不妊治療で使う「排卵誘発剤」の効果や副作用(リスク)を知りたい。注射と飲み薬の違いは?【医師が解説】
不妊治療に薬はつきものですが「副作用が心配」「今の薬で効果があるの?」「将来への影響はだいじょうぶ?」など、治療内容や段階によって、さまざまな不安がありますね。
この記事では不妊治療専門医・木場公園クリニック理事長の吉田 淳医師が排卵誘発剤などの薬についてくわしく解説。疑問を解消して、安心して治療に取り組んでください。
『赤ちゃんが欲しい(あかほし)』読者に聞きました。現在、薬を使っていますか?
-女性回答-
-男性回答-
医療施設に通う女性の6割強が排卵誘発剤などの薬を服用している一方、夫側の使用率は1割に届きません。不妊治療では、やはり女性側に負担が大きいことがわかります。
不妊治療ではなぜ薬を使うの?副作用は?
妊娠が成立するためには卵子と精子がであって受精し、子宮に着床しなくてはなりません。さまざまな原因や要因でそれがうまくいかない場合に、医療の助けを借りるのが不妊治療です。
そのため、治療にはさまざまな薬が使われます。副作用のない薬はないと言えますが、現在、使用される薬は、安全性が高く、リスクが少なくなっています。医師も慎重に経過を見ながら、その人の状況にふさわしい薬を選び、またできるだけ副作用が出ないように、そのつど判断していますので、むやみに副作用をこわがることはありません。
今はネット上にいろいろな情報があふれています。なかには「フェイク」な情報もあります。何かを一方的に、また全面的に信頼しない、という態度も必要です。
自分が使う薬の名前や効果は必ずしっかりと確認し、疑問や不安があれば、どんなにささいなことでも遠慮せずに、医師に相談して解決しましょう。納得して治療を受けることがなによりたいせつです。
関連記事→治療内容や合併症などの時に必要に応じて使うことがある薬
不妊治療で最も多く使われている薬「排卵誘発剤」
妊娠が成立するには、まず排卵がなければいけません。排卵誘発剤は、文字どおり、卵巣で卵子を育て、排卵を誘発するための薬です。
illust/pai
「排卵誘発剤」の役割①
ホルモンの働きを補い、排卵を確実にします
女性の卵巣の中には卵胞(らんぽう)とよばれる卵子が入った袋があり、月経が始まると、卵胞刺激ホルモン(FSH)が分泌されて、卵子が成長を開始します。
その後、いちばん大きく成長した主席卵胞が、黄体化ホルモン(LH)によって、卵子を放出します。これが排卵です。排卵誘発剤は、脳、あるいは卵巣を刺激して、これらのホルモンの働きを補います。なんらかの原因で排卵がうまくいかない排卵障害で使われるのが本来の役目です。
「排卵誘発剤」の役割②
卵胞を複数育て、妊娠の可能性を高めます
正常な排卵があっても、タイミング法では妊娠しない場合、卵の数を増やして妊娠の確率を上げるために、排卵誘発剤を使うこともあります。
自然周期では、排卵される卵子は1つですが、排卵誘発剤を用いることで複数の卵胞を育てます。特に体外受精や顕微授精では、できるだけ複数の卵を採卵したいので、一般的には注射剤を使って、より強く卵巣を刺激します。
注射による排卵誘発には卵巣過剰刺激症候群(OHSS)など副作用のリスクがあるので、使用には十分な注意が必要です。
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排卵誘発剤 <飲み薬>
●シクロフェニル製剤 セキソビットなど
【効能・効果と副作用】
クロミフェン製剤と同じく、視床下部に働きかけて、性腺刺激ホルモンの分泌を促す。一般的には月経開始5日目から5~10日間服用。排卵誘発作用は弱めだが、頸管粘液の減少や子宮内膜が薄くならないメリットがある。
●クロミフェン製剤 クロミッドなど
【効能・効果と副作用】
開発から50年以上がたち、安全性が確立した薬。月経開始3~5日目から5日間内服する。連続使用すると頸管粘液の減少や子宮内膜が薄くなる副作用が知られる。卵巣のはれや吐き気、頭痛、目のかすみ症状が出ることもあります。
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●アロマターゼ阻害剤 レトロゾール、フェマーラなど
【効能・効果と副作用】
