月経痛&PMS(月経前症候群)とじょうずにつきあう【中医学リプロダクティブヘルス】集中特訓#06
妊娠したい女性&カップルなら、ぜひ知っておくべき!漢方・中医学による妊活アプローチについて、「学び」を深める連載。妊活を始めたばかりの人も、なかなか妊娠しないと不安な人も、「読むだけ」で妊娠しやすい身体づくりをめざすことができる!そんな妊活の基本をまとめています。
教えてくださるのは中医学講師の張(ちょう) 立也(りつや)先生。『赤ちゃんが欲しい(あかほし)』編集部とともに、さぁ、授かりに向けて学びのトビラを開きましょう。
第6回のテーマは「月経痛とPMS(月経前症候群)」。毎月の月経にともなう痛みや不調は女性なら当然と思っていませんか? 強い月経痛の裏に、問題がひそんでいることもあります。痛みをただがまんしたり、過剰に恐れたりするのではなく、正しい知識をもって、のりこえましょう。
▼これまでの集中特訓はこちら
#01 妊娠したいならまず「体質タイプ」を学ぼう
#02 漢方のベーシック妊活「周期調節法」について知りたい
#03 基礎体温で身体を知ることが妊活の第一歩
#04 月経とうまくつきあって、妊娠できる体質に!
#05 いい「おりもの」は、妊娠可能なサイン
多かれ少なかれ、ほとんどの女性は痛みを感じている
月経痛が起こるのはなぜでしょうか? 女性の身体は受精卵の着床のために、子宮内膜を厚くして準備しています。そして着床が起こらなければ、プロゲステロン(黄体ホルモン)は急激に減り、内膜への血液の供給がストップします。不要になった内膜は、子宮の内側からはがれ落ちて、血液とともに体外に排出されます。
月経では、子宮の筋肉は収縮しなくても、自然に出血します。しかし、経血を押し出そうとある程度は収縮するので、痛みが起こるのです。子宮を収縮させるのはプロスタグランジンいう物質ですが、この分泌が多くなると、痛みをより強く感じることになります。
一般的に、痛みを感じるのは、出血量がピークになる2~3日目ですが、月経が始まると、下腹部に若干の違和感や重だるさを感じる人は多く、まったく何も感じないという人は、ほとんどいないでしょう。
月経痛があります……10代はなんともなかったのに、社会人になってから、生理のたびにおなかが痛むように。ひどいときは、冷や汗が出てくるくらい。(29歳・Kさん/神奈川県)
月経痛があります……まるで、おなかに鉛が入れてるような重さを感じます。立ち仕事なので、2日目などは特につらいです。(33歳・Мさん/広島県)
身体をいたわった生活をしても痛みが強い場合は
痛みの感じ方は個人差も大きく、どの程度なら軽く、どこからはひどいのかという線引きはむずかしいものです。月経は生理的な現象なので、通常であれば、がまんできるはずの痛みです。同じく子宮が収縮する、出産のときの陣痛に、女性が耐えられるように、月経のつど、訓練しているとも考えられます。
月経中は身体を冷やさない、あたたかいものをとる、睡眠不足を避けるなど、自分をいたわって生活することが必要です。そうした養生をしたうえでも、やはり痛みが強くて、ベッドから起き上がれない、通勤や通学ができないなどという場合は、子宮内膜症や子宮筋腫などの婦人科の病気が原因であることも。痛みがつづいたり、以前にくらべて痛みがましてきたときは、病院を受診して、問題がないかを調べてもらいましょう。
鎮痛剤に頼りすぎるのは避けよう
痛いのはいやだから、と、月経のたびに鎮痛剤を服用するのが習慣になっている人がいます。なかには大きなボトルを抱えて、痛くても、痛くなくても、とにかく鎮痛剤を飲んでしまうという人も。
月経痛があります……以前は婦人科で診察を受けて鎮痛剤をもらっていましたが、仕事が忙しいこともあり、市販の鎮痛剤を飲むことがふえました。自己判断だとついつい飲みすぎてしまっているかも。(31歳・Fさん/愛知県)
しかし、痛みをいつも鎮痛剤で抑えていると、子宮内膜症や筋腫などの大きな婦人科疾患を見逃してしまうおそれがあり、とても危険です。やみくもに鎮痛剤に頼るのではなく、自分の体質を見直して、痛みとつきあうことを考えましょう。
