2ページ目(2ページ中) | 【北九州の名医が語る、不妊治療最前線】やっぱり「胚」が9割!最短妊娠のためにできること、しなくていいこと | 不妊治療・妊活のクリニック探し・情報収集ならあかほし(赤ちゃんが欲しい)
MENU
不妊治療・妊活のクリニック探し・情報収集ならあかほし 不妊治療コラム 【北九州の名医が語る、不妊治療最前線】やっぱり「胚」が9割!最短妊娠のためにできること、しなくていいこと 2ページ目(2ページ中)

2ページ目(2ページ中) | 【北九州の名医が語る、不妊治療最前線】やっぱり「胚」が9割!最短妊娠のためにできること、しなくていいこと

2023/06/19 公開

画像ギャラリー

卵子提供であれば、閉経後であっても移植は可能で、実際に多くの女性が出産にいたっています。この事実も、子宮環境が妊娠に与える影響があまり大きくないこと、そして胚の質こそが重要であることを物語っています。

私自身も着床不全の原因といわれる「慢性子宮内膜炎」の患者さんを何千人とみていますが、こちらも炎症と妊娠率のあいだには明確な関係があるとは言いがたいのです。子宮側の環境を整えることばかりに着目するのは賢い選択ではありません。

胚をよくすることにこそ注力すべきである。これが私の結論です。

高齢での体外受精は、早めの着床前検査も検討

2020年にPGT-A(着床前胚染色体異数性検査)の臨床研究が開始され、条件を満たせば受精卵のDNA検査ができるようになりました。染色体異常を持つ胚は、着床できなかったり、着床しても早期に流産という形で自然淘汰されてしまいます。

これまでに1万5000人以上の胚が検査されていますが、ここではっきりしたこともやはり胚の問題がいかに大きかったか、ということです。

これまでは見た目や分割のスピードなどで良好胚かどうかを判断していましたが、検査をしてみると見た目がきれいでも染色体異常を持っている胚も多いことがわかりました。

高齢になって妊活をスタートした方、体外受精にチャレンジしているものの「着床しない」「流産を繰り返す」といった悩みを抱えている方にとっては、着床前診断は有効な選択肢です。

着床不全や流産は、肉体的にも精神的にも負担が大きいものです。さらに妊娠のタイムリミットを思うと、次の妊娠まで足踏みの期間ができてしまうことももったいない。

35歳以降で不妊治療をする方は、着床前診断ができるクリニックを選ぶ、ということも最短での妊娠を目指すための賢い選択と言えるでしょう。

「早めの不妊治療」をあと押しする保険適用

胚の質を左右するのは、なんといっても女性の年齢です。

卵子のもとになる原始卵胞は、胎児のときに一生分が卵巣に蓄えられます。その数は出生前がいちばん多くて約200万個。しかし、生まれるときには約100万個にまで減り、さらに思春期には約30万個と減っていきます。

そして、初潮が始まった時から、卵子の老化はスタートします。初潮と同時に閉経までのストップウォッチが押されるわけで、これは誰にも止められません。

つまり、女性の体の機能を考えれば、卵子の老化による影響が顕著になる35歳までに妊娠・出産を終えることが最も合理的である、ということです。

日本の不妊の治療の件数は年間約40万件、3年前までは世界一でした。なんとアメリカで行われている不妊治療の3倍です。ところが、治療数に対する出生率は世界最下位です。

こう聞くと、「日本の不妊治療のレベルはそんなに低いのか」と勘違いされる方がいるかもしれません。日本で行われている不妊治療は、世界的にみても高水準で、高い技術を誇っています。それでも出生率が低いのは、治療を受ける平均年齢が40歳と、妊娠適齢期を過ぎてから治療に踏み出す人が多いからなのです。

日本では「キャリアか、出産か」という二択を迫られるケースが多く、働く女性にとってはなかなか出産に踏み切れない事情があります。それでも、そうして先送りにする選択が、妊娠を困難にしてしまっている、というのも事実。高い医療技術を持ってしても、卵子の老化を止めることはできません。

2022年4月より、不妊治療への保険適用が始まりました。金銭的負担を下げることで、若い世代への不妊治療へのハードルを低くする、という点で意義深いものだと考えています。保険適用の対象は43歳未満です。

年齢制限があるのは女性にとってはプレッシャーかもしれませんが、それだけ妊娠と年齢は深い関係にあるということです。治療が必要かどうか迷っている方がいれば、まずは検査だけでも受けてほしいと思います。

関連リンク:保険適用の不妊治療でちゃんと妊娠できますか?【専門ドクターに教わる妊活・不妊治療】

女性の選択肢を広げる未受精卵凍結

私が今後の生殖医療政策で期待をかけているのは、未受精卵の凍結に対する保険適用です。

以前は、未受精卵は受精卵よりもデリケートで、凍結によって変性してしまったり、融解して精子と出合わせても受精率が低い、という問題がありました。

しかし、昨今の技術革新によって、未受精卵でも受精卵と遜色ないくらいの成績が残せるようになってきています。

30代前半までに未受精卵を凍結保存しておき、ライフプランに合わせて妊娠のタイミングを検討することができるようになれば、「キャリアか、出産か」という酷な選択に悩まされることは少なくなるはずです。25歳で凍結した卵なら、40歳で移植しても25歳相当の妊娠率が期待できます。

最近では、企業の福利厚生として未受精卵凍結に対する補助金を支給するところもでてきています。当クリニックでも、スタッフへの福利厚生で2年前から未受精卵の凍結をサポートしています。

未受精卵凍結は、将来、赤ちゃんを抱く日のために自分にできる大きなプレゼントです。若い世代には、ぜひこうした情報を知って、検討してもらいたいと思います。

そして、できるだけ早期に保険適用という道が開け、経済的な負担を減らしてチャレンジできるように整備が進むことを願っています。

\田中温先生の最新刊/

あきらめていた赤ちゃんが、できた!』
Amazonで見る
楽天で見る

監修
監修

セントマザー産婦人科医院・院長。1976年順天堂大学医学部卒業。同大学医学部産婦人科教室に入局。越谷市立病院産婦人科医長をへて、1990年より現職。男性不妊をはじめ、さまざまな不妊原因への治療法を確立してきた、日本の生殖医療におけるトップドクターの一人。

X LINE
人気記事ランキング
  • 24時間
  • 月間
閉じる