アロマターゼという酵素の働きを妨げ、エストロゲンの上昇を抑えて、卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌を促す。月経開始3~5日目から5日間内服。副作用は多くないが、めまいや疲労感などが見られることがある。
排卵誘発剤 <注射>
●リコンビナントFSH製剤 ゴナールエフ、フォリスチムなど
【効能・効果と副作用】
遺伝子組換え技術によって製造されたFSH製剤。純度が高く品質が安定していて、自己注射に適している。まれに卵巣過剰刺激症候群の副作用があるが、卵巣のはれや注射した部位のアレルギーを起こすリスクは比較的低いのが特徴です。
●FSH製剤 フォリルモン、ゴナピュールなど
【効能・効果と副作用】
hMG製剤と同じく、閉経期の女性の尿から精製される卵胞刺激ホルモン(FSH)で、卵巣に直接働きかけて排卵を起こす。黄体化ホルモン(LH)成分は含まれない。まれに卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を起こすリスクがある。
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●hMG製剤 HMGフェリング、HMGフジ、HMGテイゾーなど
【効能・効果と副作用】
閉経期の女性の尿から精製され、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)の両方を含み、その割合は薬により異なる。飲み薬では排卵しない場合や、多くの卵胞を発育させたい場合に使用。卵巣過剰刺激症候群(OHSS)が起こることがある。
「排卵誘発剤」飲み薬と注射はどう違うの?
飲み薬は、脳下垂体に働きかけて、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)という2つのホルモンの分泌を促します。いわば間接的に排卵を誘発するのに対し、注射薬はホルモンそのもの。卵巣に直接刺激を与えるので、効果が高く、飲み薬では排卵が起こりにくい場合や、体外受精などでより多くの良質の卵子を得たいときに使用されます。
「排卵誘発剤」とあわせて使う薬についても知りたい!
卵子を育てるための排卵誘発剤以外に、排卵を起こす薬や、逆に排卵の時期をコントロールする目的で、排卵を抑える薬を使うこともあります。
●排卵を起こす薬<LHサージと同じ役割をする>
黄体化ホルモンに似た働きをする薬です。タイミング法、人工授精、体外受精、顕微授精のすべての治療段階で使われます。
卵胞が成熟すると、自ら卵胞ホルモン(エス卜口ゲン)を分泌し始めます。この分泌がピークになると、排卵を促進する黄体化ホルモン(LH)が一気に分泌されます。これがLHサージと呼ばれる現象で、通常はLHサージから36時間前後で排卵が起こります。
GnRHアゴニスト製剤やhCG製剤は黄体化ホルモン(LH)と同じ作用を持つ薬で、自力ではLHサージが起こりにくい人や、人工授精、高度治療(体外受精・顕微授精)の採卵時など、排卵のタイミングをコントロールしたい場合に使用されます。
<注射>hCG 製剤 … HCG F、オビドレルなど
【効能・効果と副作用】
卵胞が十分に成熟した時点で投与すると、36時間前後で排卵が起こる。卵胞がたくさん育っているときに使用すると、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を起こすことがあり、特にhMG製剤との併用時や多嚢胞性卵巣の人は注意が必要です。
<点鼻薬>GnRH アゴニスト製剤 … スプレキュア、ブセレキュアなど
【効能・効果と副作用】
本来は子宮内膜症などの治療薬だが、hCG製剤と同じく、LHサージを引き起こす効果があり、使用後36時間程度で排卵する。逆に長期間使用すると排卵を抑制する働きがあるので、体外受精のときに排卵を抑える目的で使用することも。
排卵を抑える薬<成熟した卵を確実に採卵するために>
体外受精や顕微授精では、育てた成熟卵が採卵の前に排卵されてしまうのを避けるために、排卵時期をコントロールする薬を使うことも。
体外受精や顕微受精では、できるだけ成熟した卵を採卵する必要があります。自然の状態では最適のタイミングを見きわめるのがむずかしいので、排卵を促すLHサージを抑える働きをするGnRHアゴ二スト製剤やGnRHアンタゴニス卜製剤を使い、排卵時期をコントロールします。
