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不妊治療・妊活のクリニック探し・情報収集ならあかほし 基礎知識 子宮内膜症の原因は?手術は必要?妊娠はできる?【東大病院/不妊治療専門医監修】

子宮内膜症の原因は?手術は必要?妊娠はできる?【東大病院/不妊治療専門医監修】

2024/03/03 公開

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毎月、生理(月経)のつど、おなかの痛みに悩んでいませんか?市販の鎮痛剤を飲んでがまんしていませんか?子宮内膜症は痛みの症状が強く、妊娠にも影響すると考えられている女性特有の病気です。

全国で最初に設立された子宮内膜症の専門外来がある東京大学医学部附属病院で診療・治療にあたられている廣田泰先生に、症状や原因、有効な治療法、また妊娠を希望する場合に知っておきたいことなどについて、くわしく伺いました。

子宮内膜症とはどんな病気?

子宮内膜は子宮の内側をおおっている粘膜で、受精卵が着床するためのベッドの役割を果たしています。もし妊娠しなければ、はがれて月経血となって排出されます。子宮内膜症とは、この子宮内膜に似た組織が、子宮の内側以外の場所にできてしまう病気です。


東京大学医学部付属病院女性診療科・産科ホームページより

この病変は、ほかの場所にあっても、正常な子宮内膜と同じように、毎月のホルモンサイクルの影響を受けて増殖します。

卵巣にできることが最も多く、卵巣では子宮と違って増殖した内膜や血液の逃げ場がないので、古い出血がたまって「チョコレート嚢胞」になります。また、骨盤内の腹膜などにできると癒着を起こし、さまざまな問題が出てきます。


東京大学医学部付属病院女性診療科・産科ホームページより

現在では、初経の年齢が早まり、昔とくらべて妊娠・出産の回数が減り、女性が経験する月経の回数がふえていることから、若くても子宮内膜症に悩む人が少なくありません。そのままにしておくと、閉経するまで、症状は進行していきます。

月経痛が強いと、学業成績や仕事などに影響することがあるという調査結果もあります。早い段階で治療すれば、悪化を防げるので、月経痛が強いときはがまんせずに、婦人科を受診することをおすすめします。

東大病院の内膜症外来は、痛みが強く、薬での治療ではなかなか痛みの調節ができないことを中心の症状として来られる方が多いです。あとは卵巣チョコレート嚢胞があり、手術したほうがいいのか、不妊治療をしたほうがいいのかの方針を迷って、セカンドオピニオンを求めて来られる方もいます。

また、子宮内膜症は卵巣や腹膜など以外に、尿管や腸、膀胱、へそや肝臓、肺など、いろいろな場所にできることもあって、それらを「稀少部位子宮内膜症」と呼びますが、数が少なく、一般的ではないため、こちらの専門外来を受診されるケースがあります。

「稀少部位子宮内膜症」の診断はむずかしいのですが、月経の時期に一致して、痛みや出血、また、たとえば肺だったら気胸など、病変が起きた臓器の機能障害が起きます。1回だけではなく、症状を繰り返すという場合には、この病気の可能性があります。月経のたびに症状が起こるというのはご本人にしかわかりませんので、医師にそのことを伝えてください。

最近はガイドラインをつくって、そういう病気があることを知ってもらう啓蒙活動もしているので、診断とその後の治療で、婦人科以外のほかの科の医師とも連携がとれるようになってきています。

子宮内膜症の自覚症状は?

主な症状は月経痛(月経困難症)です。月経時以外にも下腹部や腰に鈍痛を感じたり、排便時や性交時に痛みを感じることもよくあります。腹膜や膀胱、直腸などにできて癒着が起きると、排尿時の痛みや腹部膨満感、下痢、便秘などが起きることがあります。

ただし、痛みなどの自覚症状があまりなく、検診によって初めて子宮内膜症が見つかる人もいます。子宮に起きる病気ではないので、子宮腺筋症や筋腫とは違って、過多月経の症状があることは多くありません。

子宮内膜症の原因は不明?

