3ページ目(3ページ中) | 【20代で養子を迎えた家族の物語】無精子症・不妊治療から特別養子縁組でわが子を抱いた!20代夫婦の歩みとは?
Rくんを迎える前から密着取材がスタートしました。20代で特別養子縁組をする人はめずらしいので、若い夫婦に勇気を与えてほしいとオファーを受け、承諾したそうです。自分たちも特別養子縁組のブログなどに背中を押され助けてもらったので、今度は悩んでいる人の役に立てればと。
「放送後はいろんな人から連絡をもらいました。あの番組を見て、特別養子縁組を決めた人もいるそうで、うれしかったです。養親仲間は改めてこの道に進んでよかったと思ったと言ってくれました。インスタでもいろんな養親とつながって、息子の友だちもふえたし、出演してよかったと思います」
その番組でナレーションを務めたのが私・瀬奈じゅん。放送後、養子の日のイベントで初めて対面しました。以来、わが家に遊びに来てくれたりと交流が続いています。
「息子同士も仲よくなりました。トップスターのじゅんさんは素敵すぎて、気軽にママ友とは呼べないけれど、特別養子縁組の先輩という感じで、お話ししているとなんだか安心します。と同時に、私たちも頑張らなきゃいけないなと、会うたびに気が引き締まります」(Rさん)。
Rくんはもうすぐ1歳半(取材当時)。迎える前は不安でしたが、今まで育ててきて、血のつながりはまったく気にならないとふたりは言います。ふだんは養子であることさえ忘れていると。
1歳のお誕生日。生まれてきてくれてありがとう
「先週、里樹が熱性けいれんを起して、病院に行ったのですが、『ご両親は熱性けいれんにかかったことはありますか』と聞かれて、『僕はないです』と言おうとしたら、妻が慌てて『養子です』と言ったので、あーそうだった!と思いだしたくらいで(笑)」とSさん。
病気のときは不安になることもありますが、あとは本当にふつうの子育てとまったく同じ。養親仲間もたくさんいて、困ったときはみんなに相談できるので、心強いそうです。
不妊の原因は男性にも。まずは検査を!
最後に、現在不妊治療中の方に向けて、Fさん夫妻からメッセージをいただきました。
「僕はまず、男性不妊というものがあることを知ってほしいですね。自分は大丈夫だと勝手に思い込まずに、ちゃんとふたりで病院に行ってほしいと思います。僕も一時期、病院に行かなくなったことがあるので、自身の反省も込めて。
不妊治療はどうしても女性の負担が大きいですが、原因はどちらにあるかわからない。男性が検査を受けずに女性だけが治療をして、貴重な時間とお金をムダにすることもあります。男性不妊にもいろんなケースがありますが、治療すれば子どもを授かる場合もあるので、とにかくまずは男性も検査を受けてほしいです」(Sさん)
「『血がつながってなくても愛せますか』と質問されることもありますが、大丈夫、愛せます!私も最初は不安だったけど、育てていくうちに、養子ではなく、わが子になります。養親仲間もみんな『うちの子がいちばんかわいい』って言ってます(笑)。若い人にも私たちを見て、こういう家族の形もいいなと思ってもらえたらうれしいです」(Rさん)
お話を伺って…
ご夫妻のお話、深く共感いたします。私の場合、不妊治療を終えようと決めたのは42歳の時。当時の私たち夫婦にとって、その決断はとてもつらいものでした。比べることではありませんが、ご夫妻は20代のうちに若くしてその経験をなさったということ。さぞおつらかったのではないかとお気持ちお察しします。
ですが、その経験もすべては里樹くんへと続く道の途中だったのですよね。私も初めて息子を抱きしめたとき、自然とそう感じることができました。自宅にも遊びに来てくださり、子ども同士が仲よく遊んでいる姿を4人で眺めている時間はとても幸せで穏やかなひと時でした。ぜひまたいっしょに楽しい時間を過ごしましょうね!
from瀬奈じゅん
私たち夫婦は数多くいる不妊治療経験者の1組として、そして、その後に特別養子縁組を選んだ多くの方々の一例として自分たちの経験をお話しさせていただいています。この経験や、その中で感じたことなどが決して特別なものではないから共感していただけるし、だれかの背中を押せるのではないかと感じています。Sさんもきっと「なぜ自分が」と悩み傷つき、不安に襲われたことと思います。
ですが、その経験を語ることで多くの男性不妊の方に勇気を与えてくださっていると思います。20代で特別養子縁組を選択した経験もきっと多くのカップルの道標になっていくのだと思います。本当に素敵なご家族です。Rくんの成長もいっしょに見守らせていただけたらうれしいですし、今後とも仲よくおつきあいさせてくださいね!
from千田真司
『赤ちゃんが欲しい2020春』よりWEB掲載のため再編集しています
ナビゲーター
瀬奈じゅんさん
元宝塚歌劇団月組トップスター。1992年宝塚歌劇団に入団。『この恋は雲の涯まで』でデビュー。2009年に退団した後は女優として活躍。舞台やテレビ番組、ラジオなど多方面で活動し、12年菊田一夫演劇賞 演劇賞、岩谷時子賞 奨励賞をW受賞。千田真司氏と結婚後は特別養子縁組で子どもを授かったことを公表し、シンポジウムなどで積極的に講演を続け「特別養子縁組制度」について理解を広める活動を行っている。
千田真司さん
2008年『さらば我が愛、 覇王別姫』にて舞台デビュー。俳優、ダンサーとしてキャリアを積み続ける。現在は振付師としても活動しながら、主催するダンススタジオ「FABULOUS BUDDY BEAT」も運営。結婚後、 特別養子縁組で授かった子どものパパとして育児を楽しむ。14年チャイルドマインダー取得。18年にandfamily株式会社を立ち上げ、特別養子縁組の啓蒙活動を始める。https://andfamily.jp/
瀬奈じゅんさん、千田真司さんの共著
『ちいさな大きなたからもの』方丈社
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