――入院中や治療中は、ご主人やご両親が全面協力してくださったんですね。
夫は仕事をしばらく休んで、家事と育児をワンオペでこなしてくれました。彼、ものすごく家事・育児のスキルが上がったんですよ。
私が放射線治療のせいで味覚障害が起きてしまって、何も食べられなくなったんです。栄養がとれないので「胃ろう」をつけて、胃に直接栄養を送り込んでいました。何を食べてもダンボールみたいで、苦いしマズイし…。
そのとき、夫がつくってくれた「すまし汁」だけがのどを通ったんです。
――それは感動的なエピソードです。
夫は、のどのがんの患者さんでも食べられるものをネットや本で調べてくれたんです。
本当にありがたくて、夫より1分1秒でも長く生きて、私が看取ってあげたいって思いました。…ってヤバイ、思い出したら泣きそうです(笑)。
――娘さんもまだ5歳なのに、ママのいない日々はつらかったでしょうね。
入院した当初、娘はずっと笑顔だったんです。でも、笑っていたけれど全然平気ではなく、私のためにすごくがんばってくれていた。ある日、娘がお風呂でシャワーを浴びながら一人でずっと泣いていたそうで、それを見て夫も泣いてしまったと…。あ、ヤバイ、また涙が(笑)。
夫と娘の間には、私ががんになる以前とは違う“強い信頼感”が生まれたと感じています。
両親もわが家の近くにウィークリーマンションを借りて、家事や育児をサポートしてくれました。家族の絆はより深まったかもしれません。
がんになってよかった、なんてまったく思いませんが、得たものもありましたね。
再発せずに3年たったら「あの子」を迎えに行く!
――がんが見つかって1年以上たちますが、体調はいかがですか?
なんとか口から栄養を摂ることができるようになり、胃ろうを外すことができました。
それでも味覚はまだ7割程度しか戻っていませんし、唾液が出にくいのは続いています。唾液が出ないと、何を食べても味がしないんですよ。飲み込むのも大変なので、食事の30分前には唾液を分泌させる薬を飲んでいます。
――体験しないとわからないつらさですね。がんの状態はいかがですか?
今のところは1カ月に1回病院でチェックしていますが、転移も再発もありません。
がんが見つかって3年たっても再発しなければ、寛解(症状が落ち着いて安定した状態)といっていいそうなので、凍結受精卵を迎えに行こうと思います。
――2027年の春には、ということですね。
はい。受精卵の凍結は私が45歳まで更新できますが、寛解したらできるだけ早く迎えに行きたいと思っているんです。
受精卵のグレードは残念ながら低いのですが、絶対におなかのなかに戻してあげたいな、と思っています。
――がんの治療と体外受精を経て、ぽんかんさんが今思うことは?
私の場合は不妊治療ではないのですが、体外受精を経験してみて、体力的にも精神的にも金銭的にも、すごく大変だと感じました。体外受精って、たとえ保険診療でも、けっして安くはない金額ですよね。
そんな大変な治療をしていたら、自分の体にまで気が回らないと思うんです。それでも、どうぞ自分の体にも気をつけてあげてください。
私のような例があるのを知ることが、何かの参考になれば、と思って、今回お話させていただきました。ぜひ、コミックエッセイも読んでくださいね!
前編インタビューを読む>>2人目妊活開始!と思ったら「がん」が見つかった【漫画家・松本ぽんかんさんインタビュー/前編】
取材・文/神 素子
\ある日覚えたのどの違和感。その正体はがんだった。/
『ママ5年目でがんなんて 手に入れた卵子と失った味覚』
(竹書房/税込 1,430円)
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PROFILE●松本ぽんかん(まつもと・ぽんかん)
1989年生まれ、岡山県出身。つわりが忘れられない漫画家。家族構成は、ぽんかん(母)・夫・娘。頭の上に乗っているのは大好物の「ぽんかん」。「第1回 竹書房コミックエッセイ大賞」部門賞受賞。『つわりが怖くて2人目に踏み切れない話』(KADOKAWA)、『ポンコツぽんかん育児録』(主婦の友社)などの電子コミックが話題となり、2025年5月29日に自身初となる書籍『ママ5年目でがんなんて 手に入れた卵子と失った味覚』(竹書房)を発売。松本ぽんかんの漫画録▶https://mponkan.nbblog.jp/
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