月経のときの血液は、膣から外に出るだけでなく、逆流しておなかの中に排出されます。この血液の中に、はがれおちた子宮内膜の組織が含まれていますが、その一部が腹膜や卵巣の表面について増殖するのではないか、という「逆流説」があります。

また卵管を通して逆流してきた血液による刺激が、もともとの組織を変えてしまうという「体腔上皮化生説」が、現在主流の2つの考え方です。月経があって、それが卵管を逆流することが大きな誘因になっていることはまちがいありません。ただ、そのどちらが正しいとか、よりメインだとかが、実はよくわかっていないのです。

卵管を縛ると子宮内膜症が減るという事実があり、一方で子宮がない人でも子宮内膜症になることがあるので、おそらくひとつの理由だけで起こるのではなく、複合的な要因で起こるのだと思われます。

子宮内膜症だと妊娠しにくいの?

子宮内膜症がある人誰もが不妊症になるわけではありませんが、不妊症の主要な原因のひとつと考えられています。

日本産科婦人科学会のHP*には「妊娠の希望のある内膜症患者さんの約30%に不妊がある」とあります。子宮内膜症があると不妊になりやすい理由は、まず卵巣の周りに病変が起きやすいことが挙げられます。卵巣機能に影響して、質のいい元気な卵が減り、排卵できなくなるのです。

また、卵巣機能が保たれている若い人でも妊娠しにくくなるのは、卵巣が子宮に癒着したり、卵管も子宮や腹膜に癒着して、うまく卵子をとりこめなくなることが、おそらくいちばん大きな要因です。受精は卵管の中で起こりますが、卵管が通っていないと、精子も入っていくことができません。

なお、子宮内膜症があっても、着床への影響は、それほど大きくないと考えられています。

子宮内膜症ではどんな検査をする?

●問診・内診
●直腸診
●経腟経直腸超音波検査

通常の婦人科の診察と基本的には同じ方法です。超音波検査では、卵巣に内膜症の特徴などがみられるかどうかを確認します。子宮の後ろ側や直腸周囲の病変も観察するために、直腸診や経直腸超音波を行うこともあります。

以前は内膜症の状態を観察するための腹腔鏡検査が行われていましたが、現在は診断のためだけの腹腔鏡検査はほとんど行われなくなりました。

子宮内膜症の薬による治療は?

子宮内膜症の治療にはさまざまな方法があります。痛みの程度やこれまでの経過、妊娠を希望するかどうかなど、患者さんの状況により治療は異なります。

●鎮痛剤で痛みを抑える

月経痛をがまんする必要はありません。「鎮痛剤を使いつづけると効かなくなる」というのも誤解です。鎮痛剤は使い方によって、副作用なく痛みをやわらげることができます。

経口薬と座薬があり、生活パターンや胃痛の有無などにより、担当の医師と相談して、自分に合った薬を処方してもらいましょう。どんな薬でも痛みが強くなる前に早めに服用することがコツです。早めに使うことで使用量の合計は減らせることがほとんどです。

●ホルモン療法で排卵・月経を止める

子宮内膜症は月経によって悪化するので、ホルモン剤の服用で病気の進行を止め、病巣を小さくして症状を改善するのが目的です。ただし、いずれの薬も、服用中は妊娠できません。赤ちゃんを希望している場合は、治療の期間や薬の選択を慎重に考える必要があります。

① 低用量ピル
ピルを飲むことで、体を妊娠したのと同じ状態にし、排卵を抑えます。毎日1錠決まった時間に飲み、3週間服用したら1週間休む方法が一般的ですが、最近では、3週間以上継続して服用できる薬も出てきています。

服用を始めて1~2カ月は少量の性器出血や吐き気、乳房の張りなどが起きることがあります。副作用がなければ、一般的に服用する期間に制限はありません。
また、ピルを飲んでいる期間中にたばこを吸っていると、血栓症をおこしやすくなることが知られています。ピルを飲む場合はたばこをひかえることをおすすめします。

②GnRHアゴニスト
女性ホルモンの分泌を抑えて、一時的に体を閉経と同じ状態にすることで、病巣を小さくします。点鼻薬と4週間ごとの注射があります。

排卵・月経を完全に止めるため、最も治療効果の高い薬ですが、更年期障害のような症状(ほてり、肩こり、頭痛)や、骨密度の低下などの副作用があり、血液検査や骨密度測定などでチェックしていく必要があります。連続の服用は原則として6カ月までです。

