自然妊娠も夢じゃない!精索静脈瘤など男性不妊は泌尿器科で治療をするべきワケって?
新型コロナウイルス感染者が急増し、不妊治療専門クリニックの受診をすこしためらってしまう…という人もいらっしゃるのではないでしょうか。でも、不妊治療では時間を有効に使うことが大切です。
銀座リプロ外科は、精索静脈瘤の検診や手術を中心とした男性不妊治療に特化したクリニック。受診時には厳重な新型コロナ対策が施されているのはもちろん、オンライン診療も行っています。東邦大学泌尿器科教授・リプロダクションセンター長でもある、銀座リプロ外科の永尾光一先生にお話を伺いました。
男性不妊40%以上に見つかる精索静脈瘤
実は、WHO(世界保健機関)の不妊症原因調査では、48%が男性側に原因があると報告されています。そのうち、約40%以上に見つかり、不妊の原因の一つとなっているのが「精索静脈瘤」です。精索静脈瘤は、精巣の静脈から血液が逆流して陰のう上部の静脈がうっ血し、こぶのように腫れた状態です。
その精索静脈瘤の診断や手術において日本の第一人者といわれる、東邦大学医学部教授・永尾光一先生はこう話します。
「精索静脈瘤は、男性不妊ではない一般男性にも15%に見られ、めずらしい病気ではありません。遺伝や特定の原因で起こるわけではなく、誰にでも起こる可能性があります」
精巣からの静脈血は、重力に逆らって、筋肉の動きや静脈弁の働きによって心臓に戻りますが、こうした機能が弱いと血液の逆流が起こります。また、左側の精巣静脈が流れ込む左腎静脈が大動脈に圧迫されて、血液が戻りにくくなることも一因です。
「精巣は、体温より2~3度低い温度で活発に機能します。しかし、精索静脈瘤ができたまま放っておくと、血液が停滞することで精巣の温度が上昇し、精子をつくる機能や男性ホルモンの分泌低下、精子のDNA損傷などを引き起こしてしまうのです」
乏精子症、二人目不妊などの原因にも
男性不妊の検査には精液検査がありますが、精索静脈瘤では精巣の機能が低下するため、精液の所見も悪くなります。男性不妊の原因となる乏精子症や精子の運動率低下の約40%が、この精索静脈瘤が原因です。
「精索静脈瘤は放っておくと悪化していくため、二人目不妊で男性側に原因があるうちの78%を占めています。一人目の妊娠では問題がなかったのに、精索静脈瘤が軽度だったため気づかずに放置しているうちに進行してしまい、いざ二人目が欲しいと考えた時にはなかなか授からない、という例も少なくありません」
現在のところ、精索静脈瘤を予防する方法は見つかっていませんが、治療によって機能は改善できます。銀座リプロ外科では、視診や触診、超音波検査などによる精索静脈瘤の検診を行なっており、15分ほどで簡単に診断がつきます。
以前より遠方からの問い合わせが多かったこともあり、オンラインでのセカンドオピニオンも実施。他院で精索静脈瘤と診断されて手術をすすめられた方や、他院で手術を受けたものの再発した方などからの相談が相次いでいます。
高度な技術を要する「ナガオメソッド」とは
オンライン診療では、永尾先生が行う非常に高度な技術が必要な手術方法「顕微鏡下精索静脈瘤低位結紮術 ナガオメソッド」について相談する人が多いといいます。
「一般的な“顕微鏡下精索静脈瘤低位結紮術”や“顕微鏡下高位結紮術”など、精索静脈瘤の手術方法は一つではありません。
しかし、例えば前者の場合だと、精管1本と動脈1本のみを残し、ほかの複数の動脈やリンパ管、神経をまとめて糸で縛るため、損傷させてしまうこともあります。簡便な方法での手術では、合併症が起こる可能性が高くなるのです。
私が行っているナガオメソッドでは、精管1本と動脈3~15本、リンパ管と神経各5~10本をすべて残します。これらをすべて残すことはとても大事で、その結果、血流障害やリンパ浮腫も起こらず、再発率も0.5%と低くなっています」
ナガオメソッドは、「マイクロサージャリー」という顕微鏡を使って行う微小外科の技術を用いて、手術を行なう方法です。これにより、精索や精巣の外側の組織から、血管やリンパ管、神経を1本1本丁寧に分離して、逆流している静脈のみを縛ることができます。
ただし、これには高度なマイクロサージャリー(スーパーマイクロサージャリー)の技術が必要。銀座リプロ外科では、0.3mmのリンパ管をつなぐことができる熟練の医師が手術を行なうので、より丁寧で確実な手術が可能なのです。
手術は痛みが少なく、日帰り可能
その他にナガオメソッドの特徴として、痛みが少ないことや、日帰りで行なえることが挙げられます。