月経周期のいつに痛みや不調があるかをチェック
子宮内膜症や子宮筋腫など、器質的なトラブルがあるときは、不妊になりやすいのですが、そうした明らかな病気がない場合は、月経痛が重いからといって、それが直接不妊に結びつくわけではありません。排卵がきちんとあれば妊娠はできます。
ただ、毎回痛みが強いときは、身体は「気滞瘀血(きたいおけつ)」や「気血不足(きけつぶそく)」の状態になっていて、それが長年つづけば、やはり妊娠しにくくなるので、注意が必要です。
月経にともなう痛みや不調は、月経中だけとは限りません。月経後や月経前にも出ることがあり、中医学ではそれらを3つのパターンに分けて、それぞれに対応しています。
【月経中に痛みがある】
冷え症の人や、ふだんストレスが多い人、肩こりや首こり、腰痛がある人などは、経血の排出がスムーズにいかずに、とどこおっていることが多いものです。経血の色が黒ずんでいたり、レバー状の血塊がまじることも。この場合は、経血の排出を促進することが最もたいせつです。
月経痛があります……かたまりで出てくることが多い私。経血で出てくるより早く生理が終わるようで、あまり気に留めていませんでした。(31歳・Nさん/愛知県)
【おすすめの漢方薬】
イスクラ冠元顆粒(かんげんかりゅう)
タンジン、コウカなど6種類の植物性生薬から抽出したエキスを顆粒にしたもので、中年以降または高血圧傾向のあるものの頭痛、頭重、肩こり、めまい、動悸の改善を目的としています。45包・90包。
【月経後に痛みがある】
月経が終わる5日目ごろには、内膜は完全に排出され、新しい卵が育ち始めています。排出にも卵の成育にもエネルギーが必要ですが、「気血」が不足すると身体が消耗し、働きがうまく切り替わらずに、卵が発育できなくなります。疲れやすい、めまいを起こしやすい、汗をよくかく人などに多く見られます。このタイプでは、身体にエネルギーを補うことがなによりの対策です。
【おすすめの漢方薬】
イスクラ婦宝当帰膠B(ふほうとうきこうびー)
トウキをはじめ、センキュウ、オウギなどを加え、9種類の生薬を原料とするシロップ剤です。更年期障害のかたの冷え症、貧血、生理不順、生理痛、腹痛、腰痛、肩こり、頭痛、めまい、のぼせ、耳鳴りの改善を目的としています。300mL・300mL×2。
月経痛があります……愛読しているファッション誌のモデルさんが飲んでいるという記事を読み、婦宝当帰膠Bを知りました。母は「更年期対策にいいかも」、とわがやではお守りのような存在です。(28歳・Nさん/東京都)
PMS(月経前症候群)も、気がとどこおっていることで起こる
毎回月経が近づくと、疲れやすくなる、イライラする、ゆううつな気分になる、怒りっぽくなる、胸が張る、腹痛、頭痛、食欲不振、吐き気、不眠など、さまざまな精神的、身体的症状があらわれるのがPMS(Premenstrual Syndrome)で、月経前症候群、あるいは月経前緊張症候群とも呼ばれます。人にもよりますが、月経前の3~10日前後つづき、月経が始まると症状は落ち着きます。3割くらいの女性にあるといわれています。
中医学では、この月経前の不調は「気血がとどこおる」ためと考えています。黄体期のなかでも月経前は、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)、どちらの分泌もさかんで、子宮内膜が厚くなり、体温も高くなります。短期間に多くのことが集中し、自律神経が高ぶりやすく、精神的にストレスの多い状態になっているのです。
月経前にこうした不調がつづくときには、全身の「気」の流れをととのえ、とどこおりをとり除き、自律神経の高ぶりを緩和し、「疏肝理気(そかんりき)」、すなわちストレスを軽減することが大切です。
もしかしてPMS?……イライラして夫についあたってしまい、リモートワークがはかどらないせいだと思っていました。2日後、生理が始まり、「生理前だったんだ」と。(35歳・Aさん/北海道)