③ジェノゲスト
ジェノゲストは黄体ホルモン剤で、卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌を抑え、病巣を小さくする作用があります。副作用としては、不正出血、ほてり、頭痛、悪心などです。

不正出血はかなりの頻度(約60%)で起こりますが、飲み続けるとおさまってくることがほとんどです。貧血を起こすほどの出血がつづく場合は、医師に申し出ましょう。

④レボノルゲストレル放出子宮内システム
子宮内に一定期間、器具を挿入します。月経困難症に効果があり、ピルや他のホルモン剤よりも副作用が少ないと言われていますが、状態によっては、使用時に不正出血や器具が抜け落ちてしまう可能性があり、注意が必要です。

⑤ダナゾール
男性ホルモン作用を持ち、子宮内膜症の病変の萎縮を目的として使用されますが、最近はあまり使われなくなっています。

手術はどんなときに選択するのがよい?

一般的な子宮内膜症では、最初に来られたときによくお話しするのは、手術をしても完治するものではないということです。手術後に再発することはけっこうあり、ずっとつきあっていかなくてはいけない病気なのです。

しかも、とくに卵巣チョコレート嚢胞は、手術をすると、必ずと言えるほど卵巣機能が下がってしまいます。排卵や、卵管の卵子をピックアップする機能がダメージを受けるので、たとえば体外受精をしたくても、卵子がとれないことにつながってきます。

赤ちゃんが今すぐ欲しいという希望があり、体外受精という選択肢があるなら、手術をするより、体外受精にトライするほうがいいということが、この10年くらいで言われてきています。体外受精を考えるのであれば、手術をしてもしなくても、妊娠率は変わりません。

20年ほど前は、卵巣チョコレート嚢腫があったら手術しましょうというのが一般的でしたが、いまや体外受精も最後にとっておく治療ではなくなっていて、まず体外受精をやってみて、それでうまくいかないなら次の方法を考えるというように、婦人科医師の考え方もシフトしてきています。

ただし、体外受精ではない一般不妊治療では、手術後1年から1年半くらいは、手術で病変をとりのぞき、癒着をはがし、腹腔内を洗浄することで、妊娠率が上がることが知られています。ですから、どうしても体外受精はしたくない、と考えているなら、手術するメリットはあります。

また、痛みは手術でかなりとれるので、非常に症状がつらくて妊娠を考えられないというときにも、手術を考慮していいでしょう。

嚢腫が5、6cmを超える大きさだと、将来ガン化するリスクがあります。年齢が上がれば上がるほど、また大きければそれだけ、ガンになるリスクが高まります。嚢腫があると、小さい穴があいて中身がもれおなかが刺激されて痛みが出たり、感染が起きやすくなったりすることがあります。このようなことが心配な場合にも手術を選択することがあります。

手術はどんなふうに行われる?

手術はほとんどの場合、腹腔鏡を用いて行われます。腹腔鏡下手術では、おなかを切開することなく、小さな穴を開け、そこにカメラと鉗子を入れて、画像を見ながら行います。

卵巣嚢腫は、周囲との癒着をはずして病変を 正常な卵巣からはがしたり焼灼したりします。また腹腔内を洗浄します。術者がどれだけ慎重に行っても、とりのぞいた側に卵巣の卵子が入っている組織がくっついてきてしまうことがあり、そのため排卵しなくなるなど、卵巣機能を損なうことがあります。病変が多少残っても、卵巣の正常な部分を多く残すことのほうが重要と言えます。

卵巣チョコレート嚢胞の手術では、手術の前日に入院、経過が順調であれば、術後4日程度で退院となります。術後1週間程度で通勤など社会復帰できるようになる人がほとんどです。手術をした場合、その後すぐの周期から妊娠にトライしても大丈夫です。

なお、卵巣チョコレート嚢腫の手術後、何もしなければ、2~3割が再発するため、ジェノゲストや連続投与できる低用量ピルなどの薬物療法をセットすることがあります。これらの薬の服用で、再発率は1~2%くらいまでに下げられます。

子宮内膜症があるときの不妊治療は?

