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2ページ目(2ページ中) | 野田聖子さん(内閣府特命担当大臣)「不妊治療の“高齢化”と卵子提供でうまれた子のその後について」 石塚文平先生(不妊治療専門医)スペシャル対談②

2022/01/03 公開
2023/07/14 更新

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野田 「寝た子を起こしてくれるな」と。でも、子どもの幸せを考えたら、きちんと卵子提供であることを本人に知らせたほうがいいと思うんです。

卵子提供で私の場合は、自分で卵子を選んではいません。紹介を受けたドクターに選択をお任せしたら、提供者はアメリカ人だということでした。だから息子は私には似ていません。そのこともオープンにしています。自分に似ていれば、このことを隠したくなったかもしれないけれど、その誘惑を最初から断ち切りました。

石塚 台湾でも卵子は選べません。でも一応、みなさん、リクエストはされることが多いそうです。

野田 子どもが自分の出自を知る権利はとても大切だということを、広く社会全体で認識してほしいんです。それに関する法整備もこれから進めていきたいと思っています。

石塚 生殖技術の進歩にともなって、家族や親子のあり方も多様化しますね。

野田 そのことで、社会のいろいろな矛盾があらわになる。たとえば体外受精なら、同性婚であっても、精子提供や卵子提供で子どもが持てます。

ですが、選択的夫婦別姓制度すらまだ認められていない日本で、同性婚の子どもを法律上どう位置づけるのかなど、問題山積。
私のようなタフな女でも、どうしたらよいのか、迷ってしまいます…。

石塚 でも社会が変わっていかないと、子どもは減るばかりで、人類は滅亡してしまいます。子孫が残せるかどうかの、いまは曲がり角ですね。

50歳で出産。でも、私はお手本ではありません

野田 日本の場合、不妊治療をずっと続けてしまうことも、実は問題の1つです。法の歯止めがないから、いつまでも続けてしまう。

石塚 私のクリニックにも、50代で排卵誘発を希望される人がいらっしゃいます。

野田 私が出産したのは50歳のときですが、ホルモンをコントロールして、出産することができました。

石塚 治療がうまく進めば、閉経後でも、出産は可能なケースもあります。

野田 でもやはり、出産は早いに越したことはないです。

よく言うのは、“私はお手本ではないし、高齢で産んだら、老眼で子どもの顔もはっきり見えないよ”と(笑)。私のようにならないよう、アドバイスとして言っています。

石塚 世界での最高齢の自然妊娠は中国で、55歳と言われていますが、真実かどうかはわからないです。

野田 治療費の負担を軽くしようとする保険適用も、ふわっとした倫理規定で済ませていたものが、法律の枠組みの中に入るとなると、良くなることはありますが、それによってできなくなることも出てきます。

石塚 助成金の拡充は、不妊治療を確実に後押ししました。
おそらく来春からは保険適用されるということで、それを期待して、いまから治療を開始する人たちもふえています。

野田 妊娠したい、子どもを持ちたいと思う人が増えるのは嬉しいことですね。

それから、先生方のお世話になっても、うまくいかないケースもあります。その場合には特別養子縁組という道があることも、特別養子縁組あっせん法にずっと取り組んできた私としては、より多くの人に知って欲しいです。

石塚 確かに、いつまでも妊活ができるわけではない、ということも、お伝えしていく必要はあります。

関連リンク:特別養子縁組って?年齢制限や費用は?体験談も

ホルモン補充療法で女性は美しく健康に

野田 ところで、先生は卵子の若返りについて、先駆けて研究していらっしゃったんですよね。

石塚 卵子の活性化についても、研究はつづいていますが、いま私が主に取り組んでいるのは、40歳未満で閉経してしまう早発卵巣不全という病気です。
女性のおおよそ1%がかかると言われていて、20代、30代の日本女性の人口比で計算すると約10万人ですから、決して少なくないんですが、まだあまり知られていません。

野田 閉経してしまうと、もう子どもは持てないのですか?

石塚 以前は妊娠は限りなくむずかしい状態でした。でも、いまは治療法が開発されて、35歳未満で治療を開始できて、かつ、無月経の期間が4年未満なら、約3割の人が妊娠できるようになっています。

野田 それはすばらしいですね! ところでこの早発卵巣不全という病気の原因は、そもそも遺伝的なものですか?

石塚 はい、多くはそうです。早発卵巣不全に関連する遺伝子も50個ほど特定されています。
ただ、それ以外にも原因があって、ひとつは卵巣の手術などの医療的なもの。それから、がん治療後の卵巣機能不全があります。抗がん剤や放射線治療は、卵巣機能に大きく影響してしまいますから。

野田 女性ホルモンの知識はあまり一般的に広まっていないので、苦しんでいる人も多いでしょう。

石塚 早期卵巣不全で、女性ホルモンの欠乏は、不妊だけでなく、一生の健康に関わるのだということがあまり理解されていません。
60代での死亡率が上がるとか、将来の認知症のリスクも高まると言われています。

野田 そうなんですね!子どもが持てなくなるだけでなく、生命に関係があることは知りませんでした。

石塚 貼り薬などでのホルモン補充療法が必要となりますが、2001年にアメリカで、ホルモン補充にはがん発症リスクや血栓症のリスクがあるという報告が出たために、グンと実施が減ってしまった。20年たってもまだリカバリーができていません。

野田 本当のところ、それらのリスクはどうなんですか?

石塚 きちんとコントロールし、検診を受けていれば、問題はないんです。それに、ホルモン補充療法をしているかたは肌つやがとてもきれいです。

野田 低用量ピルの認可のときも、体に悪いとか、いろいろと抵抗があって、日本では導入が遅れましたね。
女性たちをアクティブにしたくない勢力か何かがあるのかなと考えてしまいますね(笑)。

石塚 いや、女性が美しくて元気なほうが、世の中全体が楽しいですよ!

野田 そうですね。女性に寄り添う先生方には、ぜひこれからもご活躍いただいて、不妊治療に限らず、苦しんでいる方々を支えて応援してほしいですね。

取材・文/山岡京子

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