2人目がほしいと思ったら【中医学リプロダクティブヘルス】集中特訓#07
妊娠したい女性&カップルなら、ぜひ知っておくべき!漢方・中医学による妊活アプローチについて、「学び」を深める連載。妊活を始めたばかりの人も、なかなか妊娠しないと不安な人も、「読むだけ」で妊娠しやすい身体づくりをめざすことができる!そんな妊活の基本をまとめています。
教えてくださるのは中医学講師の張(ちょう) 立也(りつや)先生。『赤ちゃんが欲しい(あかほし)』編集部とともに、さぁ、授かりに向けて学びのトビラを開きましょう。
第7回のテーマは「2人目の妊娠」。1人目を授かり、「そろそろ次の子がほしいな」と思ったら、どんなことに気をつけて妊活すればいいのでしょうか? 2人目妊活がなかなかうまくいかない原因や対策についても考えます。
▼これまでの集中特訓はこちら
#01 妊娠したいならまず「体質タイプ」を学ぼう
#02 漢方のベーシック妊活「周期調節法」について知りたい
#03 基礎体温で身体を知ることが妊活の第一歩
#04 月経とうまくつきあって、妊娠できる体質に!
#05 いい「おりもの」は、妊娠可能なサイン
#06 月経痛&PMS(月経前症候群)とじょうずにつきあう
1人目出産から、少なくとも1年はあけて妊活をスタート
私が相談を受けている中にも、コロナ禍の20年に出産し、上の子が1歳半くらいになり、そろそろ2人目がほしい、と準備を始めようというかたたちがいらっしゃいます。それは親の自然な感情ですね。
一般論として、最初の出産から次の妊娠まで、最低1年くらいはあけてほしいと思います。なぜなら、赤ちゃんは少なくとも半年くらいは、母乳で育てたいからです。母乳は赤ちゃんの免疫力を高め、また母子の絆を深めてくれます。
授乳中は月経が来ない人が多く、それは、母乳を出すためプロラクチンというホルモンが分泌され排卵を抑えるからです。ただし、授乳をつづけていても、プロラクチンの分泌量は徐々に減ってきます。
そして、赤ちゃんが離乳食を食べるようになり、授乳の量や回数が減ってくる出産後半年から1年くらいで、排卵が復活し、月経が再開します。再開する時期は個人差が大きく、産後2〜3カ月と早く戻る人もいれば、1年過ぎても再開しない人もいます。
月経が再開しても、女性のホルモン状態は、すぐに妊娠前と同じようになるわけではありません。また、再開後すぐの月経は、無排卵のこともあります。ですから、月経が再開して2~3周期たち、ある程度月経が順調になってから、次のお子さんの計画を考えるのがいいでしょう。
帝王切開で出産した場合は、体調回復をしっかり確認してから
産後1年くらいで次のお子さんの計画を、と言いましたが、それは最初の出産が自然分娩だった場合です。
帝王切開で出産した場合は、おなかの表面だけでなく、子宮にも切開の傷が残っています。傷の回復がうまくいかない場合や、子宮筋腫の開腹手術などで傷のある子宮は「瘢痕(はんこん)子宮」と呼ばれます。この瘢痕部分はほかの部分にくらべると弾力に欠け、次の妊娠と出産に不利であり、ひどい場合には「子宮破裂」のリスクがあります。
帝王切開での出産は、自然分娩にくらべて、子宮の回復も遅い傾向があると言われています。産後の月経が再開したら、経血や月経痛などの様子をしっかり確認してから、次の妊娠を考えましょう。
「胞状奇胎」という特殊な病気のあとも、次の妊娠は慎重に
発生の頻度は低いのですが、異常妊娠のひとつに「胞状奇胎(ほうじょうきたい)」という病気があります。これは、精子と卵子が受精するときに異常が生じたために起こり、超音波検査で見ると子宮内にたくさんの粒々があり、そのようすから「ぶどう子」と呼ばれることがあります。妊娠初期に分泌されるhCGの値が、正常妊娠にくらべて高いことも特徴です。
もし胞状奇胎であれば、子宮内容除去術を受けることになりますが、異常な組織を完全にとり除けたかどうかを超音波で確認し、手術後も定期的にhCG値を観察します。胞状奇胎の一部はがん化のリスクがあるからです。次の妊娠の時期を考えるときには、医師とよく相談する必要があります。
子宮内膜症は出産で症状が軽くなることも多い
1人目の妊娠前に、子宮内膜症や子宮筋腫、ポリープなどの婦人科系の病気があった場合も、産後は状況に変化がないかをよく見てみましょう。妊娠・出産によって月経がストップすることで、子宮内膜症の痛みや出血過多などの症状が軽減することがよくあります。出産が子宮の大掃除=リフォームになるのです。この場合は、2人目の妊娠は容易になるかもしれませんね。