子宮内膜症が見つかったときには、子宮内膜症の治療と妊娠出産など女性のライフプランをどうするか、将来にわたって考えていく必要があります。

もし、今すぐ、あるいは近い将来に妊娠したいという場合は、ある程度症状があっても、不妊治療を優先して始めるのがよいでしょう。不妊治療の進め方は、それぞれのかたの状況により異なるので、担当の医師とよく相談しましょう。

なお、鎮痛剤は妊娠に気づいた時点で(予定月経が遅れた時点で)使用を中止すれば、胎児への影響はないと考えられています。月経があれば内膜症は確実に悪化するので、体外受精をするときに、採卵や胚移植をしない周期では、たとえ1周期でも低用量ピルを飲む意味はあります。

少し専門的な話になりますが、体外受精における排卵誘発で、採卵前の排卵を止める薬を選択するときに、GnRHa(GnRHアゴニスト製剤)を使う方法のほうが、子宮内膜症のときの体外受精の成績がよいと言われています。

胚移植も、自然周期で行う場合とホルモン補充周期で行う場合がありますが、ホルモン補充周期で、内膜をつくる前に、GnRHaを使って内膜症を治療してから胚移植したほうがいいとも言われています。内膜症治療のために2〜3周期よけいに時間がかかるので、一般的ではないかもしれませんが、ふつうの方法でうまくいかない場合に試してみることはよいと思います。

読者体験談に廣田先生がお答え<1>

22歳のとき、月経量が多く、生理痛も重かったため婦人科を受診。子宮内膜症だろうという診断でピルを飲み始めました。その後、結婚して赤ちゃんが欲しいと思い、ピルを中止。産婦人科でエコー検査をした際に、卵巣チョコレート嚢胞があると言われました。今は通院でタイミング法を試みていて、妊娠しなかったら、腹腔鏡で癒着の有無を調べることになっています。(26歳・ベビ待ち歴1年)

【ドクターから】
卵巣の表面に病変ができた初期の内膜症が、ピルの服用をやめたことで、徐々にチョコレート嚢胞に変わったのでしょう。腹腔鏡で癒着の有無を調べるとのことですが、これはただの検査ではなく、手術です。

まだ26歳なので、卵巣機能をチェックして大丈夫そうなら、手術して自然妊娠をめざす、体外受精も視野に入っているなら腹腔鏡は受けずにそちらに進む、2つの選択肢があります。

読者体験談に廣田先生がお答え<2>

20歳のときに検診で卵巣肥大と診断され、経過観察に。30歳で不妊治療を始め、約8cmで手術を勧められましたが、ほかの病院では経過観察と言われ、そのままにしていました。その後、顕微授精の採卵時に卵巣チョコレート囊胞とわかりました。不妊治療をつづけながら、今も経過観察中です。(33歳・ベビ待ち歴2年3カ月)

【ドクターから】
採卵できているのでしたら、いまは嚢腫はそのままで、不妊治療を進めればいいと思います。33歳という年齢だと、手術をすると、卵巣機能が落ちそうです。体外受精(顕微授精)でいいと考えている状況では、手術の選択肢は考えづらいです。内膜症が悪化しないように、採卵以外の期間はホルモン治療も考慮してください。

廣田先生からのメッセージ

子宮内膜症は、ずっとつきあっていかなくてはいけない病気です。まずそのことをしっかり認識しましょう。

内膜症の治療には薬物療法が必要ですが、めんどくさくなったりして薬の服用をやめてしまえば、悪化します。妊娠を希望される場合は、不妊治療を優先します。卵巣機能が保たれていて、年齢も30代前半くらいで時間的な余裕があるなら、手術を行ったあとで低用量ピルなどで状態を維持し、タイミングで薬をやめて自然妊娠にトライする選択があります。

早く赤ちゃんが欲しいときは体外受精を考えましょう。もう妊娠出産を希望しないという時点では、手術も積極的な選択肢になります。

*参照:日本産科婦人科学会「子宮内膜症」

取材・文/山岡京子 構成/大隅優子(主婦の友社)

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岡山県倉敷市出身。1998年東京大学医学部、2005年同大大学院医学系研究科卒業。母子保健センター愛育病院、武蔵野赤十字病院、焼津市立総合病院などを経て、東京大学医学部附属病院に勤務。2014年より現職。子宮腺筋症外来、着床外来で不妊に悩む多くの患者さんに寄り添う診療・研究をつづけている。専門は生殖内分泌学。

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