禁煙する、過度のアルコールを控えるのは基本
タバコに含まれている有害物質は、卵巣や子宮への血流を悪くするだけではありません。女性ホルモンの分泌にも影響して、卵子の質が低下したり、子宮内膜が受精卵の着床に適さない状態になったりするため、まず禁煙することが大切です。
アルコールについては、妊娠率が下がる、流産率が上がるという報告もあれば、変わらないという報告もあります。人によってアルコールを体外に排出する力は異なり、一概にどのくらいの量なら安全とはいえないので、過度のアルコールは避けたほうがいいでしょう。
次に大事なのは太りすぎ、やせすぎの改善!
自分が太っているかやせているかは、体重をはかるほか、ふだん着ている服のサイズなどから増減を判断しているのではないでしょうか。でも、体重や見た目だけで判断するのはNG。太りすぎ、やせすぎの指標となるBMI(ボディ・マス・インデックス)で確認しましょう。
BMIは、[体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]から算出します。18~49歳の場合、適正なBMIは18.5~24.9。それ以上は太りすぎ、それ以下はやせすぎ、BMI35以上になると重度の太りすぎです。
また、やせているように見えても、実は脂肪が多い隠れ肥満ということもあります。体組成計を使って、自分の筋肉量や脂肪量を確認すると、さらにいいでしょう。
太りすぎの場合
排卵障害を起こしやすいため、糖尿病の検査を行う
太りすぎの場合は、糖尿病の可能性があります。血糖値を下げる働きをするインスリンが排卵に影響するため、肥満や糖尿病では排卵障害を起こしやすいと考えられています。排卵障害は不妊原因の一つですが、不妊治療をしていても、糖尿病の詳しい検査を行っている人は多くありません。1回の血液検査だけではわからないので、高橋ウイメンズクリニックでは「75g経口ブドウ糖負荷試験」を行って調べています。
75g経口ブドウ糖負荷試験は、75gのブドウ糖液を飲んだあと、1時間後、2時間後と血糖値を調べる検査です。この検査で糖尿病傾向があると診断した場合には、管理栄養士の栄養指導を受けて体重管理を行うことになります。
同時に、糖代謝を改善する「メトホルミン」という薬を使って排卵障害の改善や、卵子の質をよくしていく場合もあります。
やせすぎの場合
細胞膜がつくられにくくなり、性ホルモンの分泌も低下する
最近、妊活中でもやせすぎている人が少なくありません。しかし、やせすぎているとたんぱく質が不足したり、低コレステロール状態になり、卵子の質が低下してしまいます。
コレステロールは悪いものと思っている人が多いのですが、細胞を包んでいる細胞膜はリン脂質とコレステロールからできています。また、女性ホルモンや男性ホルモンなど性ホルモンも、実はコレステロールからつくられているのです。低コレステロール状態だと細胞膜の材料が少なくなり、性ホルモンの分泌も低下してしまうので、妊娠を目指す人には避けるべき、とても重要なことなのです。
◎リン脂質とコレステロールは“良質の油”からとる
リン脂質とコレステロールをとるには、良質の油(脂質)を食事にとり入れることが大切です。脂質には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があり、飽和脂肪酸はとりすぎると悪玉コレステロールが増えて、生活習慣病を招く恐れがあります。不飽和脂肪酸は悪玉コレステロールを減少させたり、心臓の病気や脳卒中などにかかるリスクを低下させたりするなどの効果があるので、積極的にとり入れていきましょう。
具体的には、オリーブ油、えごま油、アマニ油、EPAやDHA(魚に含まれる油)、MCTオイルなどが挙げられます。揚げものや炒めものに使われるサラダ油やキャノーラ油なども不飽和脂肪酸を含みますが、化学的加工が加えてあり、使い過ぎには注意しましょう。また、飽和脂肪酸のなかでも、中鎖脂肪酸が主成分のココナッツオイルは脂肪になりにくく、おすすめです。
脂肪酸の一つであるトランス脂肪酸は、悪玉コレステロールを増やし、善玉コレステロールを減らしてしまいます。マーガリンはトランス脂肪酸が多く、アメリカでは法律で禁止されているので、控えたほうがいいでしょう。
◎細胞をつくる“たんぱく質”も豊富にとる
体の細胞をつくるのは、たんぱく質です。卵子や精子の細胞も同様なので、じゅうぶんにとらないと、卵子の質にかかわります。
たんぱく質には、魚介類や肉類、卵や乳製品などの動物性たんぱく質と、豆腐や納豆、油揚げ、豆乳などの植物性たんぱく質があります。動物性たんぱく質は植物性たんぱく質よりも吸収率がいいですが、偏らずバランスよくとることを心がけましょう。
◎リン脂質やコレステロール、たんぱく質は基準値の上限超えを目指す
これらをもう少しとりましょうというと、「今まで健康診断で正常値と言われていたのに」と思うかもしれません。妊娠を目指すためには、理想を追求して、基準値の上限を目指すのが栄養的にはおすすめです。
取材・文/荒木晶子
〈あわせて読みたい記事〉
●卵子の良い悪いって、何で見分けるの?卵子凍結の排卵誘発前に知りたいこと【医師に聞いてみた】
●【不妊治療専門医監修】気になるAMH値。検査の結果、AMHの数値が低いと卵の質も悪い?
●着床率UPのためにできることって?着床のギモンに答えます【不妊治療専門の医師監修】