだん子宮が大きくなり、月経量が増加し、月経痛も強くなります。月経時以外の不正出血や腰痛、骨盤痛が起きることもあります。炎症が子宮筋層の周囲に広がっていくと、さらに出血量もふえ、その影響で貧血にもなりやすいのです。

がんなどの悪性腫瘍とは異なり、良性の病気ですが、女性ホルモンの刺激で症状が悪化するので、治療しなければ閉経まではひどくなる過多月経や月経痛に悩まされることになります。

痛みや出血量は自分しかわからないので、体質だと思い、市販の鎮痛薬などでがまんしてやり過ごす人も多いのですが、月経のたびに仕事や家事などの日常生活に影響が出ているときや、特に妊娠を希望しているかたは、早めに婦人科を受診したほうがよいでしょう。

子宮腺筋症だと妊娠しにくいの?

子宮腺筋症と診断された人では、子宮の筋肉が固くなり、収縮のバランスが悪くなるため、妊娠しにくかったり、また妊娠しても流早産を起こしやすいという傾向があります。「ただ、子宮腺筋症があるからといって、必ずしも妊娠しにくいとは限りません」(廣田先生)。 子宮腺筋症があっても、本来の子宮の働きが正常であれば、妊娠は可能です。また、すぐに妊娠の希望がなくても症状が強い場合には、 薬の治療で子宮腺筋症の悪化を止められる場合もありますので、 我慢せず早めに婦人科で相談してください。

子宮腺筋症ではどんな検査をする?

子宮腺筋症が疑われる場合、以下のような検査を行います。

内診 超音波断層法検査(エコー検査) 血液検査 MRI検査

内診や経腟の超音波検査で、子宮の大きさや腫れ、痛み、内膜の状態などを観察します。血液検査では、子宮内膜症や子宮腺筋症があるとふえるCA125という物質の値を調べます。

また、子宮腺筋症の確定診断には、MRI検査が欠かせません。子宮筋腫では子宮の内側に良性のコブのような固まりができますが、正常な筋層と病気の部分の境界線ははっきりしています。

それにくらべて「子宮腺筋症の組織は、子宮筋層の中に、たとえはよくないかもしれませんが、霜降り肉のような状態で広がっていますから」(廣田先生)、子宮筋腫と区別するために、また内膜症との合併があるかどうかを調べるために、MRI検査での画像診断が必要なのです。

子宮腺筋症の薬による治療

子宮腺筋症の治療には、主に以下のような薬が使われます。

鎮痛剤(内服薬)、GnRHアゴニスト(注射薬、点鼻薬)、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤(内服薬)、ジエノゲスト(内服薬)、子宮内黄体ホルモン放出システム

痛みに対しては鎮痛剤を、月経過多の症状を和らげるためには、低用量ピルや黄体ホルモン剤(ジエノゲストなど)が使われます。黄体ホルモンをしみこませた小さな器具を子宮内に留置する方法もあります。

ただ、これらのホルモン療法は、いずれも月経を止めて、排卵や子宮内膜が厚くなるのを抑制するため、妊娠を希望する場合には、継続して行うことはできません。また薬の服用をやめると、症状が再発します。残念ながら、薬では子宮腺筋症を根治することはできません。

子宮腺筋症の手術にはどんな方法があるの?

子宮腺筋症の手術には以下のようなものがあります。

子宮腺筋症核出術、子宮内膜症灼術(マイクロ波子宮内膜アブレーション)、子宮全摘術(腹腔鏡下または開腹)

子宮腺筋症を根治するには、子宮そのものをとりだす手術(子宮全摘術)が必要ですが、妊娠を希望する場合にはその選択はありえません。そこで、子宮を温存して症状を軽減する「高周波切除器を用いた子宮腺筋症核出術」が行われるようになってきました。

これまでは、正常な子宮の筋肉と腺筋症の組織が複雑に入り組んでいるため、とりのぞく部分を正確に見分けることがむずかしかったのですが、新しく開発された高周波切除器では、腺筋症部分だけを細かくけずり、その後残った組織で子宮を形成し直すことが可能になりました。

この核出術は2005年に厚生労働省の先進医療として認められた新しい手術法で、東大病院のほか、数カ所の認定施設のみで行われています。簡単な手術ではありませんし、保険適用外のため費用もかかりますが、今後症例がふえていけば、より多くの施設で実施されるようになるかもしれません。

廣田先生からのメッセージ

月経過多や強い月経痛などの症状がある場合は、我慢せずに、まずは婦人科を受診して、ご自分の子宮の状態を把握することがたいせつです。妊娠を希望されるかたには、子宮を温存する手術も行われるようになってきました。子宮腺筋症の症状に合わせて治療の選択肢はあるので、妊娠を含めた治療方針を主治医とよく相談してください。

取材・文/山岡京子 構成/木村亜紀子

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岡山県倉敷市出身。1998年東京大学医学部、2005年同大大学院医学系研究科卒業。母子保健センター愛育病院、武蔵野赤十字病院、焼津市立総合病院などを経て、東京大学医学部附属病院に勤務。2014年より現職。子宮腺筋症外来、着床外来で不妊に悩む多くの患者さんに寄り添う診療・研究をつづけている。専門は生殖内分泌学。

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