GnRHアゴ二スト製剤を使う場合は、前周期の高温期半ばから使用するロング法、月経1~3日目から開始するショート法の2つがあります。
<注射>GnRH アンタゴニスト製剤 … ガニレストなど
【効能・効果と副作用】
月経3日目から排卵誘発剤の注射をし、卵胞がある程度発育したところで、排卵を防止するために使用。GnRHアゴニス卜製剤にくらべ卵胞が発育しやすく、使用期間が短くてすむが、わずかだが排卵してしまう可能性がある。
黄体ホルモンを補う薬<着床しやすく子宮を整える>
子宮内膜をフカフカに育て、子宮環境を整えるのに欠かせない黄体ホルモン。体外受精、顕微授精にも使われます。
黄体ホルモン(プロゲステロン)は、排卵後に卵胞が変化してできる黄体から分泌されるホルモン。子宮内膜を厚くし、受精卵が着床しやすい環境をつくります。この黄体ホルモンが不足しているときに補充する目的で使われるのが黄体ホルモン剤です。タイミング法や人工授精では、排卵を確認したあとに服用を始めます。
体外受精では採卵後のほか、胚移植周期でも使われます。黄体ホルモンの排卵抑制効果を利用するPPOS法では飲み薬が使われます
<飲み薬>ジドロゲステロン製剤、クロルマジノン製剤
デュファストン、ルトラール など
【効能・効果と副作用】
天然型黄体ホルモンは、肝臓で分解されてしまうので、飲み薬としては、合成黄体ホルモン剤が用いられる。
通常は1日1~3錠を1~3回に分けて内服する。飲み始めに吐き気や食欲不振、頭痛、めまい、乳房の張りなどの症状が出ることがある。
<注射>ヒドロキシプロゲステロンカプロン酸エステル…プロゲデポー など
【効能・効果と副作用】
高温期が短い「黄体機能不全」の治療に使われる天然型黄体ホルモン。体外受精の際に、注射で卵巣刺激をすると、黄体ホルモンの分泌が減少することがあり、その補充の目的でも使用される。頭痛やむくみ、だるさなどの副作用が報告されている。
<腟剤>天然型黄体ホルモン剤
ワンクリノン など
【効能・効果と副作用】
腟剤は、直接子宮内膜に働くので、効果が高く、体外受精時の黄体補充に使用される。ゲル状の薬剤がアプリケーターに入っていて、1日1回膣内に挿入する。主な副作用としては、腟出血、腹痛、腟内異物感など。
ウトロゲスタン など
【効能・効果と副作用】
体外受精の採卵後や胚移植の前の黄体ホルモン補充のために使用される。カプセルに入っているので指で腟内に深く挿入する。
使用後、おりものがふえることがあるが、薬の効果には問題ない。眠けやだるさ、吐き気を感じることも。
副作用が出たら、がまんせず主治医に伝えて
どんなささやかなことでも、薬を使ったことで不調を感じたら、がまんすることはありません。副作用がつらいときは、患者さんの側から訴えてかまいません。
薬によっては「それなら違う薬に変えましょう」ということもありますし、不安に思うことで、薬の効きが悪くなることもあります。きちんと話したうえで、納得して治療を受けることのほうが重要です。
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卵胞ホルモンを補う薬<胚移植のときに>
自然の排卵を止め、子宮内膜を厚くするホルモン補充周期に、「着床準備状態」をつくるために使われるのが卵胞ホルモン剤です。体外受精の凍結胚移植の場合、人工的に排卵周期を調整する必要があります。そのために、まず卵胞ホルモン剤を補充し、つづいて黄体ホルモン剤も使用して、子宮内膜を着床しやすい環境にととのえます。
<飲み薬>結合性エストロゲン
プレマリン、ジュリナ など
【効能・効果と副作用】
卵胞や子宮内膜を育てる働きをする卵胞ホルモンの分泌不足を補う。体外受精の妊娠率を上げる目的でも使われ、黄体ホルモン剤との併用が一般的。副作用は体重増加、むくみなど。
<貼付剤>貼布型卵胞ホルモン剤…エストラーナテープ など
【効能・効果と副作用】
天然型の卵胞ホルモン(エストラジオール)を主成分とした貼り薬。皮膚を通して成分が吸収されるので、効果が高い。副作用としてはテープを貼った部位のかぶれのほか、乳房の張りや痛み、不正出血など。
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不妊治療の薬、なんでもQ&A
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