もしかしてPMS?……以前、会社の歓送迎会で上司や同僚に暴言をはいてしまったことがあります。生理前で体調がよくないタイミングに激務が重なり、悪酔いしてしまったんです。あれから、飲み会は行っていません。(31歳・Lさん/兵庫県)
【おすすめの漢方薬】
イスクラ逍遙顆粒(しょうようかりゅう)
トウキ、サイコ、シャクヤクなど8種類の植物性生薬から抽出したエキスを顆粒にしたもので、体力中等度以下で、肩がこり、疲れやすく精神不安などの精神神経症状、ときに便秘の傾向のあるかたの冷え症、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、血の道症、不眠症、神経症の改善を目的としています。90包。
さらに症状がますと、PMDDという病気になることも
PMSの中でも、精神的な症状がさらに重くなり、ささいなことでイライラする、激しい怒りを感じやすくなる、暴力をふるうなど、自分で感情をコントロールできず、社会的に深刻な問題が生じるケースでは、PMDD(月経前不快気分障害:Premenstrual Dyspholic Disorder)と診断されることがあります。
PMDDは、アメリカの精神医学会によってつくられた診断基準(DSM-5)では、うつ病などと同じ分類になります。この場合は、PMSと同じ程度のトラブルだと軽視して放置せずに、病院での受診を考えましょう。
月経痛以外の腹痛や不調は、婦人科系の炎症かも
月経痛ではないけれど、慢性的に下腹部痛があるという人がいます。女性の場合、胃腸などの消化器系でなく、卵管や卵巣、子宮などの婦人科系の付属器は、どこも炎症を生じやすい特徴があります。
骨盤内に慢性の炎症や癒着があると、当然妊娠にも影響します。最近は子宮内膜炎の女性もふえていて、この場合は着床しにくくなるといわれています。
漢方での月経痛対策は、3周期かけて集中的に
いざ痛みや不調が発生してから、「たいへんだ」と治療するのではなく、次回の月経が来たときにトラブルが起こらないように、体質改善にとりくみましょう。今回は頭痛がひどいから鎮痛剤、今回はイライラするから安定剤などという目先の対処療法ではなく、黄体期から月経期、卵胞期を通して、一貫して考え、適切な方法を選びます。
体質がどのタイプでも、月経痛やPMSのベースにあるのは、「気滞瘀血(きたいおけつ)」です。痛みや不調はしかたがないものとあきらめることはありません。3周期集中してケアすれば、これまで鎮痛剤が手放せなかった人でも、きっと楽になるはずです。
漢方薬局に相談に行くときは、基礎体温表にいつ、どんな痛みがあるかをメモして、持参するといいですね。
自分の身体をゆっくり休め、痛みとつきあいましょう
強い痛みをもたらす婦人科系の病気がある場合は別として、本来の月経痛は、がまんできないほどの痛みではないはずです。身体を冷やしたり、ストレスを多く感じるようであれば、それだけ痛みが生じやすくなります。月経時はエネルギーが不足しないよう、できるだけ身体を休めるように過ごしましょう。
それでもなお、つらいときは、「気」のとどこおりや不足があると考えて、漢方の助けを借りて、体質改善を目ざしましょう。
ご紹介した漢方薬は、日本中医薬研究会の薬局・薬店で購入できます。症状や体質は一人ひとり異なりますので、薬局・薬店でよくご相談のうえ、お求めください。
お問い合わせ先/イスクラ産業株式会社
お客様相談室 03-3281-3363(土日祝日を除く)
お近くのお店を探すことができるサイトも便利!https://chuiyaku.or.jp/
取材・文/山岡京子
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中医学講師。中国・遼寧中医薬大学卒業。同大学に医師、大学講師として勤務。1996年に来日し、埼玉医科大学にて医学博士号取得。日本中医薬研究会講師。不妊カウンセラー。著書に『中医非薬物療法の基礎と臨床』など。やさしくも的確なアドバイスにファン多数。
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