2人目の妊娠のいちばんのハードルは年齢が上がっていること
現在、日本の女性の平均初産年齢は30歳を超えています。仮に、第1子の出産を30歳と想定すると、当然のことながら、第2子の妊娠時は、早くても31歳、順調にいけば32~33歳になります。
女性の卵巣機能や子宮の状態、身体のエネルギーなど、妊娠にかかわる働きは、20代をピークに、30代前半ではすべてがゆるやかな下り坂に。35歳を過ぎれば、どうしても妊娠しにくい環境になります。
1人目はスムーズに妊娠できたのに、2人目ができない、という悩みをもつかたの最大の原因は「年齢が上がったこと」なのです。
産後の育児による疲れがたまれば「2人目不妊」になりやすい
1人目の育児は誰もが初めての経験です。お母さんは赤ちゃんのお世話にいつも追われています。昼も夜も授乳をし、おむつをかえ、自分の食事もゆっくりととれません。
1歳までの子育ての期間は、産休や育休をとっても、夫や父母が援助してくれても、体力や気力はどうしても消耗します。赤ちゃんは泣くのが仕事で、周囲とのコミュニケーションの手段ですが、そのことをしっかり理解していないと、夫婦で押しつけ合って、お互いにイライラがつのることもあります。
いま、体外受精で子どもを授かり、出産したあとの女性の鬱(うつ)が問題になっています。とても苦労して妊娠したのに、なぜまた子育てでこんなに大変な思いをしなくてはいけないのだろうか、と葛藤が強くなってしまうのでしょう。
もちろん、お母さんになると精神的に強くなる女性が圧倒的に多いのですが、中には弱くなる人もいます。こうしたストレスや睡眠不足、疲労がたまった状況がつづくと、「気血両虚(きけつりょうきょ)」(エネルギーや血液が不足している状態)になります。産後の育児疲れやストレスが影響して「2人目不妊」になることは決して少なくありません。
「産後の養生」がたいせつな理由
中医学では、出産後はできるだけ無理をせずに、身体をいたわる「産後養生」が重要と考えています。出産では骨盤が開くのと同時に、全身の気穴も開くので、「邪気」が入りやすいのです。
昔の人は、産後はおふろに入らず、かたいものや冷たいものを食べないようにと教えていました。私自身の体験ですが、母から「桃は体が冷えるからダメ。ゆでて食べなさい」と言われました。桃が大好きだった私は、母の教えに従わず、こっそり生の桃を食べてしまいましたが、そのあとしばらくの間は、歯に違和感を覚えました。
現在では1カ月も入浴しない生活は、誰もがまんできませんが、入浴するときは浴室をあたたかくして、体を冷やさないことはたいせつです。スマホばかり見て目を酷使するのも、かたいものを食べて歯を酷使するのも、やはり避けたいことです。
産後というのは特別な時期でふだんとは身体の状況が違うので、いろいろと忙しいことはあってもできるだけおだやかに、気持ちの余裕をもって過ごしたいものです。産後の養生は次のスムーズな妊娠出産への大事なプロセスでもあるので、周りの人も、ぜひあたたかくお母さんを見守ってほしいですね。
母乳は血液からつくられるので、「血」を補うことが必要
赤ちゃんを養う母乳(乳汁)は、中医学的には「脾」と「胃」から出てきます。お母さんが食べたものの栄養が血液になり、血液の中の一部分が母乳になります。中医学では「経乳同源」という理論があり、月経と乳汁は同じ源から出ており、栄養たっぷりのものが母乳となり、不要なものは経血(月経)となるという考えです。
生理学的には、母乳を出すのはプロラクチンというホルモンです。授乳もしていないのにプロラクチン値が高い人では、乳汁が出て、月経不順や排卵障害になることがあります。女性の身体のメカニズムで、母乳と経血の源は同じだという証と言えます。
いちばん栄養のあるものを赤ちゃんにあげているので、産後半年から1年はどうしても「血」が不足してしまいます。中国では、母乳をたくさん出すために最もすすめられるのは「豚足」のスープや鶏がらのスープなど、コラーゲンの多い汁物です。牛や魚のスープもいいですね。また、たんぱく質をしっかりとるために、おばあちゃんたちからは「卵は毎食3個食べなさい」とも言われます。
授乳している間は、黒豆、木くらげ、にんじん、黒ごま、牡蠣、レバー、レーズンなど、「血」を補う食材を積極的にとり、漢方薬を服用するときも「補血」を第一に考えるといいでしょう。
【おすすめの漢方薬】
イスクラ婦宝当帰膠B(ふほうとうきこうびー)