「痛みは、一度に沢山の麻酔液を入れることで感じます。ナガオメソッドでは、痛みを少なくするため、少しずつ麻酔を追加する7段階麻酔法による局所麻酔を行なっています。
手術は日帰りで、術後は歩いて帰ることが可能です。顕微鏡下高位結紮術や一部の一般的顕微鏡下低位結紮術では全身麻酔で入院になるのに比べ、翌日から仕事ができるので、より確実な手術を求めて、全国から来院されています。」
男性不妊は泌尿器科で根本的な治療を
「不妊治療は婦人科でするもの」と思っているカップルは多いのではないでしょうか。婦人科を受診した場合、男性は精液検査を行ない、所見が悪かった場合には人工授精や体外受精、顕微授精などに進むことがほとんど。永尾先生は、「泌尿器の生殖専門医がいる婦人科はごくわずかなので、精索静脈瘤の診断ができないことが多い」と危惧します。
「精索静脈瘤の手術をすることで、人工授精や体外受精、顕微授精での妊娠率が上がることがわかっています。しかし、婦人科で精索静脈瘤が見逃されたまま、不妊治療をステップアップしていった結果、望んだ結果が得られないことも少なくないのです」
男性の生殖機能を改善するための根本的な治療をしないままでは、遠回りをすることになりかねません。
不妊治療を行なう上では、どうしても女性に精神的・身体的負担がかかりますが、女性は婦人科、男性は泌尿器科でそれぞれ適切な治療を並行して受けたほうが、女性の負担も減り、より早く希望を叶えることにもつながります。
「精液の所見が悪かった方をはじめ、赤ちゃんを望むカップルの男性は、ぜひ泌尿器科を受診してほしいと思います。私の手術を受けた方の中には、顕微授精を何度も行っても結果が出なかったけれど、精索静脈瘤の手術後に自然妊娠できたという方が沢山います。女性側に問題がなければ、顕微受精を勧められるレベルの精液所見が正常まで改善し、自然妊娠の可能性が高くなります」
実際に、永尾先生の手術を受けた方で、87%が手術前より精液所見が改善しているといいます。58%がステップダウンし、顕微授精から自然妊娠が可能なレベルになった人が38%もいたという結果が出ています。
「精索静脈瘤は進行していく病気なので、何よりも早期発見が大事です。陰のうのサイズに左右差があったり、表面がでこぼこしている場合などは精索静脈瘤の可能性が高いので、特に早く受診していただきたいです」
クリニック内は安心・安全の感染症拡大防止対策
銀座リプロ外科では、新型コロナウイルスの流行で気になる感染症対策についても、万全を期しています。手術中は医師と患者さんの間をパーテーションで区切られているので、安心して手術を受けることができます。
また、院内の感染症対策も徹底しています。検温や手指のアルコール消毒、使い捨てスリッパの使用などはもちろん、予約時間を調整して、待合室でほかの患者さんと重ならないようにしているほか、患者さんが使ったタブレットなども都度消毒したり、診察にあたっても医師との間を透明フィルムで完全に遮断したり、感染リスクの高いトイレに低濃度オゾン発生装置を設置したりと、隅々まで気を遣っています。
監修
永尾光一先生
東邦大学医学部教授。東邦大学医療センター大森病院リプロダクションセンター長。泌尿器科学会専門医、日本生殖医学会認定生殖医療指導医、形成外科学会専門医。精索静脈瘤の診断や手術における日本の第一人者。マイクロサージャリーを専門とした日帰り精索静脈瘤手術をはじめ、各種男性性機能診療を行ない、「銀座リプロ外科」でもその技術を提供。「NPO法人男性不妊ドクターズ」理事長として、患者のニーズにあった情報を伝えるべく、講演会や市民公開講座などでも積極的に活動している。
銀座リプロ外科 東京都中央区銀座2-8-19 FPG links GINZA6F
https://ginzarepro.jp/
文/荒木晶子
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東邦大学医学部教授。東邦大学医療センター大森病院リプロダクションセンター長。泌尿器科学会専門医。日本生殖医学会認定生殖医療指導医。形成外科学会専門医。精索静脈瘤の診断や手術における日本の第一人者。マイクロサージャリーを専門とした日帰り精索静脈瘤手術をはじめ、各種男性性機能診療を行ない、「銀座リプロ外科」でもその技術を提供。「NPO法人男性不妊ドクターズ」理事長として、患者のニーズにあった情報を伝えるべく、講演会や市民公開講座などでも積極的に活動している。
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