トウキをはじめ、センキュウ、オウギなどを加え、9種類の生薬を原料とするシロップ剤です。更年期障害のかたの冷え症、貧血、生理不順、生理痛、腹痛、腰痛、肩こり、頭痛、めまい、のぼせ、耳鳴りの改善を目的としています。300mL・300mL×2。
イスクラ参茸補血丸(さんじょうほけつがん)
ニンジン、ロクジョウをはじめリュウガンニク、カラトウキ、オウギ、ゴシツ、トチュウ、ハゲキテンという8種類の生薬を配合した丸剤。虚弱体質、肉体疲労、病後の体力低下、胃腸虚弱、食欲不振、血色不良、冷え症の場合の滋養強壮を目的にしています。420丸、420丸×2。
身体の疲れやストレスはすべて「腎」機能の低下に結びつく
中医学では、五臓六腑のひとつである「腎」があらゆる生殖機能を司るとされています。子どもを産んだ女性がどうしても老けて見えてしまうのも、育児疲れやストレスによって、「腎」の働きが損なわれ、「腎虚(じんきょ)」の状態になっているからです。
産後にかかった病気は治りにくいと言われることがあります。1人目の産後に悪くなった部分は、2人目のときにも同じ状態になるとも言い伝えられています。ですから、産後から2人目の妊活の時期には、「腎」の働きを充実させる「補腎」を意識することがたいせつです。
月経が再開したら、「補腎」のための漢方薬の服用がおすすめです。2人目の妊娠に向けて、体調をしっかりと回復させるために、漢方専門の薬局・薬店で相談してみてはいかがでしょうか。
【おすすめの漢方薬】
イスクラ双料参茸丸(そうりょうさんじょうがん)
ロクジョウやニンジンなど動物や植物からなる計14種類の生薬が配合されていて、これらの原料を粉末にし、丸剤としたもの。虚弱体質、肉体疲労、病後の体力低下、胃腸虚弱、食欲不振、血色不良、冷え症の改善を目的としています。6丸。
イスクラ参馬補腎丸(じんばほじんがん)
13種類の動物性・植物性生薬を配合し丸剤としたもので、虚弱体質、肉体疲労、病中病後、胃腸虚弱、食欲不振、血色不良、冷え症の場合の滋養強壮を目的としています。240丸、480丸。
1人目の妊活に時間がかかった人の場合は
月経が再開すれば理論的には妊娠は可能ですが、身体の中ではプロラクチンやエストロゲン、プロゲステロンなどの分泌のバランスが不安定なこともあります。体外受精などの治療で1人目を授かったという人は、やはり検査を受けて状況を確認し、どのように2人目の妊活をスタートするかを決めましょう。
1人目の妊活で漢方薬を飲んでいた人なら、とりあえず慣れていて不安がない、以前と同じ漢方薬を服用しても大丈夫です。1人目を授かったということは、妊娠できる体質にととのったということです。
時間ができたら漢方相談を受けて、プラスアルファが必要かどうかを考えましょう。これまでの私の経験では、38歳くらいまでなら、漢方薬を飲み始めてフォローすると、第1子のときより妊娠しやすい傾向があるようです。1人子どもがいることで、最初のときのようなイライラ感やあせりが少ないことも影響しているかもしれません。
2人目を迎えるには、出産や育児ストレスによる消耗を回復して
産後の疲労や授乳、赤ちゃんのお世話などの育児、それにともなうストレスは、女性の身体のエネルギーを奪ってしまいます。忙しい日々ですが、夫婦で協力しながら、なるべくイライラせず、おだやかに過ごしましょう。中医学的には「補血」と「補腎」がたいせつです。栄養バランスにも気を配って、身体をいたわり、第2子の妊娠にそなえましょう。
ご紹介した漢方薬は、日本中医薬研究会の薬局・薬店で購入できます。症状や体質は一人ひとり異なりますので、薬局・薬店でよくご相談のうえ、お求めください。
お問い合わせ先/イスクラ産業株式会社
お客様相談室 03-3281-3363(土日祝日を除く)
お近くのお店を探すことができるサイトも便利!https://chuiyaku.or.jp/
▶次回の集中特訓【流産後のケアとこれからの妊活 #08】はこちら
取材・文/山岡京子
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中医学講師。中国・遼寧中医薬大学卒業。同大学に医師、大学講師として勤務。1996年に来日し、埼玉医科大学にて医学博士号取得。日本中医薬研究会講師。不妊カウンセラー。著書に『中医非薬物療法の基礎と臨床』など。やさしくも的確なアドバイスにファン多数。
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